『流行を追い掛けるのに疲れた』『異世界転生はお腹一杯』という人に読んで欲しい『世界に1つだけの作品』の作り方
なろう界では『流行』に乗っている作品が非常に多い。だから、似たような『タイトル』や、似たような『テンプレ展開』の作品であふれている。
これに、満足して書いている人もいるけど、不安や違和感を覚えながら、悶々と書いている人もいると思う。
でも、安心して。不安や違和感のある人は、むしろ正常だから。『正しい感性』を持っているからこそ、流行を追い掛けることに、疑問を持つんだ。
このコラムを読んだら、流行を追うのを止めて、自分が書くべき作品を、選ぶ人も出てくると思う。なぜなら、そっちほうが『自分の才能』をフルに発揮できるから。
ただ、ちょっとだけ話が長いから、お茶でも用意して、気楽に読んでみて。真面目な話なんだけど、そこまで深刻に受け止めなくても大丈夫だから。
あと、敬語を使わず『タメ口』で話すけど、あなたのことを大事な同志だと思ってるから、親しみを込めているだけ。そこんとこ、ヨロシクね。
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作品選びは仕事選びと同じ
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自分が書く『作品選び』というのは、将来、どんな職に就くかの『仕事選び』のようなものなんだ。なぜなら、どのジャンルの作品を書くかによって『将来が変わる』から。
選んだジャンルによっては、全く実力を発揮できず、埋もれてしまう場合もある。逆に、上手くジャンルを選べば、100%実力を発揮して、人気作家になるかもしれない。
ここで小説を書いている人は、全員、例外なく『才能』がある。一話でも書き上げたことのある人は、みんな『小説の才能』を持っているんだ。
実際、作品を読んで批評するだけで、自分では書かない人も多い。なぜなら、小説を読むのは簡単でも、書くのは物凄く難しく『才能が必要』だからだ。
なので、小説を書いている人は『才能がある』ので安心してほしい。自分のステータス欄に『小説家』というタレントが、ちゃんと付いているんだ。
ただ、小説を書く才能は持っていても『才能を発揮』できている人は、物凄く少ない。多くの人は、自分の才能を開花させられていないんだ。
理由は簡単。書く作品の『選び方』を間違えているから。だから、自分の才能を発揮できていない。
ちなみに、ファンタジー小説では、魔法は定番だよね。魔法の出てくる話では『属性』という言葉がよく使われている。火属性とか水属性とか。で、自分の『属性』に合った、魔法やスキルしか使えないのが基本。
つまり、火属性の人が、水魔法を使おうとしても使えない。逆に、自分に合う属性なら、十分に才能を発揮することができる。
実は、自分たち『小説書き』にも、この『属性』というものが有るんだ。その属性と言うのが、小説の『ジャンル』のこと。
ファンタジー・SF・ミステリー・ラブコメ・日常・BLなどなど。人によって、持っている『属性』が違う。
先ほども言ったように、小説を書いたことのある人は、みんな『才能』を持っている。でも、持っている『属性』は、全員ちがう。だから、他の人がそのジャンルで成功したからと、自分がやってみても、上手く行くとは限らない。
成功した人は、そのジャンルの『属性』を持っていて、自分は持っていない可能性があるからだ。しかし、なろう界では『異世界転生』ジャンルに、異常に人が集まっている。まるで、ゴールドラッシュのようだ。
はたして、その中に『異世界転生』の属性を持つ人が、どれぐらいいるのだろうか? おそらく『1割以下』だと思う。多くの人は『属性違い』で、あがいている状態だ。
つまり、火属性の人が英雄になったからと、水属性や土属性の人たちが、必死に火の魔法を使おうとしているのと同じこと。『属性違い』じゃ、当然、実力は発揮できない。
なぜ、作品選びが仕事選びと同じなのか、理解できただろうか? 合った仕事を選ばないと上手くいかないように、小説も『属性に合った』ジャンルを選ばないと、上手くは行かない。
才能はみんな持っている。でも『才能を発揮』できるかどうかは、ジャンルしだいなんだよね。
全然、評価して貰えないからと『才能がないのでは?』と思うのは、早計だよ。単に、自分がいるジャンルが、間違えているだけの可能性が高いから。
ほら、なろう作品でも良くあるじゃん。『無能力者』だと馬鹿にされている主人公が、実は全然別の『凄い才能』を持ってたとか。やっぱり『ジャンル』を間違えていると、才能は発揮できないんだよね。
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なろうの評価と一般の評価は全く違う
