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望まぬ戦②

 火炎弾の攻撃が止んだ隙に二人が穴から這い出ると、八体の火炎龍が、相変わらず凄まじい火炎を燃え上がらせながら、こちらを窺っていた。


「氷馬、水龍を作れるか?」


「谷川の水では、そう大きなものは出来ないが、やってみよう」


 氷馬が手を組み思念を凝らすと、何処からともなく水が集まって来て、火炎龍と同等の、巨大な水龍が具現化した。


「氷馬、私を乗せて、敵のど真ん中に水龍を突進させてくれ!」


「承知! だが、あの火炎龍を突破するまでに破壊されるかもしれないぞ、それでもいいんだな!」


「構わない。今だ、放て!!」


 大刃が出発した時から時間を測っていた神一郎が、水龍の頭の上に乗って合図した。


 水龍は、身体をくねらせて低空を一気に飛んだ。火炎龍に接近するにつれ、凄まじい熱気が神一郎を襲う。彼は水龍の中に潜り、その熱を凌いだ。


「来たわ! 叩き落すのよ!」


 水龍を一早く見つけた真麟が叫ぶ。八体の火炎龍は、一斉に水龍目掛けて火炎弾を撃った。


 ドドドド! ドドーン! 水龍が、透明の身体を赤く染めながら、懸命に火炎弾をすり抜けて突進すると、巨大な炎の龍が、目と鼻の先に迫り神一郎を睨んだ。

 火炎に焙られた水龍は、濛々と白い煙を上げて蒸発し始めていた。神一郎は、熱湯になって来る水龍の中で必死に堪えていたが、息も限界に達し、水龍の頭の下に「プハーッ!」と飛び出した。


 火炎龍の半端ない炎熱を浴びた神一郎の濡れた体が一瞬にして乾き、彼の口から呻き声が漏れた。


「ウウッ!」


 次の瞬間、水龍は砕け散り、神一郎は、焼け野原となった地上に下り立ったが、そこは、中央の二体の火炎龍に挟まれた、最悪の場所だった。


 神一郎は炎熱から身を護るために、渾身の力で風を起こした。


 彼を中心として風が回りだしたかと思うと、それは次第に激しさを増して、直近の二体の火炎龍の形が大きく揺らぐほどの強風になった。発火するのではないかと思うほどに熱かった神一郎の身体は、風によって徐々に冷まされていった。


 一息ついた神一郎だったが、火炎龍達は、風に煽られながらも、徐々に神一郎の居る方へと包囲網を狭めて来たのだ。そして、八体の火炎龍が大きな口を開け、神一郎目掛けて火炎弾の一斉攻撃をかけようとしたその時、


 火炎龍は勢いを失い、次々と姿を消していった。


 地中から顔を出した大刃の土の龍が、つぶてを吐き出して、火王家の者たちを倒したのだ。神一郎も空に舞い上がり、風破で残りの敵を倒すと、火炎龍は、真麟が操る一体だけとなった。



「真麟、私が相手だ。かかって来い!」


 神一郎が、空中で印を結び雷雲を呼ぶと、空が掻き曇り、大粒の雨が降り、雷が鳴った。

やがて、張り詰めた空気が動き出したかと思うと、瞬時に、巨大な竜巻が現れた。それは、あらゆるものを巻き上げ、黒い龍のように天に伸びていた。


 凄まじい風に煽られて、真麟が操る火炎龍の炎が逆立ち、龍の形が崩れかけた。真麟が、必死に火炎放射や火炎弾を試みるも、風に押し返されてしまう。


「何という凄まじい風なの……。こうなったら、最終奥義、火炎爆龍で決着を着けるしかないわ。神一郎、覚悟しなさい!」


 真麟の火炎龍が、ひと際燃え上がり勢いを盛り返すと、一気に空高く舞い上がった。そして、暫く旋回して神一郎の位置を見定めると、猛烈な勢いで突進して来たのだ。


 神一郎の竜巻がそれを迎え撃つ。火炎龍は、竜巻の風に押されながらも、神一郎の居た辺りから少し離れた所に激突し、大爆発を起こし炎上した。


 火炎爆龍は、全ての火薬を抱いたまま相手に突っ込む、捨て身の技なのだ。その破壊力は凄まじく、地面に巨大な穴をあけて、神一郎の竜巻を吹き飛ばしていた。


「やったか!」


 地上から火炎龍を操っていた真麟が、神一郎が居た上空に目を向けた。


 だが、次の瞬間、消えたはずの竜巻が、再び轟音と共に真麟の頭上に襲い掛かって来たのだ。竜巻は消えたのではなく、上空で渦巻いていただけだったのだ。


「何!」


 彼女は、諦めたように目を瞑り、竜巻に身を任せるしかなかった。

 


 気を失って、遥か彼方に飛ばされた真麟が空から落ちてくるのを、神一郎が抱き止めて地上に下り立った。


「神一郎、真麟様を渡せ!」


 大刃の土の礫を受けて気を失っていた火王家の者達は、火炎龍の大爆発で目を覚まし、よろけながらも刀を抜いて神一郎に迫った。


「火王家の方々、これ以上の戦いは無用です。真麟の手当てを」


 神一郎が真麟を渡すと、彼らは、礼を言って何処へともなく去っていった。


 赤い火炎龍と入れ替わるように、夕焼けが、空を真っ赤に染め出した。


「味方同士で戦わなければならんとは辛いものだな。夕日を五人で見たあの頃が懐かしい」


 氷馬が、夕焼けを見ながら感慨深げに言うと、大刃も神一郎も黙って頷いた。


「真麟も分かってくれる時がきっと来る。神一郎、ともかく、風魔谷へ帰ろう」


 ライカが、そう言って神一郎の背中に飛びついた。

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