4.俺の死
「 でねー、今"帝国の剣"っていうファンタジー小説がめっちゃ流行ってるの!もう主人公のユラン王子がカッコ良ぎて、
」
俺たちは今店を出て、大通りを会話しながら歩いている。基本的に妹がすごい勢いで喋っているだけなのだが、俺は妹の機嫌を損ねないように適度に相槌をうつ。妹が今話しているのは、今中高生に大人気だという"帝国の剣"?についてだ
「ユラン王子はゼ・バルマリィ帝国の第二王子として生まれるの。で!このゼ・バルマリィ帝国の王位継承の基準は帝国の王族の象徴である碧眼持っている男性にかぎられるの!ユラン王子はこの条件を満たしていたため、次期国王の候補として挙げられるんだけど‥
第一王子として生まれた腹違いアルバート王子もこの条件を満たしていて、魔力量も桁違いだったから、ユラン王子が生まれる前までは、ほぼ次期国王決定って感じだったの‥。ユラン王子の存在を邪魔に感じた第一王妃はユランの暗殺を命じたんだけど、間違えてユラン王子の双子の妹のエリス王女が殺されてしまうの。これを機にユラン王子のお母さんは床に伏せがちになってしまって‥公務に手がまわんなくなっちゃったもんだから役立たずな王妃とか言われて、お城の中で一番格の低い場所に言わば幽閉されてしまったの!ユラン王子も一緒にだよ!かわいそうじゃない!?
でも、ユラン王子は諦めずに新しい仲間を見つけてたたかっていくんだけどね!あと、
」
急に咲の熱弁が止まった。後ろから悲鳴が聞こえてきたからだ。よく見ると、刃物を持った中年の男がこちらへ何か呟きながらやってくる。
「Sakiちゃん…どうしてそんな奴といつもいつも一緒にいるんだよ‥。ボクのこと好きって言ってくれたよね‥ハアハア。 ボクは許さないよ‥
一緒に2人だけの世界に‥ 」
なんなんだあいつは!2人だけの世界?
とにかく正気じゃない!
ここは早く咲を連れて逃げよう。そう思って咲を引っ張って逃げようとしたが、咲が動かない。どうしたんだ?!と思って振り返ると、恐怖のせいからか、咲は小刻みに震え、逃げなければいけないと分かっていても、体がうまく動かないと言った感じだった。
「‥‥おにいちゃん」
そう言って俺の服にしがみついてくる。
あのヤバい男はどんどん俺たちに近づいてくる。
周りにいるのは女の人ばっかで、助けは期待できない。間に合わないと思った俺はとっさに咲にかぶさった。
カランカランと刃物が俺の視界に転がってきた。
刃物には真っ赤な血がついていた‥
だんだん自分の背中が熱くなってくるのを感じた。
俺はそのまま地面に倒れた。
「お兄ちゃん!!
お兄ちゃん、起きてよ‥お兄ちゃん!!」
頭の上で咲が俺のことを呼び、叫んでいた。
良かった‥。
だんだんと体の感覚がなくなっていく。
頭の中には小さい頃の思い出がどんどん浮き上がってくる。
これが走馬灯ってやつか‥‥
犯人の姿はもうなく、周りには騒ぎを聞きつけた警備員やら通りすがりの人やらが群がっており、
「おい!誰か救急車だ、救急車をよんでくれ!!」
などと叫んでいるのが聞こえる‥
だんだんと意識が遠くなっていき
俺は目を閉じた
こきまでで、樹のお話が終わりです。
次からはファンタジー要素満載で行きたいと思います!!