17.「『カルネアデスの塔、踏破記念パーティ』閉幕! そしてニトラ学院長の、甘い罠」
そして僕がカルネアデス会館を飛び出してから、しばらくして――。
燕との密会を終えた僕は、カルネアデス会館の前まで戻ってきていた。
――とにかく、とんでもない夜だった。
ギルドから足を洗ったはずなのに……まさかこの学園のセキュリティを突破してまで、僕に仕事を押し付けてくるなんて。
本当なら、キッパリと断りたいところだけど。
ギルドの依頼を断ったら、後が怖いからなあ……。
ようやく憧れの勇者になれるチャンスが巡って来たんだ。そんな千載一遇のチャンスを目の前にして、「勇者候補生トーヤ・アーモンド氏、謎の失踪」――なんて、全く洒落にならない。
なにしろアサシンズギルドは、『正義の為なら誘拐、監禁、何でもござれ』な"アットホーム"な職場なのだ。
もし僕が断りでもしたら……燕の後ろに控えていたもう一人が出てきて、強制的に連行されていたことだろう。
燕は最後まで一人で来ていた素振りで通していたけれど、生憎、ギルドのやり口を知り尽くしている僕は見逃さなかった。
燕と闘り合っているときからずっと、僕のことを観察し続けていた、もう一つの気配……野性的な息遣いからして、大方『猟犬』の異名を持つヤツに違いない。
ただでさえ暗闇で視界が不自由な、向こう有利な条件。
あの二人を相手にしてやり過ごすほどの蛮勇を、僕は持ち合わせていない。
しかし、それにしても。
燕の奴、有利な立場とはいえ、とんでもない仕事を押し付けてきたな……!
それもこれから王都へ向かうという、まるで図ったようなタイミング……!
詰まるところ、僕が王都へ向かうのも織り込み済み、ということか。
アサシンズ・ギルドは中央の貴族達にも強いコネクションを持っている。
僕ことトーヤ・アーモンドが、【剣聖】の少女、リゼと一緒にカルネアデスの塔を踏破したことも、ギルドにはすぐさま伝わったことだろう。
……うーむ。ということは、これから王都で活動するにしても、僕の行動はギルドに筒抜けになってしまうのか。
今まで意識したことはなかったけれど、これはこれで厄介だな……。
また今回みたいに、『裏の仕事』を回されることもあるだろうし、王都に着くまでに、何か手立てを考えないといけないかもしれない……。
さて、パーティ会場に戻ろうと思った僕だったのだが。
カルネアデス会館の入り口の前に、仁王立ちする一人の人影があった。
――僕は咄嗟に、物陰に身を隠す。
薄暗い闇夜に、開け放たれた扉から漏れ出す明かりに照らされて、その人物の姿が暗闇にくっきりと浮かび上がっていた。
入り口の前に立つ人物――それは、ジル・ニトラ学院長だった。
赤が映える古めかしい衣装を身に纏い、キョロキョロと辺りを見回す、小柄なダークエルフの幼女(擬き)の姿がハッキリと見える。
……間違いない。ニトラ学院長は僕のことを探している様子だった。
どうやら、こっそりパーティから抜け出したことを気付かれたらしい。
僕は物陰に隠れて、どうしたものかと思案する。
流石に燕との会話を知られたら拙いが、その可能性は限りなく低いハズ。
別に、正面から入っても良さそうだけれど……何か余計なことに感づかれてしまって、ひょっとすると面倒なことになるかもしれない。
……決めた。僕は気配を消すと、コッソリ裏から入る。
そしてニトラ学院長に背後から近づくと、ポンポンと肩を叩き、声を掛けたのだった。学院長は不意をつかれたように、ビクンと体を震わせる。
「あれ、こんなところで何をしてるんですか、学院長?」
「わわっ、急に背後から声を掛けるでないっ。驚くではないかっ。……むぅ、トーヤ坊め、いつの間に後ろにやってきたのじゃ……。おかしいのう、入り口は、確かに見張っておったというのに……」
「何言ってるんですか、僕は最初からずっと建物の中にいましたよ?」
そう言って僕は、ニトラ学院長に向かって笑顔ですっとぼける。
しかし学院長は、そんな僕の言葉を一笑に付すのだった。
「ククッ、ほざきおるわ。パーティの主役が会場から消えるとは、いい度胸をしておるではないか。一体何をしておったのだ?」
「本当に、トイレに行ってただけですって」
「本当か~? その薄っすらとかいた汗、それは冷や汗じゃろ? お主ほどの者に汗をかかせるなど、中々出来ることではない。命がけの殺し合いであれば、話は別じゃがの……」
す、鋭い……。僕は内心、驚いていた。
こんな僅かな手掛かりで、僕が燕と戦っていたことを見抜けるか、普通……!
