第二楽章-①-
今日は諸事情あって、投稿がぎりぎりになってしまいました。
いつも読んでくれている方には、申し訳ない限りです。
激しい痛みが全身を襲う。斬り付けられた場所は右足から徐々に首の方へ登っていき、永遠にも感じる地獄を、僕は浴びせられた。全身の激痛に対し僕の視界は暗く、赤くなっていき、月もやがて満足に望めなくなった。
「まぁ、こんなもんかな」
何分、何時間経過したのかわからない。ついに無限に感じられる時間が、終わりを告げた。
「まだ楽しみたいけれど、もう朝だしね。月が隠れるだけで効果を無くすその能力は朝になれば発動できなくなるんだろう?わざわざ関係のない人間に見つかるつもりはないし、ここで処分するね」
そう言われ、赤黒く染まった鎌が振り上げられる。必死に逃れようとするが、そんなことをしたところで、また斬られて元の場所に戻されるだけだ、と考え諦める。むしろ、ここで終わって欲しいと本気で考えた。ここで死ねば、楽になると。
ーー偶然か必然か、僕に逃げるチャンスがその時に訪れた。
僕らのいる場所へ近づく足音がいくつも聞こえたからである。これ以上ない好機を逃すまいと、僕の足に力がこもる。
が、瞬時に我に返る。ここに近づく人物は本当に自分にとって無害な人物なのか、そもそも人なのか。
死神が僕に対して鎌を思いっきり振り下ろそうとして、周囲を警戒していないときに、わざわざ足音を立てて近寄ってきた者たち。いくら何でも都合が良すぎるのでは、と考えた。
目の前の死神が用意した、僕を絶望させるための罠なのか、月が出ている間は不死身になっている僕の体に興味を持ち、見世物にしようとしている輩なのか、僕には判断できなかった。
勿論、そんな物事を瞬時に思い付くわけがなく、この想像は、得体のしれない不安として僕に大きく負担をかけた。
だからこそ、何もしないことが最適解だと思った。もうほとんど動けないし、近寄ってきた者たちには助けを求めることはできないし、別方向に逃げたところで、すぐに捕まるだろう、と。
その意図を察したのか、鎌は勢いを増して僕の首筋に近づいてくる。
ーーやっと、解放される。
この世界に着いて一番に思った月のこと、聴いた音のこと、全てを忘れ、そう思った。
何も考えず、苦しみから抜け出すことばかり考えている僕は、死を覚悟し、目を瞑った。
一分、五分、十分、いやもっとかもしれない。きっと実際の時間は五秒にも届かないのかもしれないが、その中で一秒に満たない速さをもつ鎌が一向に届かないことに、僕は不思議に思い、片目だけ開けて、周囲の様子を見まわした。すると、そこには思いもよらぬ光景が広がっていた。
首が飛ばされた、死神。
所有者を失って宙に転がる、赤い鎌。
死神を切り裂いた僕より少し年上に見える青年。
そしてその青年が持つ、返り血が一切ついていない真っ白な片手剣。
そしてその片手剣に映る、美しい沈みかけの満月だった。
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