転科の難(なん)
サンゼン広場での映画上映会の翌日——
ダバノンはさっそく大学の学生科に転科申請をしに行った。
「だ・か・ら!!僕は映画監督科から総合芸術探索科に転科したいって言ってるんですよおっ!!」
学生科のシェルドン学生科長は、学生科室に置かれた大きなソファに、そのズングリとした体型をうしろにそらせて、
「君が何を言っているのか私には分かりかねるな。君、昨日のサンゼン広場での映画上映会、異彩を放ってたじゃないか。大賞こそ取れなかったが、ユニーク学生賞は取ったし、私もそれなりにいいと思った。映画に君ほど詳しいわけでは無いがね。それが、転科?少し頭を冷やしてくるがいい」
ダバノンは思った以上に転科の話が前に進まないので、思い切って、
「映画に興味失ったんです。そして、僕の……、そう、僕のことを一番理解してくれる人生の先輩が、「君の職業は『オン・ダバノン』だ!!」と、そう僕に告げたんです。意味、分かります?」
「わからん」
即答だった—
「つまり、これは自分で言うのも恥ずかしいですが、僕は気が多い。絵、描きたい、文章書きたい、楽器やりたい、映画撮りたい、と興味が分散するんです。」
「それが?」
ダバノンはいきおいづいて——
「職業、在り方、生き様を定義するなら、自分自身、“オン・ダバノン”をやっていこう、と。さまざまな芸術・創作活動をその時々でサイクルしていこうと……。そういうわけです。わかっていただけたでしょうか?」
「……、なんとなく話はわかったが……」
ダバノンは喜んだ。
「やったあ!!シェルドン学生科長ならわかってくれると思っていました!!では、さっそく転科の手続きを!!」
ダバノンは勝手にハイテンションだった——
シェルドンはそれを静止し、
「待て、待て待て。話はまだ終わっちゃいない。転科の理由はわかったが、ここだけの話、君の入りたい総合芸術探索科だが、」
期待の表情のダバノン—
「もしかして、定員オーバー?」
「いや、違う。むしろガバガバだ。定員は大割れしている。なぜかわかるか?」
「なんでですか?」
「この学科、総合芸術探索科は……、」
息を呑むダバノン——
ごくり—
「クズの集まりなんだ。」