表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第二章


アウトストラーダ 太陽の道







タルガ・フローリオ

イタリアのシチリア島で1906年から1977年にかけて開催された、国際的に最も歴史の古い公道自動車レース。

創設と名称の由来: タルガ・フローリオは、シチリア島の富豪であるヴィンチェンツォ・フローリオによって創設された。

「タルガ」はイタリア語で「盾」を意味し、優勝者に贈られる「フローリオ牌(盾)」に由来している。

最大の特徴はシチリア島の曲がりくねった山道や公道を使用する、非常に過酷な耐久ロードレースだ。

ル・マン24時間レース、ミッレミリアと並ぶ、スポーツカーレース。

コースは開催当初から何度かコースが変更されており、初期は1周148kmを超える「グランデ・チルクィート・デレ・マドニエ」などの長距離コースだった。

その後、1周72kmの「ピッコロ・チルクィート・デレ・マドニエ」が主なコースとなり、このコースは高速化された後のタルガ・フローリオを象徴するようになった。




「ぢゃあ、飯塚さん。行ってきます」


明日からシチリアに向かう宙也は、仕事が退け退社の準備をしてから、飯塚のデスクの前に出向き挨拶をした。


「楽しんで来てね。道中気を付けて」


そう言ってから···

思いなおしたように


「せっかくだから、ニコの店で一杯呑ろうか❓️」


「ハイ、行きましょう」


宙也は笑顔になった。


ふたりがニコの店に行くと、客は誰もおらず···

ニコはふたりを見ると


「今夜はお茶っ引きだな。店は閉めて3人で飲むか‼️今宵アペリティーボ(ハッピーアワー)だな‼️」




「しかしまぁ…クルマ好きなのは知っていたけどね…

宙也君は、アルファロメオを好きになったキッカケは❓」



「オレは5歳ぐらい頃に、TVの映画を見てて、たしかフランスの映画で、殺し屋の主人公が組織に、妻子を殺されて、復讐するストーリーなんです❗

組織の殺し屋と、カーチェイスを、繰り広げるんだけど、其処にお世辞にも、カッコいいとは言えない、紺色のベルリーナ(セダン)が、出てくるのですよ‼️」



「主人公が乗るクルマなのに❓」



「そうなんですよ❗主人公が逃げて、交差点に差し掛かったところで、ヒール アンド トゥ ダブルクラッチで、シフトダウンとドラテクのシーンを映してたのですよ。でも、その次の瞬間‼️画面が切り替わりまして‼️」



「どうなったの❓」



「エンジンルームが映して出されて、ウェイバー キャブレターの勇ましい吸入音。


そしてアルファロメオが、誇る『ノルドエンジン(直列4気筒DOHC)』が雄叫びを挙げた。

軽合金ユニットの、高機動のサウンドが響きわたって‼️」



宙也は照れたようにはにかんで言った。



「幼氣な5歳の男の子に刷り込まれて·····

見事な社會不適合者(アルフィスタ)の一丁上がりです‼️」


「ワハハ‼️5歳児でジュリア•スーパーを見てアルフィスタになる。宿命だ‼️ビョーキだな アイザワは‼️」


ふたりの話を聞いていたニコが豪快に笑い出した‼️





翌朝


宙也はアルファ・ロメオ 155をテレパスレーン(ETC)から

東ミラノ環状線(A51)に乗った。

イタリア版ETCである『テレパス』は問題ないのだが···

やっかゐなのが『チューター』と呼ばれるシステムである。

処々に電光掲示板の案内下にカメラがある。このカメラで『ナンバープレートを自動で読み取り』までは日本のNシステムと同じだか···

区間ごとの旅行時間を計測して速度違反を取り締まるとんでもなゐシステムだ‼️

何処の国()』も、大衆からお金を取ることだけには気合ゐが入っている。


155はアルファ・ロメオ博物館を通り過ぎる。


「スタート」


其処で宙也は声を上げた。


彼はタルガ•フローリオへの旅に相応しくアルファ・ロメオ博物館からスタートさせるためにA51を選んだ。

すぐにアレーゼのJCTからA50のルートに乗せて、ポー通りIKEAのあるランカテのJCTで、いよいよA1(アウーノ)『|アウトストラーダ•デル•ソーレ《太陽の高速道路》 ミラノ〜フィレンツェ〜ローマ〜ナポリ』に155は入った。

