第一楽章:前編
言ったそばから月曜投稿が無理になりそうでした。
あまり書けなかったうえ、区切りをつけるために、想定よりも短めになってしまいました。
目が覚めると、すぐそこには月があった。満月で、周りには雲がなく、月と星のみが存在している空。
僕が『月光』の第二楽章を聴くと一番に思い浮かぶ光景だ。
普通、こんな時は自分のいる状況に困惑するものなのかもしれない。けれど、僕はこの世界にいることが当たり前に感じられた。
自分の希望が見えているけれど、先が暗く思える第一楽章が終わり、自分の中で第二楽章が始まっているような気がする。
ふと、首元に手をやる。事故で大破しているはずのヘッドフォンが傷一つない状態で首に掛かっている。ポケットの中のスマートフォンも無事だ。電波はさすがに圏外になっているが、ダウンロードしている音楽は聴くことができそうだった。
僕はつかさずに『月光』の第二楽章が流れるように操作する。
ピアノの奏でる音を聞いて、実感する。僕の人生は、今、第二楽章が始まったんだと。
ヘッドフォンを付けた状態で起き上がり、周りを見渡す。周囲は真っ白だった。
真っ白な地面と、青黒い空。まるで世界が二つに分割されているようだった。
現実ではありえない不思議な世界に自分は死後の世界と呼ばれるところにいるのでは、という考えが、頭によぎる。
そんなことを考えていると、後ろから肩をたたかれる。後ろを振り返ると、羽が生えた、天使のような女性が、そこにいた。
「やっ……り……た」
慌てて、ヘッドフォンを外す。不快に思われただろうか。
「な、何か?」
しばらくまともな人付き合いがなかったためか思わず声が裏返ってしまう。
「ええ、まぁ」
あいまいな口調で目の前の彼女はそう話す。美しい声をしていた。
「決まりですから」
この時は、微塵も思わなかった。
「殺すときは、正面から、って」
――彼女がこの世界において、最も危険な存在の一つであるといつことに。
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