まさに神懸かり的な洞察という他ない。流石は老獪なダークエルフの長。伊達に人の数倍長く生きているわけではないと言うことか……。
けど、決定的な証拠はないんだ。ここでシラを切り続ければ、向こうも諦めざるを得ないはずっ……!
そして僕は敢えて強気に、ニトラ学院長に向かって訊ねる。
「そこまで言うのなら、何か根拠はあるんですか?」
「むむっ、根拠か……それは、乙女の勘じゃ!」
そう言ってニトラ学院長は、胸を張る。
なるほど。直感とは今までの経験の蓄積から、脳が無意識に導き出した、いわゆる経験則だと言うけれど……。
……。本当にただの勘でここまで威張れる人、初めて見た……。
思わず僕はニトラ学院長に、生暖かい視線を向けるのだった。
「へー、勘ですかぁ。それじゃあ皆が待ってますし、会場に戻りましょうか」
「むぅ……」
全く取り合わず、あっさり流す僕。
一方そんな僕の態度に、ニトラ学院長は頬を膨らませ、不満げな様子でワナワナと震えている。しかしハッキリ言い返すこともできず……結局渋々といった様子で、ニトラ学院長はトボトボと僕の後ろについてくるのだった。
結構根に持つタイプらしく、道中、僕の後ろで何やらブツブツと呟いていた。
「……成程。お主がそう来るというのなら、この儂にも考えがある。クックック……小僧よ、首を洗って待っておるのだなっ……!」
何やら不気味な言葉の響きに、悪い予感を募らせながら――僕はニトラ学院長と一緒に、廊下を歩くのだった……。
――そして、その後。
ちょうど"宴もたけなわ"といった様子のパーティ会場へと戻ってきた僕とニトラ学院長の二人は、酒に悪酔いした先生方に絡まれたのだった。
クレア先生とソフィアさんがお揃いのバニースーツを着せられたり。
酔いに酔ったエリー先生に無理やり肩を組まれて、延々と愚痴を聞かされたり。
リゼもレオやウェイン班の皆と、少しずつ打ち解けてきたりもして――。
……そして、楽しかったパーティも終わりを迎える。
散らかり切ったパーティ会場を後にする、学院の生徒たち。
――明日はきっと、大掃除だな。
人も疎らになったパーティ会場の真ん中で、僕は小さくため息を付く。
この後一部の生徒たちは、場所を移して生徒たちだけでパーティをするらしいけれど……生憎僕は、参加するつもりはなかった。
僕は元々、そこまで社交的な訳じゃなくて。
そう言うのを見ていると、「これだけ大騒ぎして、まだ続きがしたいなんて、よくやるなあ」という感想しか出て来ないのだ。
そんな陰キャラも、この学院には一定数いるようで――僕以外にも、ぞろぞろと寮へと戻って行く生徒たちがそれなりにいたのだった。
それじゃあそろそろ、僕も帰ることにしよう。
そして僕は辺りを見回し、リゼを探すのだったが――。
「のうトーヤ坊、少しよいか? ちとお主に見て貰いたいものがあるのじゃが……」
突然背後から声を掛けられる。
振り返ると、そこには盆を両手に抱えたニトラ学院長がいた。
見て貰いたいもの? 一体、なんだろう。
そして僕は先ほど廊下で見た、ニトラ学院長の横顔を思い出す。
あれは、悪い顔だった……何かを企んでいるような、そんな顔だ。
僕は一瞬、嫌な予感が頭をよぎるが――その時には、もう遅かった。
「何ですか、僕に見て、貰いたい、物っ、て……」
ニトラ学院長が手に持つ盆の上には、小さな壺のようなものが置かれていた。
そして僕が壺を覗いたその時、突如として僕の呂律が回らなくなる。
