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1129river next next〜絶え間ない真実と未来の上を少女から――~

作者: 絢香redeyes
掲載日:2026/01/04

日本 北海道 名寄なよろ

令和七年 夏


駅のホームには、私だけを乗せた私の特急――青紫の二両編成――が停車している。ホームにも人はいない。駅舎の中もそうだろう。いるなら会いたいものだ。

話したいな。

ふとそう思った。

と、横から声をかけられた。窓際の席の私は落ち着いて通路側を見る。通路には警察官が立っていた。

「復讐は駄目ですよ」相手はさりげなく言った「失礼。これはとにかく言ってるんですよ」

復讐は駄目――警察官らしい発言だ。

「私は復讐なんてしませんよ。そんな気持ちは浄化されていますから」私は答えた「私は今探しています。それを目標にしています」私も、私らしい発言をした「でも見つからない。残念です」

でも、景色があるわ――

「きっと大丈夫ですよ」と、警察官は通路の隣の席を指差した「空いてますか?」

「どうぞ」

相手が座ると、私は窓を見る。警察官コイツはイレギュラーか。まぁいいけどね。

と、列車は動き出した。

一時間ちょっとして、列車は旭川あさひかわ駅に到着する。

戻るか。と、無人のホームを眺めながら思った時、車内にアナウンスが流れた。

稚内わっかない方面へは“スーパー野草やそうエレシュテン”が次いで到着したので只今発車できません〉

新型か。邪魔だな。

仕方ない、動いてもらうか。

と、私は席を立ち、列車を降りる。ホームには青年男性がいた。

「“エレシュテン”の人?」と、私は青年に聞いた「キミも欲しいってこと?」

「欲しくないよ」青年はきっぱりと答えた「ゾッとするよ。キミはしないのか?」

「しないわ」

「ビックリだ。少女だからか?」いや、それより発車してくれないか? 急いでいるんだ、と青年は付け加えた。

「どこへ? ――『札幌さっぽろ』か。悪いけど今日はその気分ではないわ。キミが動いて。私は反対へ行きたいの」

「断る」

「残念」

と、青年は消えた。“エレシュテン”――“専用車”の例に漏れず二両編成――も。

席に戻ると、列車は動き始めた。ふと私は警察官を見る。寝ている。

列車は名寄を通り過ぎ、美深びふか音威子府おといねっぷを通過した。そして、二時間近く走った列車は天塩中川てしおなかがわに着いた。

さて、名寄に戻るか。

そう思った時、またアナウンスが流れた。

――今度は“スーパーべーサロセカンド”か。

行くか。と、私はホームへ。やはり人がいて、今度も青年男性だった。

「すまない、悪気はないんだ」青年は私に謝る。

――怯えている?

青年は、「すぐに引き返す。我が青と白の列車に誓って」

「どうして怯えているの?」私は聞いた「私が怖いの?」

「……ああ」青年はためらいながら答えた「いくら強くても」

「――お願い聞いてくれる?」私は思いついた。

「お願い?」

「私は少女だから車の免許ないの。でもドライブしたいの。私のドライバーになってくれない?」と、私は笑う「永遠にじゃないわよ?」

青年はほっとしたように笑った。「良いよ。ボクもドライブ好きだ。お安い御用だ」差し当たっていつ? と青年は付け加えた。

「そうね――まず名前は? 私はベー」

「べー?」

「あっ、ニックネーム言っちゃった。本名は――」

「いや、それでいいよ」青年は遮った「大差ないから。ボクの名前はショウイチ」

「ショウイチ、電話番号交換しましょう」

一週間後の朝、私だけを乗せた私の特急は名寄駅に着いた。その直後、汽笛が聞こえた。早く動けってか。と、私はホームへ。

稚内方面からの、金と黒の特急があった。

と、若い男が降りてきた。私に近寄ると、「早く行けよ。オレの“スーパービーシャーモンテン”に壊されたいのか?」と、男は偉そうに言ってくる「ブサイクちゃん」

はぁ? 「――キミ、私のこと知らないの?」

「知らないよ。誰?」

「与えようか?」と、私はてのひらを相手に向ける「永遠の命を」

「永遠の命だと? ――まさか……」

「なんてね」

「えっ?」

私は手を下げる。「キミにはしないわ。見覚えないから。でも、キミの態度次第かもね?」と、私は笑う「どうする? 私、美深へ行きたいんだけど?」

「……分かった、従おう」

美深に着くと、ホームにはショウイチが待っていた。

「道の駅だよね?」と、ショウイチ「で、イチゴのジェラートと」

「ありがとう」

翌日も、私は彼の運転でドライブ――名寄市内――した。

翌朝、私は中川駅で降りた。駅前にはショウイチとその車。

「悪いわね、面倒臭い景色が好きで」と、私「昨日も運転で大丈夫? 稚内までつ? 今更だけど」

「大丈夫。ボクはこれでも――」

爆発音が轟いた。

何!?

「べーさん、あれ!」と、ショウイチは駅の方を指差す。

私の列車が燃えている!? どうして!?