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なろう界では『異世界転生』が、異常に流行っているよね。でも、世間一般では、別に流行っていない。ここは勘違いしてはいけないところ。
もし、世間でも流行っているなら『まどマギ』や『君の名は』みたいに、世界中で大ヒットして、映画の興行収入記録を塗り替えるぐらいになるはず。でも、実際には、そうはなっていない。
ちなみに、自分は新作アニメを片っ端から見ている。これは、学生時代からの習慣で、流行を知るのに役立っているんだ。ただ、新しい期の切り変わり時期は、見る作品が多すぎて、睡眠不足で死にそうになる(笑)
でも、自分はTVは見ない。リアタイで見るのは大変だし、録画も作品数が多いと大変なので、全て月額制の動画サイトで視聴する。Amazonプライムやdアニメストアとかね。
なお、新作の1話目だけは、ニコニコ動画とかの、コメント付きの動画サイトで視聴する。これは、視聴者の『率直な感想』を知りたいからだ。
やはり、目の肥えたアニメファンは、かなり辛口のコメントが多い。ただ、いい作品は、素直に『面白い』と言うし、つまんない作品は、とことんヤジが飛びまくる。
さて、なろう作品も、どんどんアニメ化されているよね。主に『異世界転生』もの。これらの作品を、コメント付き動画サイトで見てみると……。
「また、テンプレなろう作品かよ」
「もう、こういうのいらねーよ」
「異世界転生以外ねーのかよ?」
スタートからコメントが荒れまくる。
そして数分後……。
「きっついなぁ、まだ半分以上のこってるじゃん」
「ごめん、切るわ」
まだ、半分も行かないうちに『一話切り宣言』が出てきたりする。
別にこれは、ニコ動だけではないんだ。一般人が多い、Amazonプライムでも、評価は変わらない。Amazonは動画のコメント機能はないけど、レビューが非常に多く書かれている。
かなり辛口だが、そこそこの作品なら、☆3.5~4はつく。しかし、中には☆3を割っている作品もあり、その中には、なろう作品も入っている。
でも、他サイトで評価の悪い作品は、なろうではランキング上位で、人気のある作品だ。なぜ、このような現象が起こっているのか?
それは『読者層』が違うから。なろう界にいるのは『なろう読者』たちだ。なろうの流行を知っているので『流行要素』が入っていれば、それだけで加点してしまう『流行補正』を持っている。
しかし、他サイトにいるのは『一般読者』だ。だから、なろうの流行など知らないし『流行補正』もしない。色眼鏡を掛けずに、純粋に評価する。だから『流行補正』で人気になった作品は、当然、評価はされない。
読者層によって
・なろう読者 ⇒ 流行・テンプレ展開が好き
・一般読者 ⇒ 斬新さを求めている・テンプレ展開が嫌い
求めているものの傾向が違う。
自分も、最近は『1話切り』する作品が多い。できれば全話見たいが、仕事と小説の執筆を両立するには、どうしても時間が限られてしまう。なので、1話だけ見て、どんどん切っていく。
実は、その際の、切った作品の中に、なろう作品が非常に多い。別になろう作品が嫌いなわけではない。時には、最終話まで見て、2周目に突入する作品もある。でも、ほとんどは『1話』で切ってしまう。
なぜなら『どっかで見た内容』『何度も見た展開』だから。自分が見たいのは、今まで一度も見たことがない作品。この作品でしか見れない話。
要するに、一般読者と同じで『斬新な作品』が見たいのである。同じものは、何度も見たくないので……。
異世界転生やテンプレ展開が通用するのは、なろう界の中だけ。外の世界の『一般読者』には通用しないので、そこのところは、勘違いしないよう注意が必要だ。
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ナンバーワンよりオンリーワン
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小説には『ナンバーワン』と『オンリーワン』を目指す書き方がある。『ナンバーワン』は、評価やランキング狙いの書き方。いわゆる、流行に乗っかる書き方だ。流行に乗るほうが、楽に評価を稼げるし、ランキングも狙いやすい。
一方の『オンリーワン』は、流行は全く気にせずに、自分にしか書けない作品を目指す方法だ。流行ではないので、評価されるのは難しいが、そもそも、評価を気にして書く方法ではない。
自分がやっているのは、この方法。この書き方をしているのには、色々理由があるが、今回は、少しだけ『厳しい現実』のお話しをしようと思う。
昔、出版セミナーに通っていたことがあった。セミナーには、色んな出版社のプロの編集さんたちも、多数参加していた。各種、講義があって、自分が書いた企画書を見てもらったり、プレゼンをしたりする。
