古典とファーストコンタクト
「じゃあ、今日はコズミックホラーの創始者、ハワード・フィリップ・ラブクラフトについて学んでいくぞ」
テェラー私立芸術大学の講堂。文芸科の講師、ミスター・ミゾバタが授業の開始を宣言した。
ダバノンとセーラは席に並んで座っていた。
「ダバ、あんた、ラブクラフト詳しいんでしょ?ちょっと前に全巻読み終わったって言ってたじゃない?私、一冊も読んだことないから、もし、わかんないとこあったら教えてね。」
「まあ、一応な。でも、ラブクラフトの作品、って表現が迂遠、と言うか、だらだらクドったらしい文章でめちゃくちゃ読みづらいんだよ。あんまり好きではないな。でも今でもいろんな創作物の元祖、っていうか、後世に与えた影響がものすごいって聞いたから読んだだけで……。」
ふぅ〜ん、といった表情のセーラ。
「今思ったけど、あんたって、基本的に“原理主義”よね。いや、やばい意味じゃなくて、創作物を選ぶとき、古典?って言うの?オリジナルから手をつけるって言うか、好きなの?古典?」
それを受けてダバノンは——
「好きじゃねえよ。ただ、古典とか名作っていうのは、『時代』に淘汰されずに現代まで残っている、っていう芸術力、必然性があるんだよな。スーパーオリジナルだよ。それこそ、今、新作である話題の本や映画を見るのも大事だよ。だけどなー、消えない古典を勉強してれば、確かな『鑑賞眼』が身につくと思うんだよ。こんなこと言ったら偉そうだけどな。」
「あんた、変なところに真面目というか、愚直、というか……。不真面目だとばっかり思ってたけど、本とか映画とかに関しては、向き合い方がすごく真面目よね。そこは尊敬するわ。なんか悔しいけど。」
——講義が終了した——
「ダバ、映画科のリーダスに会いにいきましょ。リーダスにはまだ文芸科に転科したこと教えてないんでしょ?」
「ああ、一応顔出しとくか……」
二人はそそくさと映画科の講義室に向かった。
そこには——
「え!」
二人は同時に声をあげた——
なんと、リーダスは『ある人物』と親しげに話していた、のだが——
その人物が——
ダバノンが思わずリーダスに叫んだ。
「おい!リーダス!そいつ、そいつって!!」
当のリーダスは余裕の表情で——
「ああ、こいつか。こいつはな——」
リーダスは軽快にその人物を紹介しようとしたが、間髪入れずにセーラが、
「エイリアンじゃない!!!」
本質メガネにはグレイタイプと思われる『宇宙人』が映っていた。