第6話⬜剣の勝負
領主の屋敷ではお風呂を進めてもらったのでアメリア先生と一緒に入っている。
自分で言うのもなんだが、この体は 魔力を通さないとぷにぷにのくねくねだ。
体が柔らかいのはいいことだと思う。だけど筋肉なるものはほとんどない。
こんな体で剣術なんてどうにかなるのだろうか。
アメリア先生も俺の体をまじまじと見て、どうすんのよって顔している。
「なんで剣術なんか教えて欲しいの? ルーナには魔法があるじゃない。あんな魔獣が倒せるんだものもう剣術なんていらないんじゃない?」
「やってみたいの」
これから先、生き延びる手段として魔術だけでは足りない。剣術だって必要だ。前世でも魔術を使ってる間に切り込まれてはたまらなかったのである程度は習っていた。だから基本はわかるつもりだ。明日で自分のレベルもわかるだろう。
アメリア先生はいつも頭を洗ってくれるので大好きだ。自分で洗うと目が開けられないので大変だから。
「はーい、流すわよ〜」
「ううう、目が〜」
普通にお風呂に浸かると溺れてしまうのでアメリア先生の膝の上で抱っこしてもらっている。先生の胸は慎ましやかだがすらっとしていてとても綺麗だと思う。何で独身なんだろう?
「今なんか失礼なこと考えなかった?」
「いえ、じぇんじぇん」
いいお湯だった。これはやっぱりお風呂は早急に用意しなければならないな。
夜は特に何もしないでアメリア先生と一緒に床についた。
次の日の朝
朝食をいただいてからどんなマジックバックにするか要望を聞いて元になるバッグを頂いた。
中の容量はこのお屋敷ぐらいの大きさのものが入る程度に調節した。これだけ容量があれば食料でも物資でも運べるだろう。
セキュリティは特につけてないが竜人族の者なら使えるようにはしておいた。
これでこっちの約束は果たしたので 領主様にバッグを渡した。とても喜んでいたので良かった。
次はお待ちかねの剣術の時間だ。お屋敷の裏側に広場のようなところがあるので、そこで稽古をつけてもらうことにした。
さすがに剣術の修行なのでワンピースというわけにはいかないだろう。ショートパンツとTシャツのような格好になってみた。これでいいかな。
相手は領主様と二人の息子たちだ。領主様はこの国に5人しかいない剣聖と呼ばれる称号を持っているすごい剣士なんだそうだ。二人の息子さんは今絶賛修行中のようだ。
子供用の練習用の木刀を渡されたのでそれで素振りをしてみることにする。いかん、握りが太すぎてうまく持ってられない。
断って木刀を少し削らせてもらうことにした。よし、これでなんとか握れそうだ。
身体強化をして素振りをしてみる。やったことがあるだけのことはある。きちんと振れている。しばらくして、手合わせをしてもらう事にした。
最初は7歳ジェットくんとの手合わせだ。さすが剣聖の息子さんだ。しっかりした振りをしている。
「それでは2人ともいいかな。構えて始め!」
ジェット君がすごい勢いで上から打ち込んでくる。凄まじい連続攻撃だ。本当に実践的な剣術だ。相手を叩き切るような剣だ。
俺はあえてその剣を全部受けるようにしてみた。すごい衝撃だが身体強化をしているので難なく受けきることができた。
よし今度は攻撃してみよう。ジェット君の攻撃をかわして反対に打ち込んでみた。頭や腕にこちらの木刀がポクンポクンと当たっていく。大したダメージではないがこうもポコポコ当たると向こうも嫌になってくるのではないかな。しばらくして剣聖の止めの号令がかかった。がっくりとうなだれて帰っていくジェット君。
次は10歳のアクセル君との手合わせだ。アクセル君は所々にフェイントも入れてきて非常にうまく攻めてくる。だが3分も打ち合うとこちらの剣が当たるようになってきた。さっきとは違ってこちらも少し力が入ってくる。ビシビシと何回か当てていくと相手の方が膝をついた。そこでやめの合図がかかった。相手は呆然としている。痛そうなのでヒールをかけておいた。
「痛いのとんでけー」
「ああ、すまない」
「こんな相手もいるのだ。良い勉強になったな。もう一度修行し直しだ」
「「はい!」」
次は剣聖様に修行をつけてもらう。
「お願いしましゅ」
「うむ!参れ!」
最初から全力全開で打ち込んでいく。しかし剣聖様はびくともしない。さすがだ。でもこちらもこれくらいで諦めるわけにはいかない。フェイントを入れてみるが全く通用しない。
一体どこから攻めればいいんだ。だんだん相手が前に出てきて覆いかぶさるような迫力だ。
「ルーナさんもう10分ぐらい戦ってますよね?」
「剣聖様と互角に打ち合ってるぞ。何て幼児だ!」
もう相手の攻撃を避けたりするのはやめだ!相打ち覚悟で突っ込んでいくしかない。俺は捨て身の連続攻撃に出た。
「いやー!!」
「むう!」
一発仕掛けるごとに一発もらう。しかしひるまず突っ込み続けた。20回ぐらい仕掛けたところで5発もらったので膝をついてしまった。
「ま、参りましゅた」
「うむ。なかなかの攻撃だったぞ。どうだルーナうちの騎士団に入らんか?」
「いやでしゅ。痛いのとんでけー」
ついに剣聖様には1本も入れることができなかった。だが相手の木刀はボロボロになっていた。
「さばききれないとは俺もまだまだだな」
少なくとも俺より強い奴が、この国に5人はいるということだな。
「ルーナよ、黒竜村で私の父が剣術道場をやっている。そこで教えてもらえるように取りはかろう。父は剣帝の称号を持っているこの国最強の剣士だ。お前も気に入ると思うぞ」
「ありがとうございましゅ」
昼ご飯を頂いてから領主様の屋敷をあとにした。帰る前に黒竜市の中心街でお買い物をすることになった。
みんなへのお土産を買い、洋服を買いに行った。アメリア先生はギルマスから服を買ってもらえてご満悦そうだった。俺も自分のトレーニング用の服とよそ行きの服を1着づつ購入した。
今から帰ると到着は夜中になってしまうので危険を回避するために街で一泊することになった。そして帰ってきたのは次の日の夕方だった。