北部ミラノから南部ナポリまでイタリア半島を南北に縦断する総延長約760kmの幹線高速道路である。

そのうちミラノからフィレンツェまで約295km、およそ4時間で走って今夜はフィレンツェで1泊する予定だった。

日本にいた頃、何度か自動車雑誌で、

『アウトストラーダ•デル•ソーレ』は紹介されて走ってみたいと憧れていたが···

実際にミラノに住んでみると、太陽の道への憧れはみごとに砕かれていった。

まず、ミラネーゼ達は「アウトストラーダ・デル・ソーレ」と長い名前で呼んではいない。

「アウトソーレ」と縮めて呼ぶ場合はあるが、それも新聞記事などの公共団体で、一般的ではない。

ほとんどの人は正式名称であるアウトストラーダ1号線を示す「ア•ウーノ(A1)」と呼ぶ



1956年に着工され、全線開通したのが1964年。

彼がいま走っている区間は1958年12月8日にパルマ・ミラノ間が部分開通した。

この高速自動車道はイタリア最長(759.4km)で、

ボローニャ・フィレンツェ・ローマといった主要都市を経由する"イタリアの脊髄"として、第二次大戦後のイタリアの「奇跡の経済発展」を支えてきた。 

日本でいう高度経済成長に該当する。


しかし既に40年も経っている箇所もありA1は設備が古い。

ガードレールはさび、頭上をまたぐ橋のコンクリートも劣化しているものが多ゐ。

中央分離帯も、単純にコンクリートブロックで区切られた区間がほとんどだ。




バリラのパスタ工場が見える。

155はパルマに入っていた。

パルマは生ハムの畜産物やチーズなどの乳製品も有名だ。

パルマには近郊の村、ジベッロがある。

ここは、美食家なら一度は訪れたいと願う場所だ。

村を流れるのは、イタリア最長のポー川。

その恵みを受けて一帯には豊かな穀倉地帯が広がり、最高品質のチーズ『パルミジャーノ・レッジャーノ』や、ここでしか作ることができない幻の生ハム『クラテッロ』が生み出される。

幻と云われるクラテッロなど

当然高くて宙也には手が出せない。



ニコが教えてくれた。


「アイザワ、イタリアでは、パルマ以外にもプロシュートと呼ばれる生ハムの産地があるが····

生ハムの塩気と産地は密接な関係があるんだ」


例えば、フィレンツェのあるトスカーナ州の海に近い地域でも生ハムを作っているけど·····

海からの潮風が届くから、とても塩辛い生ハムになる。

一方、トスカーナ州からアペニン山脈を越えたところにあるランギラーノの生ハムは、山によって潮風が遮られるので少し塩気の少ない生ハムになる。

ランギラーノよりもさらに北の海からは遠い地域で作られるクラテッロは、パルマの生ハムより塩気の少ない生ハムになるんだ。

そして、北イタリアの山の中で作られる「サンダニエレ」という生ハムは、さらに塩気が少なく甘味の強い生ハムになる。


「産地によって生ハムの塩気は変化するんぢゃ」


ニコはドヤ顔で生ハムを説明した。

そしてニヤっとして·····


「まぁ…今回の旅でいろいろなところでオンナも食べ比べてみるのもイイな❗️アイザワ、オマエはマジメすぎるんだ。少しオンナ遊びでもしてこい‼️そうすればワシみたいに柔らかくなるぞ‼️」