セミナーの最後に、編集さんたちから一言あるが、どれも厳しいものばかりだった。いつも、物凄く重い空気で終了となる。
ある編集さんが、こんなことを言っていた。
「誰でも書けるものなんか求めていないです。
誰でも書けるなら、すでに実績のある作家さんに頼みますから。
新人のあなた方には、絶対に依頼はしません」
この時、会場内はシーンと静まり返った……。
あまりに『正論』である。他の人でも書ける作品なら、すでに実績のあるプロに書いてもらったほうが、売れるに決まっているからだ。
ちなみに、本の流通システムは知っているだろうか? 本は通常の商品と違って『買い取り制』ではない。つまり、本屋に置いてある本は、スペースを借りて置いてもらっているだけ。売れなければ『返品可能』なのだ。
売れた分から、本屋の利益を引いた分が、出版社に振り込まれる。もし、1冊も売れなければ、本がまるごと返品されてくるだけだ。
他の編集さんが、こんな話もしていた。
「もし、本を出して売れないと
下手をすれば、1000万以上の赤字が出ます」
再び会場内が凍り付く……。
製本代・輸送費・出版社の人件費など、本は物凄くお金がかかる。もし、全く売れなければ、出版社は大変な赤字を抱えることになってしまう。
つまり、誰でも書ける作品なら、赤字のリスクを負ってまで、新人に任せる必要はない。すでに実績のある、人気作家に任せた方が安全だからだ。
逆に、新人に任せるとしたら、その人にしか書けない作品。他の人が書いていない作品だ。
それでも、流行に乗ったテンプレ作品が、出版される場合もある。しかし、1、2冊だして消えて行く作家も結構いるのが、厳しい現実だ。
理由は簡単。赤字を出してしまったからだ。もし、1冊目で赤字を出したら、2冊目のオファーは、まず来ない。すぐにサヨナラである。誰でも書ける作品なら、変わりの人は、いくらでもいるので……。
ただ、当然、出版されるからには、人気がある作品だ。にもかかわらず、全く売れなかったのは、先ほどお話しした通り。『一般読者』には、受けなかったからだ。『一般読者』には、なろう限定の流行は通用しない。
また、なろう読者が『世の中の全ての読者ではない』ということ。『一般読者』のほうが、圧倒的に数が多い。小説好きの人すべてが、なろうに参加している訳ではないので。
なろう読者が、流行の作品を求めていたとしても、一般読者は『オンリーワン作品』を求めている人が多い。
『なろう読者』だけに向けて書くのか。『一般読者』向けに書くのか。これによって、選択のしかたは変わって来る。でも、プロを目指す志のある人は、一般読者の存在を、忘れてはいけない。
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足し算よりも引き算で作品を作る
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『面白い作品を書きたい!』
これは小説書きなら、誰もが思うこと。もちろん、自分も日々考えている。
では、ここで、ちょっと質問するね。
『あなたは、面白い作品を書くには、どうすればいいと思う?』
遠慮せずに大丈夫。持論を言ってくれればいいだけだから。
「流行の要素を全部つめ込む!」
Oh! クールな答えだね。
きっと、こう考えている人は多いと思う。自分も昔は、散々その方法をやってみた。『流行の要素』を、詰め込むだけ詰め込めば、面白くなると信じていたからだ。
例えば、こんな感じ。
主人公はクールで黒い服着て二刀流で。ヒロインはやっぱツンデレやな。サブヒロインに無口な子も入れて。ケモ耳少女とメイドも入れておこう。そうそう、金髪のエルフも入れるし、巫女服の美少女もマストやな。あと王女も入れて……。
主人公が交通事故に遭って、天界に行って女神様に会って、ファンタジーの世界に転生。その際に、最強のチート能力貰って――。
んでもって、謎の美少女ヒロインを助けたら惚れられて。魔王を倒すために冒険を始めて、気付いたら沢山の美少女に囲まれて。周りの人たちにあがめられて、いつの間にか勇者になっている……。
よくある、お約束のテンプレ展開。考えられる限りの流行を取り入れる『全部のせ』である。
考え方としては『足し算』で作品を作る方法。流行を全て盛っておけば『流行補正』が掛かるため、よほどひどい作品でない限り、そこそこの評価は約束されている。
ただし、そういう作品が好きな人が集まっている、特定のコミュニティの中でだけ。なろう界は、まさにそれだ。
ただ、作品を書いている最中に、
『どっかで見たような作品だな……』
『本当にコレ面白いんだろうか……?』
『自分の書きたい作品とは違う気が……』
何か違和感や疑問を持つ場合もある。
もちろん、何の疑問も持たずに、書き続ける人もいると思う。しかし、このエッセイを見に来た人は、何かモヤモヤしているから、来たはずだよね?
