水着
夏の海水浴場。
友人グループで海に来たカナコは、近くのリサイクルショップで見つけた「真っ赤なビキニ」を自慢げに取り出した。
「これ、500円だったの! お買い得でしょ?」
しかしタグにはかすれた文字でこう書かれていた。
――『試着したら最後、あなたの身体にぴったり。脱げません』
みんなは「ドッキリみたいな注意書きだな」と笑っていたが、カナコが試しにそのビキニを着た瞬間、布地が吸い付くように彼女の体を覆い、まるで生き物のようにピッタリと張り付いた。
「ちょ、ちょっと待って! 外れないんだけど!」
みんなで必死に引っ張っても外れない。まるで水着自体が彼女を離そうとしないのだ。
するとビキニから小さな声が聞こえてきた。
――「次の夏まで、一緒だよ♡」
背筋が凍りつくカナコ。
その後、彼女はどんなにシャワーを浴びても、温泉に浸かっても、ハサミで切ろうにも切ることはできなかった。
寝ても覚めてもビキニ姿のまま過ごすことに…。
学校でも会社でも、葬式でも結婚式でも。
常に「赤いビキニ」スタイルで現れる彼女は、街で有名人になった。
最後に本人はこう語る。
「冬はマジで寒いから、呪いっていうよりただの拷問だよね」