世の中の仕組み
さて、ガジェットの使い勝手は??
「と、いうことで……、」
キメラ教諭はおもむろに、研究室の奥から追加の本質メガネ(サングラス)を二本用意した。
「繁華街へ出て、どこかに宇宙人がいないか、パトロールをしよう!ダバノンくん、セーラくん!」
「はい!!!」
と元気よくダバノン。
「は、はぁ……」
と、あまり乗り気じゃないセーラ。
そして三人はキメラの家を出て、このヤマハ州、テェラー市の繁華街、アナモネ通りへ躍り出た。
町はどこを見ても、人、人、人。片田舎であるテェラー市の唯一の商店街だけあって他の地域とは一味ちがう。
「あ、怪しくないですか?わたし、ちょっと恥ずかしい……」
セーラはダバノンとキメラの三人揃ってサングラスをしながら町をかっ歩することに羞恥心を感じていた。
ダバノンは、
「え?俺はまったく気にならないけれど……」
キメラは、
「これもテェラー市、そしてこの国、そしてこの地球を守るための重要な任務なのだ。我慢してくれ」
そして、町を歩いていく途中、セーラがいきなり悲鳴をあげた。
「きゃああ!!」
戸惑うダバノンとキメラ——
「どうした?セーラ!?」
ダバノンが駆け寄った。
「あ、あれ……!」
セーラが指差した方向を向いてみると——
町のマッサージ店の看板があった。
サングラスを通してその看板を見ると——?
“ねえねえ、お姉さん、ちょっとエッチなマッサージしていかない?“
と書かれていた。
キメラは——
「セーラくん、サングラスを、……、“本質メガネ”を外してみなさい」
セーラは言われた通りにサングラスを外した——
さっきの看板をもう一度見ると、
“ご婦人の方、豊かなリラクゼーションマッサージはいかが?”
と書かれていた。
「こ、これが本質メガネ……」
キメラは——
「やっとこのメガネの効用をわかってくれたかい?そう、社会、世の中には虚位・噓・見せかけだけの情報で溢れている。いかに人を欺いて商品、サービスを売り込むか、本当に……、困った資本主義社会だよ。」
彼は呆れ顔だった——
セーラは、
「今まで、どこかこの世の中は、私たちのために、大衆のためにより良くしてくれる共同体なんだとばかり思っていましたが、違ったのでしょうか?」
キメラは指を振ってチッチッチッとやって——
「“本質”とはえてして、性急な表現を持つ。それは避けられない。しかし、全てがあのマッサージ店のような虚位の広告を出しているわけではない。試しに裸眼で、あの、カニ道楽の看板を直視してみたまえ」
セーラは一瞬躊躇したが、教諭の言う、カニ道楽の看板を裸眼で見た——
“カニは身も味噌もうまい!みなさんよってらっしゃい見てらっしゃい”
「そして、本質メガネで見てみるんだ」
セーラは言われた通り、再び、本質メガネでカニ道楽の看板を見てみた——
“カニは身も味噌もうまい!みなさんよってらっしゃい見てらっしゃい”
セーラは驚いた——
「え!?うそ!表面の情報と、“本質”に違いがない!なんで??」
「世の中は嘘ばかりでは無いと、真っ当に商売をしている企業、団体もいる、ということを君に伝えたかった。
世の中に絶望するんじゃない」
セーラは、
「は、はいっ。」
セーラは少し明るい気持ちになれた——
ブックマーク、一件、ありがとうございます(2025年9月10日現在)