『自分が書く作品の方向性は、本当にこれでいいんだろうか?』と。
足し算で作ると、どうしても、既存の作品と、似たようなものになってしまう。足せば足すほど『流行』には近づくが『オリジナリティ』が失われて行く。流行とオリジナリティは『対極』にあるからだ。
一方、もう1つの作品の書き方として『引き算』の方法がある。足すのではなく、どんどん引いて行く。
「右手に封印した暗黒竜の呪いがうずくぅ……」
みたいな感じで、どんどん色んな要素を、自分の中に封印して行くんだ。
今、自分が書いている作品が、この『引き算』の方法。ことごとく、流行の要素を『封印』して書いている。
今書いている作品では
・異世界転生
・チート能力
・バトル
・中世時代
・ハーレム展開
これらは一切、使っていない。全て封印してしまったのだ。
『ざまぁ』『追放』『悪役令嬢』なんかも入っていない。徹底して、流行要素を封印してしまった。だから、体のあちこちに『封印の紋章』が刻まれているんだ。そして、たまにうずく(笑)
流行を封印するのは、想像以上に難しい。なぜなら『流行補正』がなくなる上に『テンプレ展開』も使えなくなるからだ。
『流行補正』がないと『作者の実力』のみで評価されることになる。さらに『テンプレ展開』が使えないから、全て『自分の頭』で考えなければならない。物凄く難易度が高い『very hard』モードだ。
おそらく『バトル』と『中世時代』を封印したら、作品が書けなくなる人も多いと思う。なぜなら、剣と魔法の中世ファンタジーが、ド定番だからだ。
特に『バトル』を封印すると『ドラゴンボール・システム』が使えなくなるので、物凄く難易度が上がる。
『ドラゴンボール・システム』とは、敵を倒したら、さらに強い敵が出てきて、強さがどんどんインフレしていく繰り返し。さらに、ネタがなくなったら『天下一武道会』を開けば、どうにか話がつながる、最強の切り札である。
もし『バトル』を封印したら、『日常もの』しか書けない。日常ものは、便利なシステムがないので、かなり頭を使う。大変な割に、盛り上がりにくいので、本当に難しい。
じゃあ、何でわざわざ流行を封印して、こんな大変なことをするのか? ただのドMなのか……?
いや、至ってノーマルなんで、自分。痛いのも辛いのも大嫌いだし、できれば楽して成功したい、俗物的な人間である。でも、普通は、みんなそうだよね?
