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第二話

第1章 出会い

眼前に広がるのは先が見えない暗い景色、いわゆる闇。

そこに1人の美少女が立っていた。

「あなたは◾️◾️◾️◾️◾️◾️。」

「えーと…ちょっとよく聞こえないです。すみません。」

「…。」

少し勇気を出して話しかけたにもかかわらず、美少女はこちらの言葉に反応しない。

「光と闇の間に存在し者。渦が現に現れし時、虚を戻す。そして◾️◾️◾️◾️◾️◾️。」

「ちょっとなにいってるかわかんないです。すみません。」

「…。」

「名前なんていうんですか?」

「…。」

「めっちゃ可愛いです」

「…。」

どうやら俺は美女からの怒涛の会話拒否反応を受けているようだ。ふっ、しかしこんなもんじゃ俺は折れないぜ。まだまだこれからぁぁ。俺は自分を鼓舞するように心の中でシンバルを叩く。

ピっ、ピピっ、ピピピッ、ピピピピっ、ピピピピっ

突然耳鳴りが聞こえてきた。ちっ、これから美少女とイチャイチャしようと思ってたのに。いや関係ない。こんなちっぽけなノイズ気にしてたまるか。

「すみませーん、ここどこかわかりますかぁぁ?」

「…。」

美少女の表情はピクリともしない。

ピピピピっ、ピピピピっ、ピピ

数秒、甲高い音が鳴った耳に鳴り響いた後、余韻を残すことなく暗闇から音が消えた。

「なんか変な音なりましたね。まぁ心配しないで大丈夫です。ぼくがいますから。可愛いですね。」

「…。」

相変わらず喋らないな。

「痛っっっっ」

そこで俺は本日『初めて』声を出した

急に顔をつねられたような謎の痛みに襲われ、目を開く。

目の前にいたのは…

「お兄ちゃん、朝だよー」

「……ちょっと痛かっt」

「何回目覚まし鳴ったと思ってんの?お、に、い、ちゃん?」

「はい。すみませんでした。朝から亜乃様の顔を見れて私佐久間実幸せであります」

「キモ」

「はいマジですみませんでした。」

そんなに言わなくてもいいじゃないか。お兄ちゃん悲しいよ?

「ノミ、早く動け」

そう言って部屋から出ていく妹を見ながら、なんともいえない悲しさと猛烈なほっぺたの痛みを我慢しながら続くように部屋から出て階段を降りる。

……俺、お兄ちゃんじゃなくてノミだったらしい。


ピーン、ポーン

朝の支度を急ピッチで終わらせた俺は右頬の痛みを気にしながら、インターホンへと駆け寄る。

カチッ

「あーい、もうちょい待って」

いつものように俺は少しの時間を要求する

「急げ、遅れる」

そしてあちらもいつものように急かしてくる。うむ、今日も平常に1日が回り始めた。

「もう1分だけでいい」

「いいや、あと15秒しか待たねえ。早くしろ(みのる)

