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星の物語  作者: あおぞら えす
それははじまりなのか

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9/11

行く末は彼が歩む路

『貴様はわたくしよりも美しいと言われてさぞかし鼻が高いだろう!』

『見てくれ。こいつはわたくしが飼っている生き物だ。美しいがわたくしに敵わない愚かな生き物だ!』

『わたくしが美しいのは誰が見ても分かるだろう?』

『わたくしの妻はこの存在を醜いと罵るんだ。』


 罵倒、嘲り、罵り。見目の良さで捧げられた私は王にひどく憎まれ、牢獄に入れられ、見えない箇所に暴力をふるわれ、見世物とされた。その美しさは王にとって許しがたいものだったのだ。王は私を痛めつけても我慢できないほどだった。ならばどこか遠くに送れば良かったのに、それもできない。王は目の前に私を置くことで安心したのだ。美しいという噂を聞きたくないが為に。

 王に捧げられたというのも、旅の途中に拉致監禁され、貴族がそれを捧げただけだ。私は王に捕まった時点で王への復讐が始まっていた。王とその国に対する怒りはかなり強くあった。ただ殺すだけでは許すのはつまらない。だから、彼の妻とその息子に呪いをかけた。王妃は謎の病に罹り、王を貶すようになった。王は王妃を隔離させたという。息子は父親との会話を拒むようになった。王に対する対応が少しずつ変化していった。美貌と謳われていた王を皆が貶したり、口をきくのを拒むという異常な行動を起こしだした。王はそれに我慢できないはずだった。ただ、一番信頼していた愛人であった妻よりも愛していた女性に拒まれてからというもの、王は孤立し、覇気すらでなくなった。

 周囲をコントロールすることは簡単であり、誰もが王を認めなくなると徐々にその言葉に誰も従わなくなる。私はあの愚かな王が孤立していく様をあまり興味なく考えていた。元々この程度の復讐のつもりはない。王は私に話しかけるようになった。

『そなたは、わたくしを美しいと思うか?』

『・・・。』

『本当のことを、云ってほしい。』

『あんたは美しいよ。見た目だけ。』

私の言葉に一瞬だけ王は目を見開きそのまま黙った。彼の考えは単純だ。自らの終止符を考えている。そんなことを許すつもりはない。

『美しいのになんで、だれもみないのか、理解できないよ。』

『は、ははは、そうだな・・・』

『美しいあんたは私の居場所にいたらどうだ?ここは美しいものが居られる場所だろう?』

『・・・』

王は自ら牢獄に入ってきた。私は何も言わずその場所を明け渡した。とてもよく似合う。

『私はあんたが美しさを取り戻したことを皆に伝えてくる。』

私はすぐさま大勢を呼び集めた。

 人々は牢獄に入った王を美しい、美しいと褒め称えた。王はうれしさのあまり涙を流した。そして、数日もしないうちに彼は牢獄の中で餓死していた。だれも食事を与えずにいた。

 私は王が死んだことを確認した後に、王族たちの呪いを発動させた。王族と貴族に生まれた子供たちは自ら毒を飲み死んだ。子を亡くした親たちは嘆き悲しんだが子供が生まれるたびにそうなることで、ようやく、私の存在を思い出したようだった。彼らは私が捕まっている間、私よりも王に讃辞を送り私を見下していた。だが、事実に気づいた後は皆が絶望した。

 私は旅人だ。そして有名な能力者であり、異能を持つ特別体だ。だが、彼らが本当に絶望したのは私がただの旅人ではなかったこと。私はゼノロワの民の生き残りだった。ゼノロワの民とはヒルワン女王が造り出した王国に住んでいた優れた人々の総称だ。ゼノロワが高度な文明と様々な能力を持つ存在だということは有名であり、いくらすでに滅びていたとしても、生き残りと呼ばれる存在の恐ろしさを知らないことはないのだろう。『ゼノロワの民』と呼ばれた個体たちは、ただの人間とは思えないらしい。それが、かの地から旅を始めて知った事実だった。たった一人で大陸を壊滅させたとか、天候を操り国を滅ぼしたとか、そういった話はよく聞く。すべておとぎ話のように皆が言い合うのだが、最後はゼノロワの民を怒らせてはいけないと締めくくるのだ。

