物理法則の有無と、新生ダバノン
「自由に文芸科に入って小説が書けるなら、チップの手術、受けたいと思います。」
それを受け、嬉々としたキメラは——
「そうか!やってくれるか!こんなに早く決断してくれるとは意外だった!わかった。じゃあ始めようか。」
え?とダバノン。
「ええ?こんなに早く手術って出来るものなんですか?だって開発が成功したの、さっきでしょう?それでもいいんですが、こちら側としても、また、意外でした……。」
オホンッ、とおおきく咳払いをしたキメラは——
「もう、実証はできている。この邸内に埋め込んだチップは見事にその機能を果たしているよ。見てくれ。」
と、キメラは何食わぬ顔で、ある折れ線グラフの上下するパソコン画面を指差した——
「こ、れは、折れ線グラフ、……ですね。真ん中に横線がひかれていますが、この横線より上にはいかないですね、どの折れ線も……」
ふふふ、とキメラ——
「そうなんだよ。その折れ線グラフに接する、横線よりは上にはいかない。なぜなら、その横線を飛び越える時、我々の脳内、はなした内容、等がこの邸から宇宙人の惑星に届いている、という証明になるからだ。つまり——?」
ダバノンは不思議そうな表情で——
「この邸からは宇宙人になんの情報も与えてない、という証拠……。」
「そう。チップをつける前までは、時には少量、また、時には大いに、この横線をグラフは突き抜けていたのだ。この、今の、横線から一切グラフが出ない、この状態を観察してわたしは研究の成功を確信した。どうだ?立証性もあるだろう。ちょっと注射みたいに埋め込むだけさ。痛くない。さっそく、やるか?」
———ダバノンにもう迷いは無かった———
そして、手術の終了後——
ダバノンはチップの埋まった自分の手首を見た。外から見ても、どこにチップがあるかがわからない仕組みだ。ダバノンは次に自分の頭を両手で触れた。そのあと、自分の両手を見た——
「僕は、……違う人間になったんでしょうか?」
「ああ、君は新生、生まれ変わったダバノンくんだ。これからは好きなことを好きにやりなさい。」
「ほ、ほんとうに……?」
「そんなに疑わしいなら、君の脳波をこの脳周波観測ヘルメットで測ってみよう。」
すると、ヘルメットがつながっているモニターには先ほどと同じグラフ映像。横線には近寄りもしない、低周波がそこにあった——
「これで立証されたな。ダバノンくん、君の脳に関しても、……、ってうわあっ!」
ダバノンが、説明するキメラに抱きついていた——
「よかった〜、ほんとによかった〜、僕は真人間になれたんだあ〜。」
ダバノンは泣きじゃくっていた。
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一方、その頃、銀河系深くのある惑星——
「な、なに、目標物からの”命線”=シグナルが一切なくなったぞ!?どうなっている??」
「わ、わかりません。あまりにも突然消えたので。」
その者は、深く考えるそぶりを見せたあと、
「やはり、手先だけではなまぬるかったか……、時期にはわたしも地球へ——」
物事が大きく転倒しだした——