「なあ(けい)よ、この話してる時間がもったいないと思わないか?」

「ぶっ飛ばされたいんか?俺もういくぞ?」

「ごめんごめん」

やっぱり慶と話すのは朝の脳覚ましにちょうどいいな。

おいていかれないように急いで結び途中のネクタイを締めてインターホンを切ろうとした瞬間に可愛らしい声が画面の中から漏れてきた。

「志乃ちゃんと亜乃ちゃんも急いでねと伝えてもらっても大丈夫ですか?実お兄さん」

どうやら妹の栞里(しおり)ちゃんも一緒のようだ。

俺は一度インターホンから離れて階段の方向を向き少し大きな声を出す。

「志乃ー、亜乃ー、支度終わったかー?」

「「もうちょっとー」」

「栞里ちゃんが『早くしろー早くしろー』って言ってるぞー」

「「すぐ行くー」」

そう聞いた俺はすぐにインターホンへと向き直る

「栞里ちゃんもう少しだけ待っててもらっててもいいか?」

「わかりました!実お兄さん!」

「おい、栞里、実には敬語使わなくていいっていっつも言ってるだろ?」

「何言ってんのお前、慶は俺が来るまでスクワットでもしとくといいんじゃないか?」

「なんで朝から汗かかないといけねーんだよ、お前も筋トレでもしてその腐り切った心を筋肉で浄化しろ」

「…お前、バカだったんだな、付き合い方を考えた方が良さそうだ」

「いいから早くし…」

  カチッ

慶が後一文字言い終える前に俺がインターホンを切ると同時に妹2人が階段を駆け降りてくる。

「ベルトわすれてるよ、ノミ」

「お兄ちゃん、じゃなかったノミさんおはよう」

俺は亜乃が投げたベルトを受け取りつつ、玄関へと足をすすめる。

「亜乃、朝は悪かった、そろそろ許してくれ、志乃、お前は間違ってないから言い直すな」

「じゃあ今日お風呂上がりに亜乃の耳掃除してね」

「志乃のもやって」

「はいはい、それはいいけどお前らそろそろ自分のこと名前で呼ぶのやめといたほうがいいぞ」

「別にいいでしょ、亜乃の勝手じゃん」

「右に同じ」

「いやもう少し他人の目を気にした方がいいぞという兄からのアドバイスはしっかり受け取っておいた方が得だぞ?」

「うっさいわノミ」

「黙ってろノミ」

「かあさーん、兄である私が妹2人にいじめられておりますー」

「亜乃と志乃もノミ、、じゃなかった実はすぐ萎えちゃうからいじめすぎてはだめよー」

「おかあさまぁぁ?」

「「はーい、行ってきまーす」」

「はーい、いってらっしゃーい」

「気持ちよく朝を迎えたかった今日この頃である。」

「実もいってらっしゃーい」

「…いってきます」

なんかいってらしゃいっていってきます以外の他の言葉を絶対に許さない謎の拘束力がある気がする。

ガチャッ

「はよいくぞー。遅れてたら真希ちゃんに半殺しにされるぞ」

「慶、お前は俺の家族みたいに冷たくなるなよ」

「お前次第だな」

慶はお金を求めるようなポーズをしている

「あれ、そこは無条件の愛を提供するのが親友の役目だぞ?」

「見返りを要求できるのも良き関係だと俺は思う」

「正論言い過ぎると人って腹痛と頭痛ひどくなるらしいぞ」

「じゃあ俺お前以外にはフツーだから問題ないな」

「なにそれ、問題しかないよ慶くん」

「いちいちうるさいやつはモテないぞ実くん」

よし決めた。こいつ一回殴って痛い目にあわせてやろう。

「実お兄さーん、お兄ちゃーん早くいくよー」

「「ごめーん、こいつが遅くてよー」」

うわ、ハモった。

「「お前だわ!!」」

2度目の綺麗にハモった声たちが夏の終わりをつげるような爽やかな金風と鳥たちの合唱とともに消えていく。

俺は慶と一瞬目を合わせたあと我慢できずに吹き出す。慶もそれに続くように笑い出す。鳥たちが羽をパタパタと動かして電線から飛び出していく。数秒声を出して笑い合ったあと

「いくぞ、実」

「おう、慶」

青空と涼風がとても心地よい朝を演出している。木々に休むことなく降り掛かっていた蝉の声は衰え、チリンチリンと今年も役目を全うした風鈴が耳をくすぐるような音を奏でている。

夏が終わり、秋が来る。

長い休みが終わり学校が始まる。

寂しくもあり、嬉しくもある。

季節の変わり目はやはり心地よい。

「あ、そういやお前の夏休みの宿題が俺の部屋にあったけどそれ置いてきちゃった」

…やっぱ三回は殴ったろ。


色々あってようやく学校に着いた佐久間家黒川家(さくまけくろかわけ)御一行はみんなで先生に怒られる、なんてことはなくなぜか俺と慶だけが校門で教師に捕まっていた。

「なんで2学期登校初日から遅れるんだ。気合いが足りん!」

「「すんません」」

校門に立ってる教師ってなんなんだろう。暇なんだろうか。暇なら暇で職員室で静かに待ってればいいのに。

「てかなんで俺と慶は怒られて志乃と亜乃と栞里ちゃんは校門素通りできたんですか?」

多分3人ともチャイムがなった後に校門についていたはずだ

「そーだーそーだー」

慶も俺に肯定する

「あの3人はお前らのせいで遅れた、お前らが遅かったせいで妹である私達も遅れてしまったと言ってたんだよ!!」

まあなんとなく想像はしてたけど栞里ちゃんもいたのにも関わらずそんなことを言っていたとは思っていなかった。いやまあ間違ったことはいってないんだろうけどね?

