宇宙人の正体
グレイタイプ——それは誰しもステレオタイプに想像するエイリアン=宇宙人の典型的な姿形をしたものを言う。いわゆる、目が黒目がちで、大きく、体がシルバーで、頭が大きく、体がひょろっと頼りなげな、頭脳発達型のエイリアンの典型を言う。それが、今、ダバノンとセーラ、そして、それと親しげにしているリーダスの眼前にいる。
ダバノンは口走った——
「おい!リーダス!本質メガネ、っていうかコンタクトはつけているよな!?そいつ、エイリアンだぞ、俺たちには見えている!セーラにも!コンタクト忘れたのか!?いいから、そいつから離れろ、リーダス!!」
リーダスはやれやれ、という様子で——
「待て、待てって、ダバノンよぉ〜、こいつは……」
言い終わる前にダバノンはグレイタイプと思われるエイリアンに突進していた——
「今助けるぞ!!待ってろリーダス!」
リーダスはイラッときて、近づいてきているダバノンに、持ってた映画論の参考書を投げつけた——
コキンッと頭に重い参考書がダバノンの額に当たった——
痛がるダバノン。血は出ていない。そこまで強くは当たらなかったみたいだ。
「ダバ。お前はまず、私の話を聞け!セーラも!こいつはキメラ教諭の言っていた定義では確かにエイリアンだけど、さらに教諭が言ってた“善玉”のエイリアンなんだよ。もちろん、本質メガネをつけてない他の生徒からは普通の男子学生にしか見えていない。最初、私がこいつを見たときはお前たちと同じ反応をしめしたさ、でもな、こいつがキメラ教諭とももう会っている、っていうんだ。そして、この地球に来たのは、すぐ昨日だということ。なんでかっていうと……」
すると、“そいつ”が会話に入ってきた——
「僕、エイリアン。確か。でも、人間殺さない。人間、好き。元々、昨日まで他の惑星、居た。僕の親分、人間の星、見てこい、言った。あと、これ一番大事なこと、親分自ら、地球来てる。なんか有名人に紛争してる。くり返す、僕、人間好き。」
ダバノン・セーラ「喋った!」
ははは、とリーダス。
「そりゃ喋るさ。知的生命体なわけだからな。」
「親玉、って地球への脅威の根源みたいな存在のことか?」
ダバノンは恐る恐る話した——
「ああ、グレイはそう言っている。あと、こいつの名前、安直すぎるけれど、『グレイ』でいいか?それ以外思いつかなくてな。」
ダバノン・セーラ「いいと思う」
「お前ら、へんなとこでハモるな。できてんのか?」
ダバノン・セーラ「そんなわけないだろ(でしょ)!」
「へへ、からかっただけだ。まあ、いいや。とにかく本題だ。こいつ、グレイは、親玉とは思想が反対なんだ。な、グレイ?」
「そう。親分、地球征服、考えてる。僕、真逆。地球人と仲良くしたい。文化、特に映画も好き、だから即席で映画監督科入った。」
「な?友好的だろ?仲良くやろうぜ?」
「でも——、」
セーラは言った。
「その、グレイはなんのために地球に来たの?」
グレイは即、答えた——
「地球、救うため。それだけ。」
グレイがそれを言い放ったあと、講義室からはピリピリした空気は消え失せ、どこかなごやかな空気が流れ始めるのであった。