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星の物語  作者: あおぞら えす
それははじまりなのか

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11/11

本当の悪意


 死を超越したい。

 星夜の我が儘は国家を悲劇へと向けた。

 彼は産まれた時から特異な力を持っていた。それが、彼の思考や相手への尊厳を薄れさせる原因になった。


 星夜・ランディロス・バルボロ。彼が産まれたバルボロ王家には数人の女性を囲う現国王ウーウィン・バルボロと王弟のシュミッド・バルボロの二人が玉座を争っていた。シュミッド王弟はウーウィンが民を虐げることをやめるように勧告し、派閥の人間にも自らを律するように言い渡していた。

 ウーウィン国王は、囲っている女性達と頻繁に戯れ、子を成すように指示していた。ウーウィンが束ねる派閥の人間はシュミッドに寝返っていったからだ。理由は、ウーウィンの魔法実験。彼は自らがほとんどもたない魔力を、他者から供給しようとした。

 それは、人間を人間と思わない、恐ろしい実験だった。それが露見し、ウーウィンから離れていったのだ。玉座を奪われかねないと、危機を感じた国王は、民を集め、自らの子供を産んだ娘の一家を国が保護するという身勝手な暴挙を行った。

 そして、産まれたのが、星夜・ランディロス・バルボロだった。彼はランディロス家から生まれた、次期国王になった。ちなみに、生家が行商人の末娘との子供であることを伏せている。そのため、公爵家であるランディロス家に養女として向かえ入れられ、正当な後継者として指名された。産まれた星夜はウーウィンから愛されることはなかった。ウーウィンはすでに酒に溺れ、腐敗していたからだ。身体も病気がちになり、ついに死去すると、直ちにまだ七歳の星夜を玉座に据えた。ランディロス家は養女の娘を暗殺し、頭の弱い星夜を政治の君主と据えることで、裏でお金儲けをしていた。それを王弟であるシュミッドが許すはずもなく、星夜が幼いうちに玉座から追いやろうとした。それを、星夜自らが許さず、彼は魔法実験を父と同様に行い始めた。


 十二歳の子供が魔法実験を使い、心の底から愉しんでいた。

 それは、どうみても異常な子供だ。


 シュミッドの息子だったテイは、それを黙ってみていられずに、星夜と戦うことを決意した。シュミッドも手助けしながら、二人は魔法と智略で、戦い、共に傷を負った。テイには愛する人がおり、星夜には誰もいなかった。

 それが、ふたりの運命を変え、星夜が第一世界に流れ去る原因にもなった。




 星夜は、荒野を歩いていた。隣には、とても美しいフィーブルタンがいた。フィーブルタンが第一世界を終わらせた後、星夜を伴うことにした理由は、分からない。

「何かしら?」

荒野は荒れ果てている。だが、フィーブルタンはその中で、美しく、また、幻想を抱かせた。

「いや・・・。何故、私を連れてきたのかと。」

しかし、星夜にはもう幻想はいらなかった。

「そうですね・・・。私は、まだ、国に戻れないのです。」

フィーブルタンは淡々と答えた。

「国は、第一世界と同じように、もうすぐ、滅びます。」

彼女は、言葉を選ぶ。

「私が戻れば、国は戻ります。滅ぶこともなく。」

彼女の言葉が、嵐を寄せるように、強く、風が吹く。

「でも、滅ぼすために私は国を出た。ならば、戻る理由は何かと考えるのです。」

彼女の迷いが荒らし、風は荒ぶる。

「私は、あの国を守りたい。そして、同時に、終わらせたい。」

彼女は、そこまで言うと、深呼吸した。嵐は止み、静かな荒野が続いた。

「ならば、お供します。私は、貴方の従順なしもべ。貴方のために、貴方に尽くします。」

星夜は深く、お辞儀した。

 二人が歩く荒野は、第十二世界。この世界には荒野と荒れ果てた草原だけがある。人間はおろか、生命が逃げていく大地だ。

 フィーブルタンがこの地にやってきたのは、理由があった。彼女の封じた世界を回収するためだ。そのために、彼女が会わなければならない人物。ノワ一族。彼らは呪いをゼノロワの王国全土に撒いた。