「――まぁ、いいか」

「えっ? べーさん?」

「ショウイチ、新しくすればいいのよ」

数週間後の朝、私だけを乗せた私の特急は名寄駅に着いた。ホームにはショウイチがいた。

「赤と白か」ショウイチは私の特急を眺めながら言う「かっこいいね」と、私を見る。

「特急らしく見えないけどね」と、私は肩をすくめる「でも楽しめるわ。この“スーパー野草やそうアタラメ”でも」

「――べーさん、今も探しているのか?」

「もちろんよ」

「なぜ? こんな素敵な列車があるのに」

「だってつまらないからよ、 遥かな未来が」

走行音? と、私は旭川方面を見る。緑と白の特急がノロノロやって来ていた。停車すると、若い女が降りてこちらに来る。

――くっ、私より……

女は私の前で止まると、「私の“スーパー商業シタツ”の邪魔をしないでください。戦いましょう」と、さりげなく言った「私はクロ。二人がかりでもいいわよ?」

「戦わないわよ」と、私は肩をすくめた「呆れた。――でも、命拾いしたわね」と、笑う「惜しいわ、キミ」

「がっかり」と、クロは肩を落とす「さようなら、つまらない人間」と、またさりげなく言って彼女は自分の列車に帰っていった。

「当たり屋みたいだな」と、ショウイチは呆れたように呟く。

と、“スーパー商業シタツ”は走り始めた。

私はつまらない人間か? 列車を見送りながら私はふと自問する。

――そうかもしれないわね。もしかしたら。

でも、気にしないわよ。

と、着信音がした。

「失礼」と、ショウイチは電話に出る「――『爆発』した!?」 爆発? 「“ビーシャーモンテン”も? 誰の仕業だ?」

こっちは大丈夫かな? ふと気になって私は“アタラメ”を見る。

爆発した。

翌日の昼、私とショウイチは人気ひとけのない名寄駅のホームにいた。

「落ち着いた?」と、私は聞いた「ちゃんと待ち合わせできたから大丈夫そうだけど?」

ショウイチは苦笑する。「大丈夫だ。愛車だからって冷静さを欠いた。すまないな。それよりこれからどうする? 本当に一緒に行かないのか?」

「復讐なんて興味ないわ」と、私は肩をすくめる「私にもやることがある」

と、そこへ“スーパー商業シタツ”が停車した。

「気をつけて、ショウイチ」

「ありがとう」と、彼は乗り込み、列車は出発した。私は見送る。

――不愉快だわ。ふいに思う。

なんで私の列車が爆発されなくちゃならないのよ? 腹が立つ!

復讐したい!

いや、落ち着け。

私には列車がある。それで景色を眺めれば――

でも、今はないんだ……

早く欲しい!

「べー」

私は振り返る。

はっとした。

「ついに現れたわね!」私は歓喜する「キミで満足してあげるわ!」

相手は首を傾げる。「何を言ってるの?」

私はニヤニヤしながら、「うるさいわね、ゴミ風情ふぜいが」と、てのひらを相手に向ける「キミは逃さないわよ。永遠の命を与えてあげる」

「永遠の命?」

「そうよ。不老不死。あなたはずっと生きるのよ。――青ざめないでよ、名誉なことよ」

「名誉?」

「遥かな未来で確定した真実になるんだから」私は笑う「素晴らしいわ!!」

「やめて!」

「たわけボケ! 喰らえ!」と、掌からピンクの光線が放たれる。

と、相手はしゃがんでかわした。

私は舌打ちした。「クソボケが。かわすんじゃないわよ。次いくわよ!」

「べーさん!」

横? と私は見る。ショウイチがいて、「もうやめてくれ!」と、懇願してくる「キミはもう満ち足りているはずだ。その日々を送ってくれ!」

「だからこそよ」私は反論する「私のやろうとすることはその上にあるの。とても高尚なことなのよ」と、にやりと笑う「知ったらやるわ。それを知っているのにやらないなんて愚かな人間だわ! ああ、身体が興奮する! これが気高さなんだわ!!」

「乗れ!!」ショウイチは真剣な表情で叫んだ。

その瞬間、私とショウイチは特急の中の通路に立っていた。

ヤツは? ――いない。

「やるじゃない」と、私は笑う「油断したわ。でも次はそうならない。何をしたいのか言って。打ち砕いてあげる」

「窓際の席に座って。そして眺めて」と、ショウイチは優しい声で言った「天塩中川から札幌、札幌から天塩中川までの景色を。ボクはキミを救いたいんだ」

景色? そんなもの!

えっ? 何この気持ちは?

恋しくなっている? 切ないわ――

でも私は!

――でも……

ショウイチじゃないわ。

……ちょっとだけよ。

と、私は席へ――


翌日の昼過ぎ、私は隣の席のショウイチに、「ありがとう」と、微笑する「救われたわ。だからやめるわ」

「ありがとう」と、ショウイチは微笑む。

「それにしても良い列車ね。六両編成、それに快眠もできるなんて。なんて名前?」

「“スーパー野原ニスノチ”だ」

「好きになったわ」と、私の腹の虫が鳴った。

「食堂車へ行こう。またマーガリンたっぷりのトーストを食べよう」

「そうね」

と、私は微笑した。


〈了〉

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