第2話⬜お肉が食べたい!
あれから1週間が過ぎた。この1週間で色々なことがわかってきた。
竜人族についてだが、見た目は特に人族と変わりがないように思う。中には鱗があったり角が生えてる人もいるそうだがここの施設にはそんな人は1人もいない。
後は今がいつなのかということだ。女神アステリアを崇めるこの世界には統一歴が存在する。今年はアステリオン歴770年だそうだ。俺が死んだのは740年だったはず。ということは、あれから30年しか経っていないということだ。
だからと言ってこの俺を騙して後ろから刺した奴らのことなど今更どうこうしようとも思わない。
他にも分かったのは気候についてだ。大体ここは帝国に住んでいた時と同じような気候だと思う。四季があって ちょうど前の日本ぐらいの暖かさだったと思う。こっちの方が緯度が北だと思っていたがあまり変わりはないようだ。
ここら辺は村だが建物は帝国の方が立派だったような気がする。あちらは 石造りの家もあったからな。こちらは木造の家がほとんどだ。高くても2階ぐらいかな。
それからこの施設については国が作っているのだそうだ。いられるのは15歳まで。15歳で成人だからそこからは自分で働いて生活していかなければならない。
11歳から14歳までの大きいお姉さんやお兄さんたちは普段は剣術を習いに行ってるのだそうだ。午前中に剣術を習い午後からは近所のお店や紹介された仕事をこなしているようだ。
仕事と言っても一人前ではないのでその半分ぐらいのお金がもらえるのが関の山である。
銅貨1枚がだいたい100円ぐらいとして1日働いても銅貨30枚、3000円ぐらいだ。半分は施設に入れて半分は自分のものにしていいそうだ。お兄さんお姉さんたちはこれをとても楽しみにしている。
それじゃあ10歳から下の子たちは何をしているかというと、午前中は簡単な読み書きと算数だ。午後は施設の掃除や畑の手伝いなどをしている。
それでこの1週間どうしても我慢できないことが一つだけある。それはお肉が全然出てこないということだ。代わりに出てくるのが豆だ。確かに栄養はあってお肉の代わりにもなるのだろうが、どうしてもお肉が食べたいのだ。
「アメリアせんせ」
アメリアは俺たち小さい子達を見る担当の先生だ。歳も25歳と一番若い。すらっとしていてとても優しい先生だ。
「なあにルーナちゃん」
「ルーナね!ルーナお肉が食べたい!まめあきた!」
「うっ、そりゃあお肉があればいいけどさ。買うと高いのよ。なかなか買えないわ」
「じゃあ山で取ってくれば」
「山は怖〜い魔獣がいっぱいいてとても入れないのよ。行ったら食べられちゃうわよ〜」
「じゃあルーナが取ってきたら食べられる?」
「あはははははは、そうね、そうしたら食べられるかなー」
よし行こう。しかし3歳の女の子が肉なんか取ってきたら目立ちまくりだな。それは困る。う〜ん、どうしよう。あっ、もう走ってる。しかも身体強化の魔法をかけて。
「お肉!お肉〜ルンルンルン、お肉!お肉ルンルンルン」
幼児が変な歌を歌いながら山道を時速20キロで疾走している。30分のほど走って山の近くまで来た。
どうもこの体には逆らえないところがあるようだ。来てしまった事はもうしょうがないので魔法の練習も兼ねて なるべくうまそうなやつを狩ろうと思う。
いたいた。あれはヒュージボアだな。体長3mくらいある。ここは体の損傷が少ないように頭を狙うとしよう。レーザービーム!
「ぴかりん!」
ヒュージボアは頭を貫かれて一発で絶命した。この魔法は炎魔法と光魔法を組み合わせて作ったものだ。前世ではよく使っていた。
これをマジックバックに入れて持っていく。バックと言っても今は袋しかないのだが。この袋の中に入れていく。これも前世で自分が作り上げた魔法の一つだ。近づければ大きなものでも入っていく。家一軒分くらいの広さは入る予定だ。中の時間は停止している。アーティファクト級の代物だ。
せっかく来たんだからもう少し狩って行くか。その後、ビッグラビット3頭?(ウサギなら”羽”)、ブラックスネーク5頭、キングボア1頭、マジックマッシュルームをたくさん取って帰ってきた。
行き帰り狩りの時間を含めて3時間ほどで帰ってこれた。さてどうやって報告したものかな。う〜ん。全然いい案が浮かばない。
「アメリアせんせ。肉取ってきたよ」
「あらルーナちゃん。何言ってんの? ギャー」
俺はいつの間にかマジックバックから魔物を取り出してアメリア先生の前に積み上げてしまった。
体が勝手に動いた、勝手に口が開いて喋ってしまった。そんな感じだ。
「アメリアせんせお肉焼いて!」
「こんなでっかいのどうやって解体するのよ。できるわけないでしょ。っていうかどうなってるのよ。もう頭が痛いわ」
「お肉〜お肉〜びえ〜ん。うわあああああん。びええ〜ん」
その後、来る先生来る先生みんな腰を抜かして、最後に院長先生も腰を抜かしてしまった。結局最後は冒険者ギルドの人が来て引き取って解体してくれることになったそうだ。
お肉にありつけたのは次の日の夕方になってからだった。