「ニコの言う通りだよ❗️宙也くん、少し遊んでおいで‼️オカネが足りなかったら連絡してくれ、建て替えてあけるから‼️」


飯塚はツボに入ったみたいで大爆笑していた。


「·····」


ニコも混じった大宴會になり、冗談か本音か解らない毒を吐いた‼️




「あの爺さん❗️余計なこと言いやがって、アンタのように破天荒になったらタイヘンだ‼️」



155のステアを握りながら毒づいた宙也だった。



宙也にとってパルマのイメージはブラバムBT46Bが浮かぶ。パルマラットのスポンサードを受けたブラバムBT46Bはアルファ・ロメオTipo115-12と呼ばれる、

水平対向12気筒エンジンに強制排気システムを搭載した所謂ファンカーと呼ばれた。

スウェーデンGPの決勝で·····

ニキ•ラウダのBT46Bとマリオ•アンドレッティのロータス·79。

『ウイングカーVSファンカー』のドッグファイトとなった。

ラウダが39周目にアンドレッティを追い抜き、

ロータスがエンジンブローした後は独走態勢に持ち込み、2位リカルド・パトレーゼに34秒差をつけて優勝した。しかし…ファンカーはすぐに使用禁止となり、スウェーデンGPだけの幻のF-1マシンとなった。







◆◆◆









モデナに入った。

いうまでもなくフェラーリの本拠地である。

モデナの10Kmほど南にはマラネロ、テストコースのフィオラーノが其のすぐ西にある。

モデナからボローニャまでは31Km

A1は街の手前で右へ曲がって、南に下りフィレンツェに向かう。

側道に入ってA14に移れば、アドリア海に向かう。

サンマリノ•GPで有名なイモラがすぐちかくだった。

宙也は5速のままアクセルを少し踏み込んだ。


ノルドエンジンはイイ音色を奏でてくれる。


ボローニャからフィレンツェまでは約100Km。


『ココからフィレンツェまではコーナーが多い区間』


ボローニャ−フィレンツェ間にあるアペニン山脈区間はA1の中で一番の難所。


そしてこのA1と並行してR65が走っていた。

『ラティコーサ峠にフータ峠』

ミレミリアで使われたコースだ。

スターリング•モスの激走を思い起こす。

ロンビラッチョの出口を通り過ぎる。


「ココを降りたらモスの伝説のフータ峠か」


宙也は独りごちた。


片側2車線で、平日は大型トラックが走行車線を数珠つなぎで走ってゐる。

コーナーの曲率は、高速道路にしてはタイト。

したがって事故も多い。

ニコの8Vは、アペニン山脈区間の難所も、

サスペンションが、しっかりストローク(仕事)する。

ロールもするんだけど、上手にタイヤを接地させて気持ち良く曲がっていく。

ツインスパークから奏でるエキゾーストは気持ち良い。


この155 8Vはまさしく

アルファ・ロメオの創るスポーツカーだった。


所々に乱れ咲く無数のヒマワリとイタリア版新幹線「フレッチャロッソ(赤い矢)

「|フレッチャアルジェント《銀の矢》」

と並走することと、

そして···この155 8Vが、

彼のなかで「太陽の道」という甘い響きを感じるシーンを演出してくれた。







◆◆◆






『何故 フィレンツェ泊まり❓️』


宙也を知っている人達からすれば彼が、ミラノから約300Kmの距離のフィレンツェまで走るのはさほど苦にはならない。

日本にいたころは北海道の函館を日帰りで行ってきたことがあったほどのロングツアラーな彼だ。

まして大好きなアルファ・ロメオで走るのだから、

このままローマまで行っても良かった。


「アイザワ クルマのことばかりぢゃあなくて、

せっかくなんだからいろんなモノ観て来なさいよ。フィレンツェのドゥオモとミラノのドゥオモは全く違うからね」


出張所のスタッフでフィレンツェ出身のジーナに突かれたのだ。


『帰った時にジーナにまた言われるのも面倒くさいからな』


そう思いフィレンツェで1泊するのを決めた。


チェントロ(街の中心街)の予約したホテルに向かった。

ドゥオモに近いホテルにチェックインするためにエントラントに155着けた。

駐車場に155を止めて、ロビーに入った。


「Perfave mostrami Il tuo Passporto」

(パスポートを見せて下さい)


