寄り道
運動不足を解消するために獣道を歩く事にした。そこからおこるものは?
健康診断で去年より、体重とBMIの値が増えてしまった。
会社が終わった夕暮れの中、帰宅するまでの道を歩く距離を増やしてみる事から始めることにした。
Googleマップで地図を見ると徒歩で20分かかるが、山道を通る道があり、距離も少ないので、そこを通る事に決めた。
その道通りに暫く歩くと周りは森に囲まれた。
少し、歩くと感知式の歩道の電灯が
カチカチ
と点灯し、道を照らす、暫く歩くと電灯が消えた。
ザワザワ
風が葉っぱを揺らす音がする。
不安になりながらも、歩くと通行人とすれ違った、
その人物はブツブツと何か言いながら、歩き去っていった。
暫く歩くと森に覆われて、道が見えなくなってしまった。電灯置いとけよと思いながら、携帯のライトを使って、先の道を照らして、歩みを進める。
暫く歩くとトンネルが見えた。
道が見え辛くて、引き帰そうか迷ったが今の道を戻るのも怖いので、通ることにした。
ジャリジャリ
道の砂を踏み締めながら、歩いて行くとトンネルが終わった。
トンネルを潜ると森は続いていたが、道が明るくなり、携帯を使わなくても道が見えるようになり、携帯をしまう。もうそろそろ20分経ったから、いつもの道に出るだろうと思っていたら、
ガサガサ
という音がして、
フゴー
という獣の声が聞こえた。
結構、近い。
20メートルか30メートルの距離に居る。
そう感じた僕は走り出した。
息が切れても、まだ終わらない。
普段より、長い距離を走っていた。
生命に危機を感じると普段よりも力が出る。
火事場の馬鹿力を体験したことに驚きつつも、命を守る為に走り続けると、普段、通い慣れている道に出た。車道を車が通過する。
安心して、携帯を見るとGoogleマップが森に入ってから、あれだけ走ったのにも関わらず、20分後の時間
を指していた。
僕は訝しんでいると、不意にすれ違った人のことを言葉が脳裏に浮かんだ。
来た道を引き返して、行きの時間よりも多い距離を歩いているが、まだつかねぇ。
暫く佇んでいると、血相を変えた、壮年の男性が走り寄ってきた。その人物は僕に大丈夫かと質問する。
僕は動物に追われたが、大丈夫だという旨を伝えると無線機を操作した。
「大丈夫だ!無事に出てきた!」
端的にそう伝えて、暫くすると、続々と人が集まってきた。
僕は何故この道を選んだのか、身体に異常がないか、質問を受けて答える。
異常がないと答えた。
不意に足元を見てみると、僕の靴に白いものが付着していた。それを拾い上げて、近くの人に渡すと皆は悲しげな顔をした。これを欲しいと言われたので、怪しく思いながらも、とても大事な物だと思ったので、譲ることにした。
僕を始めに見つけた男が、睨みつけながら、
「おい、2度とこの森に入るんじゃねぇぞ」
と言い捨て、帰れるか確認したので、僕はそこから、自分の足で帰る事にした。
森について、調べたら街を発展させる為に、工場を作る事が決まり、開発のため、森林を伐採して、道を作った。
そしたら、あの道が自然にできたらしい、そして、その道を通った人の何人かは行方不明になってる所だった。他の人も渡ろうか、迷って、考えたが通行するのに決めた時、迷う時間で結構な時間が経っているにも関わらず、20分しか経っていなかった。
そこから食事を調整しながら、ダイエットに励むことにして、一週間が過ぎた日曜の昼、家のインターホンがなった、出てみると歳を召された、白髪の小柄な女性が手に何かを待って立っていた。
その女性は悄然とした顔で
「あの森を通った人物を調べて、ここまで辿り着いた私をおかしいと思うのは無理もないと思います。」
僕は身の危険を感じ、すぐさま、ドアを閉めようとする。
「ですが、どうしても一言お礼を言いたくて、、、」
僕は十分な距離を取って、話を聞くことにした。
「私の息子はあの森に入って、行方不明になってたんです。監査カメラがあの子が森に入ったのを観ていました。そして、、、あれから、20年です。貴方が渡してくれた、歯から、、、」
息子を思う、女性を不憫に思った僕は手に持っていた物を見つめた。
それはあの森ですれ違った男の遺影だった。
「やっと気持ちの整理がつきました。」
そう言うと女性は去った行った。
僕はあの道の近くを彷徨いていると、僕を見つけた男に会った。
あの道には立ち入り禁止の標識が置かれていた。
「どうしたんですか?」
僕はそう尋ねると
「この道を通らないように、標識を置いてるところだ、まあ、何回もやってるんだけど、意味はないとは思うんだがな。あの時も君が通った日に、これは置いといたんだが、猪が倒してしまってな、そして、君が通ったから慌てて、この森に来たってことさ」
「先程、遺影をもった、老人が来ましたが、」
男はバツが悪い顔をした。
「あの人は、絶対に行かないことを条件に教えたのに、」
「別に気にしてませんよ」
「あの人の息子はそれはとても孝行な子でな、お母さんも随分とあの子を可愛がっていたんだ。それがこの森に行って、帰ってこなかった、随分と気を落とされててな、あの人を悪く思わないで、やってくれ」
そんな話をしている僕達の元に男が血相を変えてやってきた。
「あのお母さんが!」
男がそう言うと森から、火の粉が上がった。
「あの人は森を恨んでいたからな、消防隊に連絡だ!」
火は瞬く間に森全体に広がった。まるで、悲鳴をあげているようだった。
僕はあの老婆を森ですれ違った男が支えているのが見えた。二人は僕にお辞儀をしていた。
その背後に沢山の人物がお辞儀をしている。
僕はこの森で行方不明になっている人達だと直感した。
ありがとうございました
僕はその人達がそう言っているように聞こえた。
獣道を歩いた時に思いついたものを文章にしてみました。
夜の無人のトンネルは怖いですね。