 そして、それが私だと云う事実にこの国はようやく理解した。私はゼノロワの民の生き残りであり、かの地を知る存在だ。滅びた国が実際に滅びたかどうかすら知らない愚かな人々。ただ、その人間が目の前におり、多くの人が何も命じられてもいないのに死を選ぶことに驚愕し、恐怖した。

 私はコントロールする力に秀でている。ただコントロールするのではない。自らが行動するように最初にインプットさせ、あとはそれを行わせるだけなのだ。

 私の能力がゼノロワ王国にとっては変わり種なだけだが、こうした場所では役に立った。彼らは思考力が弱く、簡単に異能にかかったのだ。




 ゼノロワ国は滅びた。そう、滅びた。私が国を出る直前の話から物語ろう。

ゼノロワの国は、とある場所に隠されるようにあった。その中で製造された、たくさんの人造人間と人間が共存していた。人造人間は異能の力を持った人間からデータをとり、造られていた。私は人造人間だと言われて育てられた。人造人間の多くはゼノロワ国の王族にその命を掌握されていた。王族が人造人間を造る意味はただ一つだった。王家の血筋はヒルワン女王から辿られている。国の最も偉い王とされているのは、ヒルワン女王の血筋でありその命はヒルワン女王と同じ、高潔なものでありヒルワン女王の血を受け継いでいる。そして、人造人間は王の持つ偉大な異能がその寿命を支えていた。王が去就し、その血筋が絶たれれば、国も衰退する。

 私が遣えていた王の名は、フェンシルム・ゲハイザーム・ゼノロワ。ゼノロワの名を受け継ぐ王家の中でも確実に違和のある王位継承を行った王だ。国王は王家の中にあるいくつもの家から王位を継げる者を選出し、継承していた。だが、フェンシルムはゼノロワの名を受け継ぐ家系ではない。ゲハイザーム家は人造人間を造る研究とその支配下に置く研究を行う家系であった。その家にゼノロワの名を継ぐ娘が嫁いだと噂を流し、その娘と結婚した夫、エンデナー・ゲハイザームが生まれた息子であるフェンシルムを王位につけさせたのだ。他家を退けられたのは妻だった。彼女は人造人間であり、ゼノロワの名を騙ることでエンデナーの正妻を名乗った。彼女は他者の心を読み、相手の想いを握りつぶす異能を持っていた。私の異能に似ていたために二人の悪事を暴き、二人を死に追いやることに成功したが、フェンシルムがゼノロワの名を受け継がない子供であり、玉座に就く前に真実を暴けたならば、ゼノロワの国は崩壊しなかった。

 王家は崩壊するにあたり、手順通りに国を去って行った。王家の名を継いだ者たちはいずれこの国に戻り、国の復興を行うが、それには国を去り一時的にすべてのシステムを止めなければならなかった。よって、王族は国を去ることが義務とされ、人造人間は国を守るために残ることが義務とされた。

 そして、私は国に残れなかった。人造人間だと思い込まされていた。両親は私を出産した後に、旅をしたいと家を出たという。名も残さずに、子供を両親の家の前に置いて消えたのだそう。私を施設に預けた祖父母が、ゼノロワの名を受け継ぐことを教えたのは、国が一度スリープすることで私も国を出ることを告げるためだった。

『そなたは我が一族の血が流れていることは事実だ。例え、親に捨てられたとしてもその名と血を受け継ぐ限り、この国の一部となる。我々はこの地を去り、戻ってくること。それが契約した理であり、そなたの血にも書き込まれている。悪事を暴いたことはそなたの役目だったと云うこと。時期国王として、そなたが王の名を刻まれたことは王の柱に描かれているとおり。そなたが帰還することが出発した後の役目も含めて定められている。帰還した後、我が一族として迎えよう。』

祖父は堅い口調でそういった。彼らの生き血に刻まれた王族としての名誉がそうさせているのだ。私は自分が王位を継ぐに値しないと考えていた。しかし、王の柱は私の名を刻んだ。

『私は、王様になるという責務を果たすに値しません。しかし・・・、この国は素晴らしい。そして、私がもしそうであるならば、また戻ってくることでしょう。両親に会うことはないと願いながら、外の世界を知りましょう。』


 こうして、国は一時的に休止した。次期王となることが定めになった私は、国を離れ旅をした。結果的に数多くの国で私は歓迎されなかった。冒頭の国は私の怒りで消えたと云っても過言ではない。それが私の役割のように感じたのは、私が原因ではない。