 フィーブルタンが呪いを受けたのは、ノワ一族がやってきた後からだいぶあとだった。産まれた直後にフィーブルタンは呪われ、それが、ずっと昔に来訪したノワ一族によるものだと気がついたときには、時が流れ、フィーブルタンも、自分がヲードになる前に気づきたかったと、何度も頭を抱えた。

 そして、ヲードとなったその瞬間、世界をゆっくりと終わらせることを決めた。

 ノワ一族がゼノロワを呪った理由が分からない。だから、会いに行こうと、決めた。呪いが完成する前に、ゼノロワの国を終わらせること。そして、ノワ一族と邂逅したい。


 彼らと会えるかどうかは、きっと運。そして、星夜を連れてきたのも、運。

「ねぇ、星々たちよ。私は、罪を問われました。その罪を償いたいのです。それに見合う対価も払います。どうか、天翔る、星々よ。私の罪を問うてください。この世界を『時』で制御し、『時』で守る星々よ。私は、貴方方に、何をしたのです?」

フィーブルタンは足を止め、大きな声で叫んだ。

 荒野では、響く音などない。ただ、どこかに吸い込まれていく。聲は誰にも届かない。



 静まりかえった大地に、しばし佇んでいたフィーブラタンと星夜。二人は沈黙し、誰かから返ってくる言葉を待った。誰かが返すことがあるのか、分からない。それでも、待った。


 吸い込まれた音が、嵐のように響いた。

『よく来ました、ゼノロワのヲード。貴方の問いに答えましょう!』

 風が強く強く吹きつけて、フィーブルタンと星夜を吹き飛ばそうとする。その先に見えないはずの階段が現れる。吹き飛ばされないように、フィーブルタンが、階段の手すりをなんとか掴んだ。星夜はあっけなく飛ばされそうだったが、フィーブルタンが彼の腕を掴み、手すりに辿り着かせた。

「・・・!!」

彼らが掴んだ手すりは、ふいに宙に浮き、そのまま上へ上へと登っていった。

 気がつけば、空高い天空の城へと辿り着いていた。見たことのない世界だ。闇の中に透明の通路が続く。暗い闇は宇宙だ。宇宙の中にいくつもの煌めきがある。星だ。見るものは、すべて遠くにある。

 二人は歩いた。こつこつ、と響く。ガラスの床に見えるが、材質は謎だ。フィーブルタンの周りに見える数え切れない星の先に、うっすら見える人影に気がつく。

「問いは!答えは!」

フィーブルタンは、震えながら叫んだ。この場所は、遙か昔に建造された『神々の創造物』によって造られている。そして、おそらく、いや間違いない。ノワ一族は、遠い遙か昔に滅んだ『幻像種』。幻像種は神よりも前にいた人間だ。こんな創造物を今も扱える人間は、いない。

 震えは止まらなかった。幻像種を怒らせた『ゼノロワの民』とは、一体?


「こんにちは。ゼノロワのヲードよ。」

人影は、ゆっくりと歩いてきた。白髪の髪は床まで長く、青白い肌。背の高さはあまり高くはないが、持っている気品が、それを補った。服は黒いワンピース。飾るものはないが、己の瞳の透き通るような青さが宝石のようだった。魔力がその瞳に宿る。

