シンプル・イズ・ザ・ベスト
「ところで——」
と、ダバノン、
「グレイはどこの星から来たんだ?そして、グレイは善玉でも、悪玉の宇宙人もいるわけだろう?そこのところはどうなっているんだ?」
少し、表情を歪ませたグレイは——
「僕、サジタリウス星という星から来た。君らにとって悪玉の仲間は僕ら宇宙人同士には気兼ねなくいいやつばかり。でも、親分と同じで、人間には憎悪、または脅威を感じ取っている。」
「やっぱり、悪玉は俺たちに強行的に攻撃してくるわけだろう?俺らも武装した方がいいかな?」
グレイはニンマリして——
「それは大丈夫。それこそ、ダバ、君の映画で悪玉が何人かやられたが、みんなそれがトラウマとなっていて、君に一番の恐怖を持っている。その仲間であるセーラ、リーダスらに対しても、そうそう襲ってくることは無い。やっぱり、僕は強硬派には、『武器』より、『芸術』で対抗した方がいいと思う。それこそ、君が、君たちがこの大学を出て、偉大な芸術を成し得ることイコール、彼ら、または親分の抹殺につながる、ということだ。悲しいけど。」
そこでリーダスが割って入って——
「それは分かったけどよォ、なんか、なんていうんだ、いまいち、戦っている感じに乏しいというか、……、ダバ、セーラ、わかるだろう?「戦い」ってもっと、こう、こんな間接的でなくて、それこそ、「武器」持って、肉弾戦をするってイメージなんだよな〜、でも、キメラ教諭は「もしもの時」って言って、ビームガンを開発している、とも言っていたよな?そこのところはどうなんだろう?」
グレイが答えた——
「親分は『芸術』が分かる。そして、僕含め、どの宇宙人も芸術のおもむきが分かる。でも、一部、粗野な荒くれ者がいて、そいつら、『芸術』、分からない。サジタリウス星人の0・5割がそいつら。そいつらなら襲ってくるかも知れない。恐怖心を抱いていないから。キメラ氏はそいつらの対策のために、ビームガンが必要、と言っていると、思う。」
セーラが喋った——
「『芸術』が九割の宇宙人に理解できることは分かったわ。でも、あなたの親分や、強硬派のように、それを享受すると死んでしまう者と、グレイ、あなたみたいにむしろ多幸感を感じて、死ぬどころか、癒される、善玉の宇宙人との差はなに?」
「人間に憎悪を抱いているか、どうか」
「シンプルね。」
セーラは呆気に取られた。
リーダスは口火を切った——
「つまり、あたしたちの基本方針は別段変わらない、ってことだね。この大学に通い、勉強して、より芸術力の高い作品を量産すること、それだけって訳だ。うん、シンプルだ。」
「シンプル・イズ・ザ・ベストだな」
ダバノンは簡素な言葉で締めくくった——