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魔王降臨

 魔獣達の姿が消え去ると、荒れ狂っていた雷鳴と稲妻は止み、魔界に静けさが戻った。だが、神一郎の耳には雷鳴が鳴り続け、目には稲妻の残像が焼きついて、暫く動くことが出来なかった。


「ライカ様、百龍雷破の凄まじさに度肝を抜かれました。当に最強の技ですね、素晴らしい!」


 やっとの事で、五感を取り戻した神一郎が、興奮気味にライカを称えた。


「うむ!」


 ライカも満足げに頷く。


「ライカ様、あの魔城は私にお任せください!」


 神一郎は、まだ未完成ではあったが、奥義“龍の風”で、後方に林立する黒い魔城を叩かんと、大地を蹴った。


 胸の前で手を組み印を結んだ神一郎は、雲を集め、大竜巻を発生させると、それを空中から操って、黒い魔城に突っ込ませた。


 凄まじい暴風の渦の中に巻き上げられた無数の岩石が、容赦なく城壁に激突すると、堅牢に見えた魔城の塔も、轟音と共に次々と崩壊していった。

 やがて、全てを破壊しつくした大竜巻は姿を消し、後には瓦礫だけが残った。


「出来た!」


 初めて、最大級の“龍の風”を完璧に操ることが出来た神一郎は歓喜した。心の世界での必死の戦いが、彼自身の実力を急速に進化させていたのである。


「神一郎、見事だ。これで、お互いの奥義は完成だな」


 上空から下りて来たライカが、神一郎の肩を叩いた。


「しかし、ここは心の世界です。現実世界でも同じように操れるでしょうか?」


「技を操るのは心だ。そういう意味では、心と現実の世界は大した違いは無いはずだ。私達の技は、現実世界でも同じ威力を発揮するだろう」


「ならば、奥義が完成した今、魔王を倒す必要など、もう無いのでは?」


 神一郎の言葉が終わらぬ内に、ライカが語気を強めて言った。


「それは違う! 魔王を倒し、阿摩羅の世界を体感してこそ、本当の自信となり、真の力を得る事が出来るんだ。このまま尻尾を巻いて逃げるような弱い心では、信長を倒すことなど出来ぬ!」


「申し訳ありません。つい弱音を吐いてしまいました……」


 神一郎は、自分の弱さを恥じた。


「魔王を探そう。奴は近くに居るはずだ!」


「はっ!」


 神一郎とライカが、崩れた城の上空を飛びながら、魔王の行方を捜していた、その時である。


 崩れた城の瓦礫の中に開いた大穴から、羽の幅が三丈【約九メートル】はあろうかという巨大な蝙蝠の大軍が、羽音を轟かせて舞い上がったのだ。それは、人面の蝙蝠で、その中の一番大きな蝙蝠は信長の顔だった。


「魔王、それが、お前の本当の姿なのか!」


 ライカが叫び、神一郎と共に魔王の前に躍り出た。


『貴様ら、我が分身達をよくも殺してくれたな!』


 怒りの為か、魔王の目は赤く変色し、口は頬まで裂けていた。


 魔王が蝙蝠達に目配せをして後方に下がると、空を埋め尽くした蝙蝠の大軍が、一斉に神一郎達に襲い掛かった。彼らは吸血鬼である、噛まれただけでも命は無い。


 神一郎は刀を抜きさり、果敢に蝙蝠の大軍に斬り込んでいった。彼の風牙の一撃が空に弧を描くと、数百匹の蝙蝠が瞬時に切り裂かれた。


 更にライカも、無数の稲妻を吸血蝙蝠達に炸裂させて砕き、燃やした。蝙蝠達は、ライカ達に噛み付く間もなく、次々と地上に落ちていった。


『分身ども、我に戻れ!!』


 不甲斐ない戦いに激怒した魔王に呼び集められた蝙蝠達は、彼の身体に突進したかと思うと、次々と折り重なって同化していった。


 そして、全ての蝙蝠を取り込んだ魔王の身体は膨らみ、変化して、天を突く巨大な魔獣へと変貌していったのだ。


 肉食恐竜を思わせる身体、頭には、二本の反り返った猛牛の角が生えて、手には鷲のように鋭い爪が光る。そして、広げれば空を覆い隠すほどの蝙蝠の羽。


 その異様な姿は、魔界の王の風格があった。


「何という大きさなんだ……」


 神一郎が唸った。地上に立った魔王の顔が、空に居る彼らの上にあったからだ。


『我が力、篤と味わうがいい!』


 魔王が、いきなり、巨大な羽を広げて高速振動させたかと思うと、凄まじい衝撃波が神一郎達を襲った。


「?!」


 天が落ちて来たような感覚で叩き落された彼らが、何が起きたのかを悟った時には、大地は目の前に迫っていた。


「ウウッ!」


 ライカが、咄嗟に地面の土を液状化させて衝撃を和らげたが、大地に叩きつけられた身体は激しく痛み、暫く息が出来なかった。



 動けるようになった神一郎が、隣に埋まっているライカを掘り起こす。


「ライカ様、お怪我は!」


「大丈夫だ。しかし、何という凄まじさだ。流石に魔王と言うだけの事はある」


「全くです。……あいつに百龍雷破が通用するでしょうか?」


「分からぬ。だが、やってみるまでだ!」


 ライカは力を込めて言った。



 そうしている間にも、魔王は大地を震わせながら近付いて来て、二人の前で立ち止まり、赤い不気味な目を向けた。


 神一郎が、次はどんな攻撃を仕掛けて来るのかと身を固くしていた時、魔王の腹部が仄かに茜色に染まり出した。その光は徐々に喉へと移動してゆき、口の周りから無数の火の粉が漏れ出た刹那、

 大きく開かれた魔王の口から猛烈な炎が吐き出され、魔界は一面の炎で埋め尽くされたのである。


「危ない!」


 神一郎がライカの身体を抱きしめた瞬間、二人の身体は地中深く潜っていった。神一郎が初めて土の技を使って、火炎から彼女を護ったのだ。


「神一郎、見事な土の技だ」


「ふう、しかし間一髪でした」


 暗い地中で抱き合ったままの二人は、着物が焦げ臭い事に気付いた。


「神一郎、これから地上に出て百龍雷破を試してみる。準備が整うまで、魔王を引き付けてくれないか」


 神一郎の頬をくすぐるライカの熱い息が、彼の胸を熱くした。


「承知!」


 ライカが地面を裂いて出口を作ると、神一郎は一気に空に舞い上がって、魔王と対峙した。魔王の吐いた火炎の余韻で、空気は途轍もなく熱かった。


「受けよ、風牙!!」


 神一郎は、自分が決めて見せると、渾身の風牙を魔王目掛けて打ち込んだ。


「どうだ!?」


 魔王の身体が真半分に裂けたのを見て、小躍りした神一郎だったが、次の瞬間、切り裂かれた魔王の身体は、瞬時に元通りに再生されていったのである。


「……」


『小童! そんなもので、儂を倒せるとでも思っていたか!』


 魔王の赤い目が、神一郎を睨み据える。


 その時、雷撃の態勢に入ったライカが、上空から叫んだ。


「神一郎、退避しろ!」


「はっ!……」


 神一郎は、一抹の不安を覚えながらも、その場から離れた。


 次の瞬間、強烈な雷鳴と共に、無数の稲妻が魔王の身体に纏わりつき、魔界を真っ白に照らし出した。ライカの百龍雷破が炸裂したのだ。


 一瞬、魔王の赤い目が色を失ったかに見えたが、彼は、大きな羽で身体を包み、防御の体勢をとった。



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