「先生は兄である僕達より妹である彼女達を信じるというのですか」

慶が悲しそうな声音で先生に訴える。

しかし先生は少しも動揺せず、

「男子より女子の方が真面目だ。」

そんなことを言ってきた。あからさまな差別やないかい。

「それは差別じゃないですか?」

よく言った慶。今日初めてお前を使えるやつだと感じたよ。

「何を言っている、どう考えてもお前らよりかは彼女達の方が真面目だ。」

こいつは人を見る目がないな。

確かに栞里ちゃんはいい子だ。天使と言っても過言ではないくらいに全てが整っている。控えめに言って完璧だ。しかし我が妹達はどうだろうか。百歩譲って顔はいいかもしれないが、性格がなってなさすぎる。特にお兄ちゃんに対しての態度が控えめに言って悪魔だ。今回に関しては栞里ちゃんは待ってくれた上に、急いで行こうとするそぶりまで見れた、だから栞里ちゃんは全然悪くない。それに比べて志乃と亜乃は待たせた上にのそのそ歩いていた。俺らと同罪だ。

「とりあえず、お前らは今学期全校生徒の内、第一号のペナルティだ。」

そう言いながら、ポケットからスマホを取り出し俺らに見えるようにしながら生徒名簿を開き、俺らの場所にチェックをつけた。

最悪だ。よりにもよってなんで初日から減点なんだよ。

「前学期と同様に減点が返却しきれない場合はそれ相応の罰があるから覚悟しとけよ」

このクソ教師は不敵な笑みを浮かべながらそういった。

この学校にはペナルティシステムというものがある。ルールごとに点数が決められていて、ルールを破ると減点が貯まっていきそれに応じていろいろな種類の罰を受けるというものだ。罰を受けるか受けないかは学期が終わるまでは任意だが学期の最後には必ず減点を全て返却しなければならない。もちろん罰を受けることで加点が与えられ、その分の減点を減らすことができる仕様だ。またさまざまなイベントで優秀な成績を収めたものは加点がもらえ減点を減らすことができる。また余分な加点は学期の最後に食堂やプール、学校のグラウンドなどで使える色々な優先権へと還元される。

ちなみに前学期最終ポイントは俺が減点18、慶が減点2くらいで終わった。

それで俺はめでたく宿題の量を倍に増やされ、なおかつ夏休み中、一週間に一回は学校の草むしりをしないといけないというクソみたいな罰を課され夏休みの半分を棒に振った。

「追加でつけられたくなかったら、早く教室へ向かうことだな。」

はっきり言おう。俺はお前が嫌いだ。嫌いな教師って結構いると思うが俺は群を抜いてお前のことが嫌いだ。

とまあそんなことを口に出せるわけもなく渋々下駄箱へと足をすすめる

「なあ実、これで真希ちゃん(まきせんせい)にも怒られたらどうする?」

「ご褒美だと思って割り切る。」

「きめえ」

「何言ってんだ、ポジティブ思考だろ」

「限界ドM思考だアホ」

二学期初日、非常に幸先が悪い。




「ただいまから、部活動等の表彰を行います。少しの間お待ちください。」

全校集会の司会を務めていた生徒がそういうと普通より広い体育館は瞬く間に会話で埋め尽くされていった。

「慶、実、お前らガチでギリギリだったな」

アナウンスがしゃべり終わったのとほぼ同時に海《うみ》が俺らに喋りかけてくる。

座る場所はクラスでまとまってればいいだけという比較的簡単なルールのこの全校集会はもちろん友達と一緒の場所に座ることも許される。

「まぁ校門で突っ立ってた教師には怒られたけどな」

俺と慶は校門で怒られた後、奇跡的に真希ちゃんと遭遇することなく、真希ちゃんよりも先に教室に入ることに成功したためにこうして朝の全校集会に何食わぬ顔で参加できている。

「でもなんで真希ちゃん今日の朝いなかったんだろうな」

「慶、そんなこと気にしてても仕方がないだろ。今は怒られなかった奇跡を祝福しようではないか、なあ海、(ほたる)