 私は玉座とはどのような者なのかそうやって理解を深めていった。


そして、歪な世界に連れ込まれたことで、怒りはとんでもないことになっていった。原因がとある国の異常者であったこともその怒りをより高みへと上げた。


「この世界はもうすぐ終わる。いや、終わった。私を閉じ込めたことを後悔し、『星夜』の願いは握りつぶそう。赦しは与えない。『レナ』を召喚し、あいつが使うはずの命を私がもらおう。」

異能の力で、消失できない存在を用意した。ただ一人笑うあの男に呪いを付与し、未来永劫死も己が命も自由にできなくするために、私は自分が扱う中でも奇異な異能を使うことに躊躇しなかった。

「人造人間は・・・『我が国』が持つ異能の力の最終形態。あの男を人造人間に変換することを決めた。これは『王』が唯一持つ特権だ。我が国に持ち帰り、さらなる実験を課すことにする。ただ、この異能には時間が必要だ。この世界をすぐに終わらせないよう、命を少しでも持たせるために・・・。」


 かの者はこうして世界の命を延ばした。何度も何度も繰り返させて。その分、多くの命が集った。その中の数人はかの者が招き入れたようなものだ。

 ソラはある国の貴族だった。ゼノロワの名を受け継ぐ女性と結婚した貴族の一人息子だった。名を受け継いだとしても、王家とは関わり合わない遠縁となるが、能力者として秀でた力が周囲から浮き、家出をしたのだ。

 テイは、とある国の元王様だ。妻にゼノロワの名を受け継ぐ女性を受け入れ、その子はテアである。そのテアは『星夜』の名を与えられ、道化のように演じていたが、最後にはその名を捨てるために行動することをかの者が裏から操っていた。

 カイは、ゼノロワの名を受け継ぐ父を持つが、その血には同時に『命の泉』と呼ばれる、世界のどこかにある命を宿す泉の女神『リテイン・フォン』とのあいだに生まれた『歪の血』を持って生まれた。女神を母に持つカイは二つの力を継承している。美形な理由も母親の顔が面影としてあるからだ。そして『歪な血』は母親を呼ぶことができる。これは、『リテイン・フォン』を手に入れたい人間からしたら、カイは必要な人物になる。

 ユミは歪な世界に取り込まれた女性だが、『願い星』を呼び寄せたことで異能が備わった。『願い星』とはかの者が人造人間を精製する際に余計に造り出した異能の力を封印した塊。それと強く共鳴したユミは、異能を受け入れた。彼女はかの者と共にゼノロワの国に帰還するための人造人間へと変貌していた。

 キリは精霊族の血を半分受け入れていた。それを誰よりも赦せずにいた。彼はこの世界に来る寸前に死を求めてその胸に刃を突き立てた。精霊族は長命であるが、半分は人間であるキリがその刃で死ねる確率はとても低い。ただ、長期間この世界で過ごしたことが彼の命を吸うことになった。

 かの者は、キリに救いを与えることはないかもしれない。でも、この世界に現れた者達の幾人かは、キリを救いたいと願うだろう。それは友情だったり、愛情であったり。彼は彼が思う以上に求められているから。

 ヒョーカイは一国の王子様だ。かの者を怒らせた国から生き延びた王子様。かの者の真実を知ったら、父親をもう一度殺しても良いと感じるだろう。彼らは幼い頃に逃げ延びた。苦労をしながら成長し、真実に出会う。


 命の制裁を行うためにたくさんの人間が集まった。フィナーレを飾るに相応しい、


時が来た。


「終りの鐘を鳴らそう。」

かの者は、笑みを浮かべた。怒り狂った微笑みはともすればあまりに美しい笑みだった。

「最後はみんなで大々宴を開こうか。」

かの者はあまりにも美しく囀った。かの者はとても美しいドレスを身に纏っていた。人生で、初めて身につけた女性を象る服はあまりにもに似合い、今まで誰もが男性だと認識していたことがまるで間違いかのようだった。実際に、かの者は生まれたときから女性であり、誰一人としてその名前を知らなかった。

「我が名が命ずる。『星夜・クンテイ』の命を我の支配下に。我が王国の長である、フィーブルタン・ゼノロワに魂を捧げよ。」


 正装であることと、その儀式の効果が絶大であることはすぐに示されるだろう。


つづく


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