 年齢は何も言わなくてもわかる。幼い姿はカモフラージュだ。幻像種に年齢を問う意味はない。その姿を保つことで、神をも超越していた。

「・・・。お招きくださり、ありがとうございます。」

フィーブルタンは頭を下げた。

 この地に残されている幻像種は少ない。彼らもまた、命の限りを持っているから。産まれてから月日がどれだけ経っていたとしても、人間なのは変わらない。

 相手への敬意はあるをもち接するが、相手が何を求めるかで、その敬意も変わる。


「この地に来たのならば、この地が荒廃していたことに気づかれただろうか?」

 相手は、淡々と彼女に声をかけた。足下の宇宙より遙か彼方にある第十二世界。確かに、荒廃し、生命の翳りしかない。

「貴方と同じ、ヲードが去ったからです。」

相手はとても短く、説明した。

「それは・・・」

「貴方と同じ、この地の呪いを解けないと、悟った。私たちノワ一族は、ヲードに裏切られ、おいていかれ、この地の呪いを受け入れました。」

相手は、ただ、何事もなく、そう伝える。

「貴方へ、お答えします。この地の呪いも、貴方の世界の呪いも、同じ者が施し、今もまだ、その呪いを撒いている。」

フィーブルタンはただ、言葉を失った。

「第一世界が消滅した。あの世界には、貴方が気づかなかった存在が蠢いていた。星夜さん。貴方は気がつかなかったかしら?」

「・・・。私は何にも気がついておりません。ですが、あの世界には私がレナと出会う前に彼女が会話をしていた者がおりました。その存在があったから、私を受け入れているようでした。」

星夜は一人の男を思い出す。彼はすぐにいなくなった。レナが星夜を受け入れるようになったのもそのせいだ。

「男に出会ったのですね。ならば、その男は私どもノワ一族が追いかける男でしょう。彼は、リテイン・フォンを手に入れることに終始執念を燃やしている。星夜さんがリテインを手にしたいと強く思うようなったのも、彼が誘導したからだろう。」

相手は、大きく頷いた。

「その男の名は、神の名を騙る『アグリア・ゼルデン』。今も、呪いを撒きながら、世界中からリテインの力を奪うために行動しています。フィーブルタン。貴方は、早く、貴方の世界に戻り、呪いの治療を行うことを勧めます。呪いの治療薬は死海にいる『博士』が持っている。『死神』たちを今、呼び寄せるので、急ぎ戻るのです。アグリアは世界を少しずつ消滅させ、リテインの住む世界をあぶり出そうとしているのですから。」

 そう言われ、フィーブルタンは驚いた。ずっとノワ一族が問題を解決してくれると理解していた。昔からのお伽噺を、何故、信じ切っていたのか。

「貴方は、ノワ一族の生き残り、ですか?」

「えぇ。私は、トキノワ。ノワ一族が滅びる前に、貴方に真実を話したかった。ありがとう。来てくれて。私も、この世界も、もうすぐ終わってしまう。」


 黒いシルクハットとタキシード。ステッキを持った死神は数人、訪れる。

「トキノワ。我らが主から渡された物を持ってきたよ♪」

死神は、トキノワに声をかけた。

「それは、彼女に渡してください。私の命がもうつきかけていることは、知っていますから。」

「・・・。どうぞ、フィーブルタン。」

死神は、いつになく、悲しそうだった。彼らにも、もちろん感情があり、今回の仕事が、寂しさを物語っていた。

「フィーブルタン。私の代わりに、奴に、鉄槌を下して欲しい。私の寿命は貴方の寿命へ寄贈するわ。私の異能の使い道をこうして決めることが出来て、よかった。」

 トキノワがフィーブルタンの右手を握った。握った手は温かく、トキノワは彼女の意思通り、命を送った。それと同時に、彼女の知識も、フィーブルタンに渡された。



 トキノワの記憶は、家族と過ごした月日や、悪意の塊であるアグリア・ゼルデンが現れたことで、呪いを撒き散らされ、世界のヲードが逃げ出し、ノワ一族が次々と亡くなっていった。

 呪いを解決してもらうために、死海の博士に頼ってから、呪いの拡散を調べるうちに、ゼノロワの王国にも行き着いた。ノワ一族が接触する前からゼノロワの王国に呪いがあったのだ。ゼノロワの王妃ヒルワンとアグリアとの婚姻。王国でおきた本当の真実。


 記憶を得たフィーブルタンは、死神から受け取った呪いの解除薬と星夜という、新しい仲間と共に、滅びる第十二世界から逃れ、自らの世界に戻ることを誓った。




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