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王子のベッドにふさわしく、レイのベッドはかなり大きい。
二人がゆうに並んで寝れるくらいには。
実際、今も、二人がゆうに並んで寝そべっている。
「疲れたよ、イスカ」
「そうですか、頑張りましたね」
慣れた様子で、手を広げて、迎え入れてくれる。
何で、女の子ってこんなに柔らかいんだろう?
いや、イスカ以外の女の子を知らないから、イスカだけが柔らかいのかもしれない。
そんなことはどうでもいい。
今は、彼女に抱きしめられているという事実こそが大事なのだ。
彼女の抱擁は万病に効くに違いない。
彼女の顔を見ると、ベッドサイドのランプに照らされて、耳がかなり赤くなっているのが見える。
恥ずかしがりやなのに、我慢してるのが余計にかわいらしい。
「イスカって、何で、メイドしてるの?
嫁の貰い手なんて、腐るほどあっただろうに」
「親の勧めですね」
「親に無理矢理やらされてるってこと?」
「そういうことではないですよ。
私も納得しています。
中年貴族と政略結婚するよりかは、宮廷で寵愛を受けた方がいいですからね」
貴族に婚姻の自由なんて全然ないんだな。
なるほど、宮廷に入らずに、貴族として普通に生活すると、政略結婚で、中年のおっさんと結婚する可能性がある。それよりかは、宮廷に入って、王子の寵愛を受けた方が良いっていう親心もあったのか。
貴族に生まれるっていうのも楽じゃないんだな。
しかし、それよりも重要なことがある。
手を出されることを覚悟のうえで、来てるということだ。
だから、俺の行動にも寛容だったわけだ。
だからといって、手を出すほど、自分に自信があるわけでもない。
こちとら、何年も伊達に童貞やっとらんわ。
「大丈夫ですよ。私がいますから」
イスカは俺の手を包み込むようにして握った。
そこで、ようやく、俺は自分の手が震えていることに気が付いた。
俺、この世界に来てから、心細かったのか。
不安だったんだ。
訳も分からず、住み慣れた世界から別世界へと放り出されて、生きていく自信がなかった。
自分のこれからの運命に抗う覚悟が出来ていなかったのだ。
「イスカが居てくれて良かったよ。
そうじゃなかったら、俺、死んでたかも」
「冗談でもそんなこと言っちゃだめですよ。
でも、ありがとうございます。そういってもらえて嬉しいです」
冗談でもなんでもない。
最初に出会ったのが彼女でなければ、十中八九、俺は耐えきれていなかったと思う。
俺は彼女に救われたのだ。
この瞬間、はっきりと分かった。




