表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/49

決戦、風の里①

「大刃、戻ったぞ。今の状況は、どうなっているんだ?!」


 神一郎が、下から叫んだ。


「おお、神一郎帰って来たか! 敵が多すぎて限界だ、直ぐに上に来てくれ!」


「承知!」


 神一郎は、土龍の頭の上に居る大刃の横に飛び上がった。周りを見ると、そこは自分の家の庭だったが、建物は無残に崩れ去っていた。

 下には、ライオン、虎、オオカミ、イノシシなどの巨大化した魔獣達がひしめき合っていて、土龍の土の身体は今にも食い破られそうだった。


「彼らは、夜にならないと魔獣化しないはずでは?」


 神一郎が、訝しげに魔獣たちを見つめる。


「俺も昼間は来ないと聞いていたから、あいつらが現れた時は流石に泡を食ったぞ」


「眠っている私達を一刻も早く殺すために、信長が、魔獣を常態化させたに違いない」


「信長って奴は、何でも出来るんだな」


「うむ、奴の魔力は底が知れん」


 神一郎と大刃が、眼下の魔獣を見ながら話していた、その時だった。


「ガルルルーッ!!」


 一頭の虎の魔獣が、彼らの後ろに迫り、飛び掛かかろうとしていたのだ。


「い、いつの間に?!」


 神一郎と大刃は、咄嗟に土龍の頭を蹴って飛び上がったが、それを追うように飛び掛かった虎の魔獣の跳躍力が勝り、鋭い牙が神一郎の足に迫った。

 次の瞬間、神一郎は、身体をクルリと後方回転させたかと思うと、その勢いのままに、右足で虎の魔獣の鼻っ柱をしたたか蹴った。

 悲鳴を上げた魔獣は、足をバタつかせながら、地上でひしめく仲間たちの上に落ちていった。


「ふー、危なかった……」


 神一郎が、額の汗を拳で拭う。


「神一郎、ここは現実世界だ。食われたら終わりだぞ!」


 上がって来たライカが神一郎を睨んだ。


「すみません、油断しました」


 苦笑いした神一郎が、頭を掻いた。


「先ずは、魔獣達を片付けよう。二人で彼らを遠ざけてくれ」


「承知!」


 神一郎は、土龍の頭の上から風破を連射して、彼の真下に居る魔獣達を土龍から下がらせた。その空いた地面に下り立った神一郎は、風牙を使って魔獣達を斬り払っていった。


「大刃、そっちは任せたぞ!」


「おお!」


 大刃は、土龍の首だけを動かし、土の槍を吐き出して、後方の魔獣を倒していった。


「神一郎さがれ!」


 二人が粗方魔獣達を遠ざけたのを見計らって、空からライカの声が響いた。


 神一郎が土龍に戻った瞬間、ライカが放った巨大な雷は、途中で幾つもに枝分かれすると、その一つ一つが狙ったように魔獣達を捉え、倒していったのだ。

 ほどなく、近辺の魔獣達をせん滅して、ライカが空から下りて来た。


 大刃が土龍の蜷局とぐろを解いて土に戻すと、真麟を抱いた氷馬が姿を現し、その足元には炎龍斎の亡骸があった。


 空を見上げると、日は西に傾き始めていた。


「夜になれば、千人の魔人化した兵士達がやって来て、本格的な戦いが始まる。その前に真麟と炎龍斎様を安全な場所に移そう。大刃、皆は何処に居るのだ?」


 ライカが、周りを警戒しながら聞いた。


「年寄りと子供達は龍牙洞に隠れているんだ。そこへ行こう」


 ライカを先頭に、大刃と神一郎は炎龍斎の亡骸を担ぎ、氷馬は、疲れ切って眠っている真麟を抱いて、龍牙洞へと向かった。



 龍牙洞の前まで来ると、入り口は土砂で塞がれていた。大刃の土の技で、人の通れるほどの穴を開けて中に入ると、そこには、七十人ほどの老人や子供達が身を寄せ合っていた。


「ライカ様!」


 龍牙洞に隠れていた人達が、ライカの姿を見て集まって来た。


「無事、真麟を連れ帰って来ました。もう大丈夫ですよ」


 ライカが、不安そうな顔の老人達の手を取って、優しく声を掛けた。


  そうしている内、入り口付近が騒がしくなって、白龍斎、神龍斎、黄龍斎、幻龍斎達が戦いから帰って来た。


「お父様、只今戻りました」


 ライカが前に進み出ると、白龍斎は、彼女の両手をぎゅっと握った。


「ライカ、無事帰って来てくれたのじゃな、良かった。

 里の魔獣達は、粗方追い払うことが出来た。今夜の決戦に備えて、一旦戻って来たところだ」


「お父様、炎龍斎様が亡くなられました……。真麟を助ける為に、我が身を犠牲にしたのです」


 ライカが、岩の上に横たわる炎龍斎の亡骸に視線を移した。


「そうか、最後は親として、火王家の頭領として、死んだのだな。天晴じゃ。戦いが終わったら、皆で懇ろに弔ってやろう」


 白龍斎達が、炎龍斎の亡骸に手を合わせた。 


「父上――ッ!」


「あなた!」


 何時の間に目を覚ましたのか、真麟が母の紅と共に、炎龍斎の骸にすがって泣きじゃくった。


「氷馬、埋葬してやれるのは何時になるか分からぬ。とりあえず炎龍斎を凍らせてくれんか」


 白龍斎に言われた氷馬は、真麟と紅を宥めて下がらせ、寝台のような岩の上に寝かせた炎龍斎を、綺麗に凍らせた。透き通った氷の中の炎龍斎の顔は満足げだった。泣き崩れる真麟に、氷馬が寄り添った。 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