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ナマ言う若者

二人の会合

 数日後——


 ダバノンはキメラ教諭の自宅、その中の自室=研究室にいた。キメラからの猛烈なラブコールで二人で実験をすることとなったのだ。そして、お互いがどの分野のどの研究分野に、より精通しているか、宇宙人の侵略問題に対しての具体的な対策はどうするか、などを議論しようともしていた。


 ダバノンは、

「宇宙人は、まず、我々地球人より、地球人のことを知っている、と推測しております。」


「ほう、それは何故だ?」


「彼らにはおそらく、殺されでもしない限り、寿命、という概念が存在しない。死なないんです。」


 ふむ、と唸ったキメラ。


「同意見だ」


「そして彼らは我々人類を、物凄く長い間、その繁栄から現在に至るまで事細かに観察・記録している。これが彼らが僕らより僕らに詳しい、という根拠です。」


 キメラはいきなりにこやかになり、


「まったくまったくもって同意見だ。しかし、君はどの観察、研究結果を元に、その根拠、推論を導き出したのかね?そんなに若いのに……、時間は限られていたはずだ。どうやった?」


 ふふっ、とダバノン。


「教諭は、フィクション、SF小説なんかは読みますか?」


 直球な質問だった、質問されたキメラにとっては……。


 キメラは取り乱しつつ、


「理論の参考程度には読んだが、あくまでフィクション、という認識で、詳しくは……」


 言い終わる前にダバノンは口を挟んだ—


「だからダメなんですよ!だからその生ぬるい研究に三十五年もかかったんだ。いいですか?キメラ先生、SF、いや、SFじゃなくてもいい。人類の霊感と物凄い知能によって書かれた、残されてきた、人類の資産、フィクションには、事実、科学的事実を凌駕する“予言”が内包されているんです!!詳しく話すと、口幅ったくなるので、話しませんが、それは覚えておいて下さい。では、ここに、この、日本の亡くなった小説家が書いた『虐殺器官』という小説を先生に貸します。フィクションの恐ろしさを知ることになるだろうから。」


 くそみそに言われた教諭だったが、ここは素直に——


「フィクションの力か、覚えておく。学術書や新書や研究論文だけに頼ってた私に、知らない、新しい展開を与えてくれそうだ。ありがとうよ。『虐殺器官』、か……、必ず読んで、感想を君に告げる。約束するよ。」


 あまりに教諭がへり下って見えたので、ダバノンは、


「すみません。生意気言って。逆に言えば僕には陰謀論と怪奇趣味とフィクションの知識くらいしかない、と言ってしまったようなものです……。」


 にっこり笑った教諭は、


「次に会う頃には少しは君とSF小説、フィクションの話しができるわたしになっていると思う。待っててくれ。」


 そして、青年に釘を刺すことも忘れなかった——


「ちなみに、『勉強』は研究にめちゃくちゃ役立つぞ。もう補講なんか来なくていいように、そっちも頑張るんだよ?」


「は、はい。」


「君と話したところ、君の地頭はめちゃくちゃキレるようだから。」


(セーラみたいなこと言ってら(笑))


 その日の会合はそれで終わった——

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