そこまでして『流行を封印』するのは
・完全オリジナル作品を作るため
・正当な評価をもらうため
・自分のスキルを上げるため
これらの、理由があるからなんだ。
どれも大事なことだけど、特に重要なのが『正当な評価』をもらうこと。『流行補正』なしで良い評価をもらうのは、物凄く難しい。流行をどんどん入れたほうが、明らかに簡単だ。
しかし、流行の作品で評価されるのは『自分の才能』なのか『流行』で評価されているのか、非常に分かり辛い。
もし『流行の要素』だけで評価されているとしたら、物凄く怖い。読者は『自分の才能』を見ている訳ではないからだ。
これって、言い換えれば『流行さえ入っていれば、誰の作品でもOK』ってこと。また、才能ではなく流行だけで評価されていたら、いずれこける日がくる。
永遠に続く流行はないし、流行だけで評価され、万一、プロにでもなっちゃったら、大変なことである。
しかし、作者の才能だけで、オリジナル作品を書いていれば、世の中の流行がどう変わろうと関係ない。流行の影響は全く受けないし、才能を鍛えておけば、どんな作品でも書けるからだ。
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属性を知るための自己探求
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流行を封印すれば、嫌でも『オリジナル作品』を書かざるを得なくなる。なぜなら『テンプレ』が使えなくなるからだ。他人が作ったテンプレではなく、1から全てを自分で考える必要がある。
ただ、オリジナルなら、何でもいい訳ではない。先ほどもお話ししたように、自分の『属性』に合った作品を、慎重に選ぶ必要があるからね。
「でも、自分の属性って、よく分からないんだけど……」
ただ、これが普通。自分のことほど見えないからだ。
特に、流行を追い掛けていた人は、全く考えたことがないと思う。まぁ、普通の人でも、自分がどんな人間かなんて、そうそう考えたりはしないので。
しかし、自分の属性を知るには『自己探求』しなければならない。でも、そんなに難しいことではなく『自分は何が好きなのか?』これだけである。
分かりやすく説明するために、ちょっと昔話を聴いて欲しい。
自分は昔『バトルもの』が大好きだった。小説も漫画もアニメも、見るのはバトルものばっかり。自分が書く小説も、全てバトルもの。
しかし、ある時期から『日常系』にハマった。仕事やら何やらで疲れていたせいもあってか、日常系をみると、物凄く癒されたからだ。
きっかけは『日常系アニメ』だった。特に『きらら系アニメ』が好きで、他にも片っ端から日常系アニメを見ていた。で、ある時、ふと思ったのである。
『自分の好きな作品って、女の子ばっか出てね?』
女子高が舞台だったりとか、男性キャラが全然でない作品が多かった。そこで『ある疑問』が生じたのである。
『もしかして自分、ユリ属性なのでは……?』
はっきり言って、これは衝撃的な事実であった。今まで自分は、至ってノーマルだと思って生きてきたからだ。
『いや、待て待て、落ち着くんだ自分……。そうと決めつけるのは早計だ。まずは、検証してみよう、そうしよう――』
という訳で、ユリ好きの人には有名らしい『○Trick』なる作品を見てみた。wikiで調べてみたら、ちゃんと『百合』というジャンルが付いているので、間違いない。
ドキドキしながら視聴してみた結果……。
チュドォォーン!! 大破――。
あまりに刺激が強すぎて、1話であっさり撃沈。女の子同士のキスシーンにドン引きして、生理的に受け付けなかったのだ。
「ぐっ、一生の不覚。ユリをなめていたぜ……」
どうやら、ユリ属性ではなく、至ってノーマルだったらしい。でも、女の子が一杯でてくる作品は好き。いったい何なんだ、自分の属性は……?
そこで今度は、なろう界でも大人気の、ハーレムものに手を出してみた。これなら、ユリ作品のように刺激が強くないから、きっと大丈夫だろう。
ちょっぴりドキドキしながら視聴してみた結果……。
「ちょっ、待て待て! いったいどこに、主人公を好きになる要素があった?」
「全然、好感度上がってねーし、フラグも立ってねーよ!」
「おまいら全員、チョロ過ぎだろ!!」
あまりにヒロインたちがチョロすぎて、やっぱり生理的に受け付けなかった。ギャルゲーをやり込んだ人間にとっては、好感度を上げずにヒロインが落ちるのは、どう考えても納得がいかなかった(笑)
「ユリ属性でもなく、ハーレム属性でもないのか……。じゃあ、いったい何なんだ?」
色々考えてみたが、よく分からない。しかし、ある日、AV (アニマルビデオ) を見ていた時のことである。
「おほぉー、かわええー」
