“ある人”
どうなる?
「ところで、ダバ。“ある人”ってだあれ?」
ダバノンは逡巡した——
「それは、お前……、言えないことくらい俺にもある。」
セーラはふくれっ面になって——
「あれだけわたしが勉強しろ勉強しろ、と、それこそ呪文のようにあんたに言い聞かせてきたのに、あんたはどこ吹く風。こんな短期間にあんたを変えることができる人、“ある人”って誰よ?答えなさいよ!」
「それは言えね—」
「もう!!」
「いつか話せるかもしれないがな」
セーラはドキッとなって——
「今!!今教えないさい!!」
ダバノンは時計を見て——
「悪い、ちょっと行くとこあるから、学校抜け出すわ!留年も免れたとこだし。」
「ダバの馬鹿!」
そそくさとダバノンは教室を出ていった。
気が気じゃないセーラは、ダバノンが教室を出ていくのを確認して、ダバノンに気づかれないように、教室を出ようと思い——
「先生、ちょっとお腹が痛いので、保健室行ってきます」
「ふむ。よろしい」
(ダバを尾行すれば、例の“ある人”の正体がわかるかも知れないわ。でも、……)
セーラの脳裏を最悪の状況をよぎった。
(まさか、「彼女」なんてできてないわよね……?だったらわたし、絶望しちゃうわ)
「まさかねっ」
フフンっと鼻を鳴らして、何事もなかったように、セーラはダバから少し遅れて教室を飛び出し、ダバの後を追った——
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
尾けること二十分——
ダバはこの尾行中、いっさいの迷い無く、淡々と歩を進めていく。
セーラはテェラー高校周辺までの土地勘はあったが、どうやらダバの進んでいく道は知らない住宅街、そして、郊外へと続いていた——
(あいつ、どこ向かってんの?こんな道、あいつも知らないはずなのに……。でも「彼女説」は消えたわね。ホッ…。こんな郊外にいるはずないものね)
そしてさらに十分——
(あ!止まった!目的地かしら!!)
そこはボロボロの、錆びたほったて小屋だった——
(ここに向かってたのかあ〜、でも何で?)
「キメラ教諭、今日は本来、教諭の自宅で僕の、勉学の習熟度と結果を話したり、見せたいと思っておりましたが、教諭から朝、どうしても、と電話が来ましたので、教諭の私有の実験場までやってきました」
セーラは、
(キメラ教諭!!?何で??どーいう繋がり??)
キメラは姿を見せた——
「悪かったね。わたしのわがままで……。でもね、ここでこの話をするのは控えよう」
へ?と、ダバノン。
「どうやらお邪魔むしが一匹しのびこんでいるようだからねッ!」
キメラはずばッ!と物陰に隠れたセーラを指差した——
「や、やばい!」
セーラは激しく動揺した——
応援してくれると嬉しいです。