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「ふーっ、疲れたよ、イスカ」
「はいはい、よく頑張りましたね」
イスカの胸元に飛び込むと、彼女は頭をなでてくれる。
なんということでしょう。
みるみる疲れが取れていきます。
この世で一番効く精神安定剤に違いない。
さっきの謁見で相当、精神が削られたから、これは絶対に必要なことだ。絶対に。
ここから先も、緊張の連続だ。癒してもらわねばなるまい。
うん、絶対に必要なことだ。異論は認めない。
「どうですか?気分は落ち着きましたか?」
「ありがとう。もう少しこのままで」
彼女の柔らかさを堪能する。
「大丈夫でしたか?うまくいったんですか?」
「まあ、そこそこ、かな。今のところ順調ではあるよ」
顔を上げると、イスカが色白の肌を赤らめていた。
恥ずかしかったらしい。
「イスカも俺の胸に飛び込んできていいよ。
それでおあいこね」
両手を広げて見せる。
「な、なにを言ってるんですか。からかわないでください」
ちょっとテンパってて、かわいいな。
半分、冗談なのに。半分は本気だけど。
「私は大丈夫ですよ。頑張ってくださいね」
「何でもするから、何でも言ってね」
よくよく見ると、掃除道具がある。
俺の部屋を掃除していたらしい。
「ごめん。邪魔しちゃったみたいだね。
今度は、騎士団長の所に行ってくるから、次に会うのは夕食の前かな」
部屋を出て、練兵場に向かった。