【1話 水涛洋介】
「おいミ・ナ・ミ♪」
「な,なんですk」
ドス,鳩尾に拳が入り込む,バタン,床に
倒れ込む。
「なんでしょうか,だろぉ?敬語くらい使える
ようになろうぜぇ〜水涛くん」
「ゲホゲホ!」
「チッ,おい返事は!」
ドス,再度床にへたり込む水涛の下腹部に蹴りが
入る。
「きゃっはっは!辞めとけよ兼亮ぇ〜,やり過ぎると死ぬぞ〜」
あの遠くから笑って見ている奴はこの不良グループの長に君臨している男。
長谷川奏多,そうして俺をぶん殴ったり,蹴り上げやがったりしやがったこのクソやろうは城ヶ崎兼亮。
「ゔぉう,,,ゔぉうやべでぐだざい!」
「あぁ?なんだってぇ?舌っ足らずで聴こえねぇな!」
バン,バン,バン,バン,バン,,,何度も何度も何度も蹴る,蹴る,蹴る。
「,,,」
「あぁコラ兼亮ぇ,意識を吹き飛ばしちゃダメだろ?」
「いいじゃ〜ん別に」
「おい」
「あぁ?だれや」
背後から誰かが来る。
「はぁ?,,,お前は確か1年6組の」
「え〜っと名前は確か」
「宏窪嫋除だったか?」
「弱いもの虐めなんてして何が楽しい」
166cmちょっとの身長に120kgの宏窪に対して不良の一人,兼亮は突っかかる。
「調子に乗ってんなよデブゴン,お前が
入ってこれる領域じゃねぇんだよ!」
パン!蹴りが入るのだが。
「ック,はい正当防衛開始な?」
次の瞬間,宏窪が仕掛ける。
「んな⁉︎」
まず兼亮の両目を右手で覆う。
次に左手を使い襟を掴む。
そして最後に足払いをすると。
「うわぁ!」
ドスンと身体が落ちる。
「なぁ,知ってるかい不良君,人はバランス感覚は目が重要なんだ,体幹が強くても目を隠されたら転んじまうんだ」
身体が乗っかった馬乗りの状態,ここからはもう
もはや一方的な蹂躙だった。
「辞m!」
バゴ,ドゴ,バゴ,足の力は入らずとも,胴体の
重量と腹筋の力は働く,120kgの重量級のパンチ,素人同士だろうが明らかに宏窪の方が
有利。
体重もマウントも宏窪が勝った時点で勝利は
確信されていた,だが。
パシュ,誰かが手首を掴む。
「あぁ?」
「ごめんごめん宏窪君,俺の舎弟がやり過ぎた,
正当防衛なこと重々承知に申すよ,辞めて欲しい」
「謝罪は受け取った,素直に受け取るよ」
こうして宏窪と兼亮の喧嘩は宏窪の圧倒的な
フィジカルによって圧勝していたが,長谷川に
よって仲裁されたのだった。
数十分後。
「あ,あえ?痛た!」
「あぁ起きたぁ?」
気絶から目覚めると,目の前には宏窪君が
いた。
「宏窪君,,,僕,僕は,,,」
肩を抱き寄せて宏窪が言う。
「分かる,分かるよ,お前の言いたい事が,苦しかったよなぁ」
「うっうわぁぁぁん!」
洋介は泣き崩れてしまう。
「僕づよぐなりだい!」
「,,,」
「俺をぎだえてぐれ! 宏窪ぐぅん!」
「別にいいが,悪用厳禁な?」
こうして水涛洋介は,1年6組の同学年生,
宏窪に弟子入りするのであった。