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「イスカって、フルネームは?」
「イスカ・ホーエンシュタウフェンです」
「イスカの役職は?」
「レイ様専属のメイドです」
「俺は、ノイエ王国の王子で、王位継承権第一位のレイ・ノイエか?」
「そうですよ」
「今年は何年?」
「王国歴1234年です」
「どうしたんですか
レイ様、本当に大丈夫ですか?」
俺がうつむいていると、イスカは上目遣いでのぞき込んできた。
か、かわいい、凄まじい破壊力だ。
いや、それどころじゃない。
これだけ時間がたっても夢から覚めるわけでもない以上、俺は認めなければいけないらしい。
俺は、『レミア大陸物語』、通称『物語』の世界に転生してしまったということを。
どんなゲームのストーリーでも、主人公には、敵が必要だ。
敵がいなければ、盛り上がりに欠けるからだ。
『物語』における盛り上げ役がレイ・ノイエだった。
レイは、主人公であるロトの行く手を邪魔する敵キャラだ。
しかし、ロトに打ち負かされ続け、最終的には、その高慢な性格が災いして、死ぬ。
しかも、たくさんの分岐がある『物語』において、必ず死ぬ。
それだけじゃない。
ただ死ぬだけならまだしも、レイは必ず、ロトに味方を寝取られてから死ぬのだ。
ネット上で着いたあだ名が「寝取られ王子」。
少々かわいそうに見えるが、ゲーム内ではざまあ展開として、かなり楽しまれていた。
俺は、何としてもその展開を阻止しなければならない。
そして、目の前にいるイスカ。
彼女も寝取られうる、レイの味方のうちの一人だ。
レイから心無い仕打ちを受け続けたせいで、心優しき彼女もレイに愛想を尽かせ、主人公のロトに惹かれた。
その結果、レイは寝取られることになる。
とりあえず、10話までは毎日18時に投稿するつもりです。
書きだめがそこそこあるんで。
その後は、どうするかは未定です。