彼を見るフロントのスタッフの顔は少し硬い。

やけに慎重にパスポートを調べていた。


『まぁ、無理もないか❗️日本人がアルファ・ロメオ乗りつけたから""ヤバイ奴""と思われたかな❓️』


宙也は苦笑した。


イタリア人にとってはアルファ・ロメオは量産メーカーになったとはいえ、高級車の部類になる。


ーコイツ 日本人か❗️アルファ・ロメオなんぞ乗りつけやがって、マフィア(反社)ぢゃあないだろうな❓️大丈夫か❓️

…とたぶんうがった目で彼を見ていたのだろう。


チェックインが終わって、部屋に入った。

ジーナの手前、ドゥオモ周辺に来たが···

彼にとってフィレンツェ•ドゥオモ辺りはあまり気分的によくない。

何故かというと···元カノのレヴィが宙也を裏切った地であった。アンティークジュエリーショップ社長のアントニオと一緒にフィレンツェに買付出張に来たレヴィは『店を持たせてやる』と彼の口車にまんまと引っ掛かって、宙也を裏切った。

美奈子から『アントニオは借金で首が回らないのよ。店を持たせるなんて出来るワケないわよ。

でも、其のおかげで宙也が手に入ったから悪くはないわよ』

そして美奈子からレヴィの其の後を聞かされた。

其の美奈子も彼を裏切ってイタリア人男性に走った。


『思い浮かんできてどんどん不愉快になる。もう当分はオンナはいらない』


そう思い立ち上がり部屋を出た。


ジーナに感想を聞かれるから…

とりあえずドゥオモのクーポラを観て、早々に中央市場周辺に行ってトスカーナ地方の料理を楽しもうと思った。

ちょうど、トラットリアがあったので宙也は入った。

キアンティワインと牛肉の薄切りステーキ(タリアータ)を頼んだ。

運ばれたタリアータはルッコラとパルミジャーノチーズが付け合わせていて、一緒に食べると美味しかった。

店主のジャンニがやってきた。


「トスカーナの海の料理はいかがですか」


そう宙也に話かけてきた。


彼はトスカーナの海沿いの街リヴォルノの出身だと言った。


「塩漬タラのトマトソース煮込みです」


「イイですね。其れをお願いします」


其れを皮切りに…

彼は身勝手なオンナ達の鬱憤を晴らすかのように食べはじめた。

|インサラータ·ガリネッラ《アンチョビペーストとニンニク》がのったサラダ

|フィレット·ディ·バッカラ《鱈のフライ》の

|ヴェルドゥーレ《ミックスフライ詰め合わせ》

|トリッパ•アラ•フィオレンティーナ《仔牛の胃袋のトマト煮込》

|トリス•デ•ポルベッテ《フィレンツェの肉団子》

締めに唐辛子の効いたパスタ•カレッティエラを平らげて…

さらにデザートに|アルビコッカ&フラーゴラ《杏と苺》のジェラートを食べた。


「サービスです」


そう言って店主のジャンニが珈琲を持って来てくれた。


「ありがとう❗️美味しかった‼️ジャンニ。明日、上司にお土産を買いたいと考えてるのだけど、オススメがありますか❓️」


「フィレンツェは革製品がオススメです。マイウォリットに行かれたらイイですよ」


「ありがとう。明日イチバンに行ってみます。チェックして下さい」


しっかりとキャッシュで払ってトラットリアを出た。


レストランや大型ショップはカードが使えるが…

トラットリア等はカードが使えないことが多々ある。

キャッシュはある程度持っておいた方が安心だ。


翌日、ジャンニにいわれた革製品の店により、飯塚と彼の彼女のために財布とショルダーバッグを購入した。


そしてローマに向かった。



Continuare



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