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氷馬覚醒②

 暫くして火炎が収まると、体中から白い煙を出しながら荒い息を吐いている天神の姿があった。


「少しは手加減せぬか。こっち迄危うかったわ!」


 焦げた匂いが充満する、噴火口の岩の間から姿を現したのは、信長だった。天神が跪き大きな身体を曲げて信長に頭を垂れた。ライカ達の姿は何処にも見えない。


「天神よ、あ奴らはまだ生きておるぞ。小童ども、隠れていないで出て来い!」


 信長が叫ぶと、ライカ達が瓦礫の中から姿を現した。彼らは、氷や土の壁を作って、辛うじて火炎から身を護っていたのだ。その身体からは、湯気のような白い煙が上がっていた。


 天神が怒りの目で立ち上がり、再び大地に足を踏ん張って、“大魔炎”の態勢に入ると、信長の姿はフッと消えた。


「させるか!」


 氷馬が目を閉じ、両手を胸の前で合わせて、一心に念じながらその手を開いていくと、そこに、青い光の玉が徐々に膨らんでいった。そして、五寸ほどの玉になると、今まさに“大魔炎”を撃とうとしていた、天神目掛けて撃ち込んだ。


「行けーッ!!」


 青い光の玉が、天神の赤く染まった高温の身体に炸裂した。青い玉は、冷気を凝縮した冷凍弾だったのだ。冷気と高温がぶつかり、爆発的な蒸気が天神の身体から噴出した。


 更に、その冷気の勢いは止まらず、天神の溶鉱炉のように燃え滾った身体を覆いつくし、終には、真っ白に凍らせてしまったのである。


「氷馬、凄いな!」


 後方で見ていた神一郎が目を見張った。


 口を開けたまま、完全に凍りついて動かなくなった天神を(勝ったのか?)と、氷馬は半信半疑で見つめた。


 だが、勝負はまだついていなかった。氷の奥の天神の身体が、再び赤みを帯びて来ると、氷が解け始めたのである。

 更に温度が上がると、天神を覆っていた氷の塊は、ドン!! と木っ端微塵に吹き飛んだ。


 天神が、大きな息を吐いて呼吸を整えた次の瞬間、彼の身体全体から、炎が勢いよく噴き出して火達磨となった。その炎は急激に燃え上がり、膨張していった。


「これでは、こちらの身も危ういぞ!」


 火に精通した炎龍斎が叫んだ。


 ライカと神一郎は、水や氷の技で壁を作ったが、直ぐに蒸発してしまった。その間も、天神の身体は、赤から白色へと変わり、まるで太陽のように輝きだしたのだ。彼らは、目がくらんで直視できなかった。

 数千度という超高温が、彼らの衣服を焦がし、肌を焼いた。


「一旦外へ出よう!」


 神一郎が促し、四人が飛び上がろうとすると、噴火口の上部から、百龍雷破のような凄まじい雷が降り注ぎ、外への道も閉ざされてしまった。信長の仕業である。

 地中に潜ろうにも、天神の放つ超高温は岩盤をも溶かし、溶岩となって逆巻き始めていた。


「くう、これまでか……」


 炎龍斎が、唸る。


「心を集中して、我が身を再生するんだ!」


 ライカの指示に従い、彼らは一心に身体の再生を念じた。焼けては再生し、再生しては焼け焦げる。それは、激しい痛みも伴った。


 そんな繰り返しの最中、


「一か八か試したい技がある!」


 氷馬が、必死の形相で神一郎に言った。


「だが、この技は少し時間がかかる。その間、私を護れるか?」


「任せろ! だがそう時間は無い。早めに頼む!」


 神一郎はライカと共に、天神の超高温の被害が比較的少ない、天井部分の岩盤を土の技で掘り進み、氷馬と炎龍斎を避難させることにした。


 我が身の再生を念じながら、他の技を使うのは至難の業であるが、ライカと神一郎にはそれが出来た。

 二人を洞窟の中に避難させたライカ達は、交互に、冷気弾を洞窟の入り口付近に撃ち込んで、冷却作業を間断なく続けた。


 氷馬は、精神を集中して両手に気を込める。重ねた両手の間から漏れ出て来たのは、見た事もない紫色の光だった。その光が膨らみ、重厚な紫の玉となって輝きだした。


「ライカ様、何時でも撃てます!」


 氷馬の声を聴いて、ライカと神一郎は頷くと、冷気弾を放ちながら、氷馬と共に洞窟の入り口を目指した。


「氷馬、あの光源を叩け!!」


 ライカが叫び、洞窟の中から飛び出した氷馬は、一気に紫の光の玉を天神目掛けて撃ち込んだ。


 超高温の炎の世界が、紫色に染まった、その途端、


 ズドドドドド――――――ン!!!!!!!


 超冷気と超高温が激突して、凄まじい水蒸気爆発が起きた。溶岩は吹き上がり、巨大な噴火口は、山頂もろとも吹き飛んだ。


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