【3話 強く成らねばならぬこと】
水涛洋介は宏窪嫋除の特訓メニューをこなして
いた。
「こう?」
「う〜ん違う,反射?まぁ俺も感覚的な理解だから
何とも言えないが,発勁はこう筋肉を弛緩するような動きじゃない」
「こう?」
「そうそう」
こんな感じに発勁を体得する訓練を数週間行った。
だがそんなある日のこと。
「おい!調子に乗ってんじゃねぇ!」
後ろから殴りかかってくる奴がいた,そいつは
,,,兼亮。
「辞めて!」
「は!所詮鍛えても雑魚は雑魚なんだ!」
「なぁ,勝負しようぜ!今ァァァ!」
やつは理不尽にも復讐しに来たのだ。
そんな光景を見た宏窪嫋除はキレる。
「巫山戯[あざけ]るなよ?」
瞬間当たり一体が静寂と化す。
「貴様らが我の弟分に勝つだと?」
「上等じゃねぇか!」
「上等じゃねぇよ」
被せるように喋る。
「この我[おれ]をおちょくったんだ,貴様らは」
やってはならない絶対の理を破ったんだ,
わかっていた,本当はわかってたんだ。
無意識に刻み込まれた恐怖が,闘争本能に
語りかける。
無理だ!お前に勝てる相手じゃないと。
半べそをかきながらなんとか喋る。
「にににににににげりゅのか!」
「あぁ?」
ギラり光る眼光は更に恐怖のどん底に
叩き落とすに相応しかった。
「戯け!」
「ひぃ⁉︎」
「急襲を仕掛けて喧嘩だぁ?舐めてるだろお前?狼狽えるくらいなら調子に乗るな」
「ック」
「だがそうだな,喧嘩はしたほうがいい」
「へ?」
こうして,受贋高校全体のバトル大会が
開かれた。
「なら審判を俺が務める」
こうして宏窪嫋除が審判となる。
「ッチ,あのクソ野郎が,俺に指図しやがって」
「兼亮」
長谷川がくる。
「なんやぁ!」
バゴーン!パンチが入る。
「ぐは!」
「おい,調子に乗りすぎや」
「はっはせが」
バゴーン!更にパンチが入る。
「お前が負けたら俺ら不良はあのデブとヒョロガリもやしに負けた結果を残す,死ぬ気でヤレ」
「わっわかったよ」
こうして第一試合,因縁の戦闘,洋介対兼亮だ。
「さぁ!始まった第一試合!」
「おい雑魚」
「,,,」
「なぁ,お前が辞退したら嬲り殺し刑は執行しない」
「,,,」
プツンと奴の血管が切れた。
「なんか喋れや雑魚!」
パンチを決める,だが。
「は⁉︎」
宏窪の構えである。
「ありがとう宏窪君,君の教えてくれた耐えの構え,コイツに勝てそうだよ!」
洋介は言う。
「へ,勝ってから礼を言えやい」
師弟関係は良好だった。
「(気に食わない気に食わない気に食わない気に食わないぃぃ!!!)」
切れた奴がバカにも大ぶりにパンチを叩きつけるが。
「フン!」
「ガハ!」
空いた脇腹に敵の勢いを乗せた一撃,宏窪流喧嘩術,受け流し打撃。
「カハ!(生きが!)」
「なんだお前は,最悪だな,あれだけイキっていて
今まで殴ってきた俺に反撃されて一撃だなんて」
「グゾガァァァ!」
なんとか無理矢理殴り込む。
だが。
「だりャァァァ!」
なつの手を両手で掴み顔面に蹴りを
打ち込む体格差を活かした技術,宏窪式体格差埋没技術,腕固め蹴り。
「グガァァァ!」
奴は倒れ込む。
「なぁ,このままじゃ俺の気が収まらない,
少しは楽しませろ!」
今いじめっ子の上に立ってるのは,あの
いじめられっ子の洋介だ。
「待て!」
宏窪が言う。
「勝負ありだ,洋介,お前の勝ちや」
「,,,」
「意義あり!」
そこに出たのは長谷川だった。
「あんな試合無効だ」
プライドで長谷川が試合無効を提する。
「は?」
「大体おかしいだろ,反則だ」
「反則なんかしてねぇよ」
「黙れよデブ!」
「はぁ?」
それは宏窪の逆鱗を逆撫でするに等しかった。