総合科の真
「総合芸術探索科は、クズの集まりなんだ。」
ぶしつけにそう言い放つ学生科長、シェルドンに対して、少しのイライラと、不思議な当惑をあらわにしたダバノンは、即言い放った。
「クズ?その心は?」
フッフと苦笑いしてシェルドンは語り始めた——
「もともとは、他の学科の定員オーバーの際の助け船、と、いうか、受け皿だったのだよ。“あくまでわたしはテェラー私立芸術大学に在籍しています”という肩書きが手に入るところがみそだ。」
ダバノンは少し納得しかけたが、すぐ素に戻って、
「でも、仮にもテェラーをめぜして何かしらの芸術分野を志して来た人たちのはず……、それだけで“クズ”呼ばわりはちょっとひどいんじゃ無いですか?」
気づけばシェルドン学生科長はたばこに火をつけていた。そして一吸いしたあと、ダバノンにこのたばこの火のついた先端を見るように手で指差して誘導して、
「例えば、このたばこ。最近世の中では、こいつへの規制がキツくなってきた。まあ、本題とはズレるが総合芸術探索科の専用講堂のなかではこれをふかしている奴らで溢れかえっている。つまり、何が言いたいかというと、この学科は他の専門分野、君なら映画だったな。それらの、“夢破れて”、「しかたなく」、テェラー芸大の冠欲しさに、グレて自暴自棄になった生徒たちの集まりなんだ。好きこのんで入るもんじゃない。わたしから君を見れば州内ナンバーワンの偏差値を持った子が、好きこのんでヤンキー高に入るのと同じに感じられる。それでも、総合芸術探索科に入りたいか?」
なるほど、とダバノンはうなった。しかし、しかしだ。まだ肝心の、『何』を学べて、どんな将来を選べるのかを聞いてない。それを聞くまで引き下がらない、と決めたダバノンは、
「生徒の素行が悪いのはよく分かりました。でも、あと二年。ハタチになれば誰もがたばこぐらい吸いますし、僕としては問題ありません。僕はまだ吸っていませんが……。それにその夢も希望も失った生徒の中にも、まだ夢をあきらめていない生徒がいるかもしれません。それより、大切なのは、『何』を学べて、どんなカリキュラムで、どんな将来を約束されているのかが気にかかります。」
「自由さ」
は?とダバノン。
「本当に文字通り自由なんだよ。何をしようと自由。一人一人、もちろん分野は違うし、君みたいにコロコロ変える生徒も、若干名だが、いる。講師・講義も生徒が自己管理、学校に自分用のカリキュラムをメールで転送し、もし、自分の望む講義が受けられなかったら、変更して、また、違うカリキュラムを編む。」
ダバノンは目を丸くした。
「それって——」
両拳を強くにぎりしめたダバノンは言った—
「超、理想的なカリキュラムじゃないですかあっ!」