「俺はお前らが遅れて真希ちゃんに怒られる姿が見たかったけどな」

「海、思っててもそんなこと言っちゃいけません。そんなこと言う奴にはくすぐりの刑です。慶、海の体押さえてろ」

俺は海の真横にいた慶に指示をとばす

「ラジャー」

慶もノリノリでそれに答える

「おい、慶離せ、おい待て、ちょっと、やめ、やめてくれぇぇえ」

「海、そんな楽しそうに笑ってくれたら俺の手も止まりませんぞぉ、慶、海を離すなよ」

俺は自らのくすぐりの技術を存分に使う。

「ラジャー」

慶も海のことを離さないようがっちりホールドしている。

「おい、やめろ、やめてくださいぃぃ。わかった、わかったから、降参だから。」

「もう2度とあんなこと言わないか?」

俺は海の足をくすぐりながら質問する。

「いわない。言わないからその手をどけてくれぇぇぇ」

海は涙目になりながらも爆笑している。

「よし。いいだろう、慶、もう離して大丈夫だぞー」

「海、俺と実を敵に回しちゃダメだぞ?」

「身をもって痛感したよ」

海が笑い疲れたとばかりに俺の太ももに頭を寄りかからせてくる。

こいつ首元ガラ空きじゃねぇか。こりゃもう一回くすぐって欲しいみたいだな。

「おいお前ら、そろそろ始まるよ」

俺が海の首元に後もうちょっとで触れそうだったギリギリのタイミングで蛍が忠告してくれたため海はくすぐりを回避した。

「よかったな海、蛍のおかげで命拾いしたぞ」

「?お、おう?」

「海、お前は警戒心無さすぎ、少しは周りを見た方がいいよ」

「蛍、お前の目は節穴か?俺は常に周りに気を配って生きてるぞ?」

「まったく…まぁそういうアホっぽいところは海のいいところでもあるんだけどね」

「ふっ、蛍よ、褒めてもすね毛とかしかあげられねぇぜ?」

蛍は海の発言を華麗に無視しつつ今度は俺と慶の方へと言葉の方向を変える

「慶と実も海をからかうのは程々にしときなよー」

「からかってない。戯れてるだけさ、な、慶」

「そうだぞ。俺らは海と遊んでやってるだけだ蛍」

「まぁ確かにアホはアホ同士で遊んでた方が楽しいかもね」

「よーし蛍、お前も俺と慶のくすぐり拷問を受けるか?」

「実、俺は準備万端だ」

慶と俺はすぐに臨戦態勢へ入る。

「遠慮しときます」

蛍が手をバツにして全力で拒否する

「ただいまより勉学、部活動、その他において優秀な成績を収めたものに対する表彰を行います。司会進行は生徒会長の私が務めさせていただきます」

生徒会長がそう喋ると同時に全校生徒が静まり返る。それは俺らも同じだ。

こういうところはこの学校がほかの学校に誇れるのいいところだと勝手に思っている。

「それでは早速勉学の部から発表したいと思います。」

体育館がもう一段階静寂に包まれる。

「ご存知の通り勉学の部は前学期最後に行った全校一斉テストでトップの成績を収められたものが表彰されます。範囲については小学校から中学一年生の一学期までで中1、中2、中3の平等性を重んじた範囲とさせていただいております。また勉学の部はトップのみに加点3が与えられます。説明は以上です。それでは発表します。」

体育館がドラムロールの音だけに包まれる。

海は手を合わせ目を瞑っている。ワンチャンあるとか思ってそうで面白い。

慶はとっくに諦めているのか拍手の準備だけしている。

蛍は自分が呼ばれることを信じて疑っていない様子だ。

だが残念だったな。蛍、今回は俺の方が自信がある!!!

「今回、一位だったのは…三年A組の佐久間実さん!!」

「はいっっっ!!!」

俺は返事と同時に立ち上がる。声が裏返ったのも気にならないくらいに嬉しい。これで今日遅刻の分のポイントはチャラだぜ!!あぁ視線が俺に集まっている!!!

「は惜しくも2位で敗れ…1位は倉内蛍さんです!!」

…………は?


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