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それぞれの卒業

別れの季節—

 そうして、なんだかんだで卒業式。元から研究に前のめりで勉強や学生生活や部活動はそっちのけだったダバノンにはなんの感動も湧かなかったが、勉強を頑張り、学生生活もそれなりに楽しみ、部活動(弓道部)に精を出したセーラは、卒業を悲しみ、なみだ、なみだだった。


 卒業生が学校を出るときには、下級生が手と手を合わせて、アーチをつくり、卒業生を出迎えた。


 セーラは、

(みんな、ありがとう……、ありがとう。楽しい学生生活だったわ。)


 と、心の中で感激と余韻に浸っていたが、


 ダバノンといえば。

(キメラ教諭の研究の進み具合が気になるな……。俺は映画に魂を売るって決めたけど、帰りにちょっと教諭のウチでもうかがってみるか……。)


 まったくべつのことを考えていた。


 そして、下級生がつくったアーチをくぐり終え、校門から外に出た時。


 不意に後ろからダバノンの肩をたたく者が——


「よ!ダバノン。無事卒業できて良かったな。聞いたぞ、お前、テェラー私立芸術大学行くんだってな。それも映画監督科!良いじゃないの!!俺は親父の八百屋に就職だあ〜。まあ、これまで通り、親しく行こうな!!じゃあな!」


 旧友のサイモンだった。

 彼はダバノンが一言も話す間もないまま、まくしたて、勝手に来て、勝手に去っていった。


(相変わらず、おめでたいやつだ……)


 ダバノンはあきれていた——


 そして、部活の後輩との最後の別れの挨拶を互いに泣きながらしていたセーラを見つけた。


 ダバノンはセーラにさりげなく耳打ち——

(映画もいいけど、俺、とりあえず、キメラ教諭がどこまで研究進めてるか見てくるわ。ついでに小説とか映画にどれだけくわしくなっているかも見てくる。)


 すると、セーラがダバノンに惚れていることをセーラから告白されいて、すでに知っていた部活の後輩の一人の女生徒が、ニヤニヤして——


「セーラ先輩。ダバノン??さん(で合ってたかな?)に何か言うことはないんですか?」


 アメリカの学校では、もちろん異国の地、日本のように、制服の第二ボタンをもらうなどという慣習はまったくない。そのかわり、この国はアクティブなので、卒業日に直で告白する、というのが慣習になっている。


 セーラは顔を真っ赤にして——


「え?なに?あんた。ちょっと来なさい!!」


 取り乱したセーラは、後輩の耳づてに——

(どっちにしろ、進路はいっしょだから今言う必要はないの!わかった!?)


 女生徒もまた耳打ちして——

(彼を追って、都会の有名大学をあきらめてまでいっしょにいたいだなんて!なんてロマンチックですの〜、熱いですね、セ・ン・パ・イ!)


「怒るよ?」


 セーラの顔はまじだった——


「すいません!!すいません!!ごめんなさ〜い!!」


 女生徒は平謝りした——


「分かればよろしい!」


 周りの事情を知っている部活仲間たちは皆一様にくすくすッと笑っていた。

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