本質メガネ
ことの経緯——
「……、ということなんだよ。」
ダバノンとキメラ教諭はセーラにこれまでの二人のいきさつ、これから地球に起ころうとしている事、等をくわしく話した。
セーラはふむふむ、といった様子で——
「つまり二人とも似たような趣向を持っていて、たまたま教諭の補講で邂逅して、利害が一致したって事ですね。あと、この星、または、このテェラーのまちに宇宙人、または昔からそこにいたように人々を洗脳して侵入した人に扮した宇宙人が紛れ込んでくる、またはもう来ているかもしれないんですね。」
キメラはうなった——
「やはり君をこの秘密の集まりに入れて正解だったよ。そう、つまり、宇宙人がこの街にもういるかもしれない、ということだ。姿・形はふつうの人間だが、中身は……、もうわかるな?」
「はい。でも、例えば、わたしたちがその宇宙人と接したとき、どう見分けをつければ良いんですか?わたし、見分ける自信がないです。」
教諭は人差し指を上に上げた——
「一つは、わたしたちは「異物」である宇宙人が侵入していることをすでに知っているので、彼らのカモフラージュである、視覚的洗脳は見抜けなくても、微妙な、……、微妙な挙動の違いから彼らを推定できるだろう。そして——」
ダバノンは教諭に指さされた——
「ダバノンくん、君にわたしが『勉強』を勧めたように、わたしも君のいう、SF小説や映画や漫画なんかをむさぼってみた。その結果——」
ダバノンは嬉々として聞いた——
「その結果?!」
「1988年のジョン・カーペンター監督の映画、「ゼイリブ」をヒントに、あるひらめきを得たので、形にしてみた。」
教諭は、何やら研究室の奥から、ガサゴソやった後、なにかを持って来た——
「これだよ。」
ダバノンはワクワクを隠せなかった.
そこにあったのは——
黒いサングラスだった——
一見、普通だが?
「まさか!?キメラ教諭、あれですか??あれ作っちゃったんですか??」
ダバノンは満面の笑み——
キメラもつられてワクワクを感じていた——
「そう、あれを作っちゃったんんだよ。ワハハッ。」
取り残された者が一人——
セーラだった。
「なに??「ゼイリブ」って?この黒いサングラス、なんなの??」
キメラはあごでしゃくって、ダバノンに説明をうながした——
「つまりだな〜、この黒いサングラスをかけて物を見ると、その“本質”が見えるんだよ。俺はその映画見て、本質メガネって呼んでた。」
セーラはまだ釈然としない様子——
「本質メガネ??だからどうしたの??」
意外と勘がわるいセーラ。
キメラは言った——
「例えば、街の電光掲示板、“みんな大好き、コカコーラ”というコピーが流されていたとしよう。このメガネで見ると、どう見えると思う?」
セーラは考えた——
「“コーラ飲んでね”?とか??」
ブブゥゥ〜と手でばってん印を作ったキメラは、
「答えは、“お前らを砂糖漬けにしてやる”だ。怖いだろう?」
ちょっと動揺したセーラだったが、忌憚無く聞いた——
「つまり、そのサングラスで人間に化けてる宇宙人を見れば——?」
「そう。グロテスクな宇宙人がくっきり見える」
ダバノンは興奮して——
「教諭、すげ〜〜!」
セーラはまだこれが実際に役に立つところが想像できずにいた——
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