「もっふもっふやのぉー」
子犬が走り回っている動画を見て癒されながら、ふと気付いたのである。
「もしかして、女の子が一杯でてくる日常系って、犬や猫を愛でてる時と同じなんじゃね?」
そこで、再び検証してみることにする。『○るゆり』『き○モザ』『ごち○さ』など、女の子ばっかり出て来る作品を視聴してみた。その結果……。
「うーん、かわええーのぉ」
動物の動画を見ている時と、全く同じ反応であることに気付いたのである。
「そうか、これって、可愛いものを見た時に、萌える反応だったんだ!」
どうやら、動物や美少女を見ると、萌える属性だったらしい。
では、なぜ、美少女が一杯でて来る、ハーレムものには反応しなかったのか? 純粋な『可愛さ』だけに萌えるので『エロス』は邪魔だったのである。
「あのー、自分さっきから何きかされてるの……?」
と思った人もいるだろう。
しかし、これこそが『自己探求』なのである。
自分がいったい何が好きなのか? 何に対して萌える(燃える)のか? これを、徹底的に探究するのである。
人によって、萌えの反応は全く違う。カッコイイもの・エロいもの・美少年・幼女・オッサン・亜人・モンスターなどなど。中には、メカや人工知能などに萌える人もいるかもしれない。
まぁ、好みは人それぞれなので、何に萌えようがいいのである。ただ『萌えセンサー』が発動したものが、自分の『属性』である可能性が高い。
一度、真剣に『自分が何属性なのか?』探求してみて欲しい。流行を追い掛けていた人でも、意外なジャンルの属性の場合もある。
もしかしたら、かなり『ニッチ』だったり『アブノーマル』な属性の場合もある。でも、気にする必要はない。どんなジャンルにだって、一定の需要はあるからね。
そのジャンルの作品を書くかどうかは置いといて、とりあえず、自分の属性を知っておこう。自分の属性を知らずに作品を書き続けるのは、小説書きにとって『最大の不幸』だからだ。
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流行は感染力の強い呪いである
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『流行』と聞くと、多くの人は『良いイメージ』として捉えると思う。しかし、流行とは、いいことだけではない。平たく言ってしまうと、流行は『呪い』なのである。
何かの流行が始まると、
「自分もやらなきゃ乗り遅れちゃう」
「みんなやってるから自分もやらねば」
「流行に乗っておけば安心だ」
多くの人は、不思議な『義務感』や『安心感』にとらわれてしまう。
しかも、この流行は、凄まじく感染力が高い。なので、しっかり『自分の属性』を理解していない人は、あっさり感染してしまう。
ちなみに、なぜ『流行が起こるか』考えてみたことが有るだろうか? 流行は小説に限らず、何でも仕組みは同じ。いまだかつて無かった『斬新なもの』が広まって流行になる。
どこにでも有るような、ありきたりな物が、流行になることは、まず無い。誰もが『斬新さ』という、刺激に飢えているのからだ。
流行の出始めは、物凄く『斬新』で『希少価値』が高い。しかし、誰もかれもが手を出して、ありふれてしまうと、全く斬新さがなくなってしまう。流行に『賞味期限』があるのは、そのためだ。
今のなろう界では『異世界転生』が流行になっている。やはり、最初は斬新で面白かったはず。しかし、あまりにも手を出す人が多すぎて、もはや『斬新さ』も『希少価値』も無くなってしまった。
しかし、多くの人たちが『流行』という名の『呪い』に感染しまくって、せっせと量産し続けている。呪いに掛かっている人には、斬新に見えているようだ。
ただ、先ほどもお話ししたように、なろう界の流行は、一般の流行とは違う。一般の人たちは『異世界転生』の呪いには掛かっていない。だから、評価が辛口なのだ。
どんな流行も、だいたいは数年で終わってしまう。早いものは、1年もたない場合もある。
なお、異世界転生が流行り始めたのは『2010年代前半』あたりだ。人によっては、もっと前から、という人もいる。
2010年ごろとして考えても、もう『10年以上』も経っている。流石にこれだけ長く続けば、お腹いっぱいになるのは当然だ。
もうそろそろ、呪いから解き放たれてもいい頃だと思う。それに、かつてバブル景気が、ある時、突然はじけたように、いつか必ず、はじけて終了する時が来るはずだ。
流行に乗るのが、悪いと言っているのではない。でも乗るなら『流行り始め』の希少な時期に乗っかり、大きく広まったら、別の道を探したほうがいいと思う。
あまりにも長く流行に身を置ていると、周りが全く見えなくなって来るからだ。また『自分の属性』や『やりたいこと』も、見えなくなってしまう。
