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ペネロペの真骨頂は、単なる剣術の腕ではない。
まだこの段階では、未成熟ではあるが、魔術と剣術との混合が、彼女の持ち味だ。
彼女は、通称、「氷剣」と呼ばれる、魔術により生成した氷でできた剣を用いる。
剣で相手を翻弄しつつ、それに関連した派生魔術を交えながら、相手を追い詰めるのだ。
ペネロペは氷剣を呼び出すための詠唱を始めた。
「氷の鼓動、凍てつく大地により鍛えられし我が剣、
これすなわち、黙示録に語られし獣を打ち取らんとするものなり。
粛然、衆俗の目より隠匿さる・・・」
「ロト、今だ、炎属性第三階梯で焼き尽くせ」
ロトに向かって叫ぶと、彼はハッとして、ただちにファイアストームを詠唱し、ペネロペに対して放つ。
炎の竜巻が彼女の身を襲った。
果たせるかな、詠唱で大きな隙が出来ていた彼女は避けきれず、それをもろに食らってしまう。
フ、フ、フ、フハハハハハ、俺は悪役のような笑いがこぼれる。
誰がそんな長ったらしい詠唱なぞ、待ってやるものか。
ゲームでは、詠唱のムービーが入るせいで、長々と待たされたことを、俺は未だに根に持っているのだ。
だって、こっちが攻撃できないのに、あちらさんは、めっちゃパワーアップするんだぞ。
第二段階のペネロペに、俺がどれだけ苦しめられたことか。
あいつ、マジで強かったんだから。
何回もやりなおしたんだぞ。俺がゲーム下手なせいかもしれんが。
「おいおい、あれ、大丈夫かよ」
クラスメイト達は、ファイアストームをまともに食らった彼女の身を心配しているようだが、ペネロペは大丈夫だ。
彼女の鎧は特別製だ。死にやしない。
実際、彼女を見れば、鎧のあちこちが焦げ付いているが、命に別状はないし、五体満足である。
しかし、彼女の気分は最悪のようだ。
ペネロペは、俺のこと涙目でにらみつけると、スタスタと早歩きで、闘技場から出て行った。
一方、ロトもロトで、俺の方をにらみつけている。
いや、何で、お前は俺のこと、睨んでんだよ。
俺はお前のこと、助けてやっただろうが。
試合に夢中になっていた俺は、ここで我に返った。
周りを見渡せば、クラスメイト達は、俺を奇妙な目で見ている。
あ、俺、こんなキャラじゃなかったわ。




