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拳料理

作者: 出雲 寛人

拳料理店。


最近インスタで話題になっているお店の名前だ。


ここで出てくる料理は、”拳料理”。


誰の拳か知らないが、拳を焼き上げて、塩胡椒のシンプル味付けで出てきた。


食べる前にパーを出すと、少し不味くなるらしい。


逆にチョキを出すと、拳はご機嫌になって味に深みが出るようだ。


ただ、グーを出すとどうなるのか、それだけはどこを調べても出てこなかった。


好奇心に唆され、僕は食べる前にグーを出してみた。


すると僕の右手は無くなっていた。


そして隣の席の人の拳料理に僕の手によく似ている拳料理が出てきた。


隣の人は、チョキを出した。


右手のない僕はなぜか嬉しかった。


右手が無いまま拳を食べ終わり、店を出た。


「ありがとうございました!次は左手を取られないように気をつけてくださいね。」


店を出て右手を見ると、そこにはちゃんと右手があった。


しかし、感覚はなかった。


すごく怖い体験だったけど、僕は次の日の晩、もうその店の前に立っていた。


昨日と同じ失敗はしないと思い、チョキを出してから食べた。


拳はとても美味しかった。


何事もなく店を出たが、拭っても拭いきれない程の敗北感に見舞われた。


そして翌日、この敗北感から逃れるために僕はその店の前に立っていた。


僕はパーを出した。


勝利をしてようやく、敗北感は消え去った。


しかし、拳はとても不味かった。


店を出たが、この拳の不味さは舌に残り続けた。


アイスを食べてもお酒を飲んでも、ガムを食べても不味さは舌から消えてくれない。


翌日、この舌の不快感を消すために僕はその店の前に立っていた。


今日は何も出さずに、食べてみた。


一口噛むごとに、おいしさで我を忘れそうになった。


そして、最後の一切れを食べ終わる頃には、僕は皿の上の拳になっていた。

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