流行の呪いを解くのは、自分自身にしかできない。やり方は、先ほどお話しした『流行を封印』する方法を使えば、誰でも簡単にできる。
流行から解き放たれたい人は、自分の右手や左目なんかに、流行の呪いを封印してみてほしい。封印を包帯や眼帯で隠しておくと、ちょっぴりクールである。
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どこまでも自由に自分らしく
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例え流行を追い掛けていようとも、小説書きなら誰もが考えていると思う。
『自分にしか書けない作品が作りたい!』
小説書きに限らず、創作活動をしている人間は、皆『自己主張』や『自己顕示欲』が強い。ちゃんと、自分の中に、自分だけの価値観を持っている。その価値観は、誰にも真似できないもので、まさに『世界で1つだけ』のものだ。
しかし、現実世界では、その価値観を表に出すのは難しい。常に周りに合わせたり、ルールを守ったり、自分のやりたいようには出来ない。
下手に自分の価値観を前面に出すと『空気が読めないやつ』『協調性のない人間』と言われてしまう。
特に、社会人の場合は、組織のトップにでも立たないと、自分の意思は1ミリも出すことは出来ない。現実は、自分の価値観を自由に出せないのだ。
でも、小説は違う。自分の価値観も想いも、他人に遠慮せず、全て出すことができる。人には言い辛い趣味や性癖だって、いくらでも出せる。
小説書きは、作品の『神』である。だから、作品の中では、何だって出来てしまう。
つまり、小説とは、限りなく『自由』なものだ。小説とは、自分の魂を、完全に『開放する』世界だ。
しかし、流行に乗るということは、その『自由を放棄』することになる。流行という名の『呪い』に縛られ、自由にできなくなってしまう。
リアルで縛られている上に、小説でまで縛られてしまったら、自由のない人生になってしまう。せめて、小説の中だけでは、自由でいるべきだ。
もちろん、流行のジャンルが、自分の『属性』と合っていれば、とても楽しいと思う。でも、合わない人がやれば、辛かったり、違和感があったり、楽しくは出来ない。
『承認欲求』を満たすため、評価を取りやすい流行に乗る人が多い。『評価が欲しければ流行に乗れ』という人も沢山いる。実際に『流行補正』が付く分、評価は取りやすい。
でも、その対価として『自由』を捨てている。また、自分の属性を無視すれば『才能を腐らせる』ことになってしまう。
ちゃんと自分に合った『属性』を選べば、楽しく書けるし、才能を発揮すれば『名作』が完成する可能性だってある。
そこそこの作品で良ければ、属性を気にせず、流行に乗っておけば十分かもしれない。でも、名作が書きたければ、自分の才能が発揮できる場所に行ったほうがいいと思う。
実際に、自分は、流行を全く気にせず作品を書いている。なぜなら、自分の属性に合った作品を書きたいし、何より自分にしか書けない作品を作りたいからだ。
でも、自分らしい作品を書くには、何物にも縛られず、常に『自由』でいる必要がある。しかし、流行は自分を『縛る』ため、可能性を狭めてしまう。
『流行を追い掛けるのに疲れた』『異世界転生はお腹一杯』と思っている同志。もちろん、あなただって、自由に自分らしく書くことができる。なぜなら、作品の『神』なのだから。
一度、流行を封印して、自分にしか書けない『オリジナル作品』を書いてみて欲しい。
最初は、自分の力だけで進むのは、勇気が必要になる。でも、慣れれば、なんてことはない。周りや流行をチラチラ気にせず、自分の創作活動に『100%集中』できる。書いていて、とても清々しい気分だ。
「でも、流行に乗らないと読んでもらえないのでは?」
「自分の属性、物凄くニッチなんだけど……」
と心配な人もいるかもしれない。
しかし、大丈夫。どのジャンルにも、必ず『同じ属性』の人が集まるから。何だかんだで、どんなジャンルにも、同好の士がいるのである。
合わないジャンルで埋もれてしまうよりも、たとえニッチでも、自分の才能が100%発揮できる方が、ずっと幸せだと思う。
自分の『本当の価値観』を見てくれる人が集まって来るし、何より『自由』で、書いていて楽しい。
あと、流行は『乗る』だけが全てではない。『自分で流行を作る』ぐらいの野心があってもいいと思う。どんな流行だって、最初から流行だった訳ではない。だから、次の流行を作るのは、あなたかもしれないのだ。
同志諸君。さぁ、小説の時間がやってきた。
自由に自分らしく、世界に1つだけの作品を作って行こうぜ!