07.「高級宿にて、美少女たちとの優雅な夕食。……そして、天使少女は盛大に自爆したようです」
――ガチャリ。
ドアを開けるとそこには、ピカピカと輝く純白の風呂場が広がっていた。
「……わぁ、凄い綺麗なお風呂ですね〜」
「……そうね、最近野宿が多かったから……綺麗なお風呂に入れるのは嬉しいわ」
「ふふっ、部屋に風呂付きかっ……これは有り難い……!」
僕たちは風呂場に足を踏み入れながら、口々に感想を呟く。
これだけ豪華な部屋だと、ついついウロウロしてみたくなってしまう訳で……僕たち三人は片っ端からドアを開けて、中を探検していたのだった。
『へぇ……これって良い部屋なんだ?』
(……ええ、おそらく最上級クラスだと思います。王都でも通用するレベルで……)
そして部屋の隅々まで見終えた僕たちは、ゆったりとベッドの上に腰を下ろす。
そしてしばらく、各々でゆったりとくつろいでいたのだったが――
――コンコン、とドアをノックする音が部屋の外から聞こえて来たのだった。
「む……どうやら、ルームサービスが来たようだな」
そう言ってレオがドアの外を覗き込む。
そんなレオの背中越しに、僕も並んで様子を窺うのだった。
ドアの外に見える、給仕の姿。不自然な様子は見当たらないし……邪な気配も感じられない。うん、どこからどう見ても、普通の給仕さんだ。
そしてその横には、何やら台車のようなものが見える。
そして、ドアを開けると――カラカラと台車を押して、給仕の人が料理を運んできたのだった。
つい暗殺者の癖で、警戒してしまった僕だったけれども……なるほど、夕食を持ってきてくれたということか。
――そして運ばれる、料理の数々。数々。数々……。
………………。
僕はこのクラスの宿には泊まったことがないから、良く知らないんだけれども。
えっと……これって、高級料理屋とかで出すような料理じゃないか……!?
それが、宿の部屋にいながら食べられるなんて……何だろう、僕はいつの間にか知らない世界に来てしまったみたいだ。
そして白いテーブルクロスの丸卓の上に、続々と料理の皿が乗せられていく。
「お食事が終わりになりましたら、このベルを鳴らして頂くと、係の者が片付けに参ります。……それでは、ごゆっくりお楽しみ下さい」
そして優雅に一礼すると、給仕の人は部屋から退出する。
「……えーっと、これって、食べちゃってもいいヤツなんでしょうか……?」
「へぇ、トーヤ、君にも驚くことがあるんだな」
そんな驚いた様子の僕のことを、どうやらレオは面白がっているみたいだった。
「……そりゃ驚くことぐらいありますよっ。もう、僕を何だと思ってるんですか」
そう言ってぷいっとする僕のことを、何故かギブリールは、キラキラした惚気顔で見つめるのだった。
『えへへ、いつものキリッとしたトーヤくんも大スキだけど……こういうトーヤくんも、可愛いなぁ……』
(ギブリールも……面と向かって『大スキ』とか、そういうこと言わないでくださいっ。流石に恥ずかしいです……!)
『えっ、ええ〜っ! ボク、そんなこと言ってたかなっ!? と、トーヤくんの気のせいだよっ、きっとっ!』
そんな僕の言葉に、ギブリールは急にあわあわと慌てたように取り繕う。
……けど、そんな否定されても、ハッキリ聞こえたことは間違いない訳で。
でもだからと言って、僕の方からそう言い張るの大人気ないし……。
だったら、女の子がそう言うのなら、追従してあげるのが男というもの……!
そして僕は、ギブリールに向かって全力ですっとぼける。
(でも、そこまで言うなら……きっと僕の聞き違いかもしれませんねっ!)
『う、うん! あ、あはは〜、そ、そうだよねっ! ……トーヤくん、ありがとっ! えへへ、トーヤくん、大スキっ!』
(…………)
『…………! っ〜〜〜〜!』
ギブリールの顔が、みるみるうちに赤くなっていく。
そして――ギブリールは両手で顔を隠しながら、物凄い勢いで部屋の隅まで行ってしまうのだった。
…………。
とりあえず、そっとしといてあげよう……。
そして――僕たちは、部屋の隅で縮こまるギブリールをよそに、運ばれてきた高級料理を食べ始めるのだった。
しばらく美味しい料理に舌鼓を打っていた僕たちだったが……料理を楽しむリゼとレオの二人をよそに、僕は立ち上がると窓際へ。
そして、カラカラと窓を開けるのだった。
ビュウと風が吹き込む。夜の帳が落ち――町には灯りが灯されている。
――静かな夜だ……。まるで、嵐の前の静けさ、とでも言うかのように。
そして僕は窓から手を退けると、静かに窓に背を向けるのだった。




