5
「イスカ。
今まで、本当に申し訳なかった」
絶対に迷惑ばかりかけていたに違いない。
俺は、最上級の謝罪表現として、土下座を選び、実行した。
「や、やめてください。
王子を土下座させたなんて知られたら、私の首が飛んじゃいます」
「許してくれるか?」
「何をですか?」
とぼけるくらいに俺に対して、恨みを持っているのか。
「俺の今までの行いを許してくれ。
虫が良いのは、分かっている。
でも、一生かけて償うから、どうか、どうか見捨てないでくれ」
イスカはどうしたらいいか分からず、あたふたしている。
「まったく気にしていないと言ったら、嘘になりますが、大丈夫ですよ。
レイ様の事情も聞き及んでいます」
「私は常にレイ様の味方で居続けますから、頭をどうか上げてください」
レイは幼少期から、親に構ってもらえる機会がなく、構ってもらおうと、わがままをいうようになった。
それが災いして、権力を使って、わがままを言うという悪癖が染みついてしまったのだ。
そういった事情を彼女は知っていた。
「イスカは、心まで美しい。まるで、優しさと慈しみの化身だよ」
俺は、涙が出てきた。
すると、彼女は、俺の様子を見て、優しく俺を抱き留めた。
せ、聖女だ。
彼女が光り輝いて見えた。
明日も同じ時間に投稿します。