――辺りに漂う、甘い香の香り。
これは、薬……? マズい――そう思ったときには、もう手遅れだった。
……頭の中がジンジンして、何も、考えられなくなる……。
そして、僕が意識を手放す直前。
ニトラ学院長は確かに、ニヤリと笑ったのだった……。
◇
――それから僕は、幻覚を見た。
僕の目の前には、銀髪の見目麗しい美女の、一糸纏わぬ姿。
そして僕は彼女と共に、本能のままに、乱れるのだった……。
◇
次に気づいた時は、ベッドの上だった。
蝋燭の灯りで仄かに照らされた、ムーディな雰囲気のベッドルーム……。
「裸……!? それに、なんでベッドの上に……」
「むっ……なんじゃ、もう正気に戻ったのか……流石は『異能殺し』といったところじゃのぅ。正直、もう少し楽しみたかったのじゃが……」
その声に、慌てて僕は周りを見回す。
隣には半裸のニトラ学院長が、同じベッドの上にちょこんと並んで座っていた。
ベッドのシーツで隠れてはいるが、ニトラ学院長も僕も、ほとんど何も身につけていない……! まさか、これって……!?
「ジ、ジル・ニトラ学院長っ……!? なんで僕の部屋にっ。それに、服も着てないし……! いや、よく見たらこの部屋、僕の部屋じゃない……!?」
僕は状況を確認するために、辺りを見回す。そんな僕の姿を、ニトラ学院長はニヤニヤした眼で見つめるのだった。
そして僕はある物を見つける。それはベッド脇のテーブルの上に置いてあった。
「これは、媚薬……!」
「うむ。催眠効果を持つ"マンドラゴラの根"を調合して作った特製の香薬じゃ」
あの時見せられた、壺の中身――それはなんと、マンドラゴラだったのだ!
マンドラゴラ……。僕もその名前は聞いたことがある。
小人の姿をした、幻の植物。その根には高い効能があると言われるが、土から引っこ抜くと悲鳴を上げ、その声を聞いた者は発狂するという……。
僕の大好きな『勇者の物語』の中でも、度々その名前が登場する。
物語の中盤――勇者は病に蝕まれた仲間を助けるために、とある魔女の元を訪れるのだが……その魔女が見返りとして勇者に要求した宝物の内の一つが、その『マンドラゴラ』であった。
マンドラゴラを抜くと発狂してしまう。無理難題と思われたが、機転を利かせた勇者は、言葉を解さない犬を使ってマンドラゴラを引っこ抜き、見事仲間の病を治したのであった――。
しかし魔女がマンドラゴラを求めたのは、それを使って、勇者を手中に収めるためだった――と物語は続くのだが、話すと長いので、この辺でやめておく。
とにかく僕が言いたいのは、マンドラゴラの根から作った薬は、この世のどの自白剤よりも強力だろうということだ。
まさかこんな使い方をするなんて、夢にも思わなかったけれど……。
「クックックッ、油断したのう。『警戒すべきは異能だけにあらず』というのは、お主も身に染みて分かっていたろうに……」
ニトラ学院長は、愉しそうに笑みを浮かべる。
まさに、してやったりという表情だった。
「さすがに『異能殺し』サマも、マンドラゴラを持ち出されるとは思ってなかったようじゃの~。ん~? ……じゃが、これも儂を誑かそうとした罰じゃっ! ほれほれ、お主の正体を握られた気分はどうじゃ~!? ククッ、もっとも、握ったのは『秘密』だけじゃないがの……♡」
……いや最後、とんでもない下ネタだなっ。
しかし、ここまでされるとは、流石の僕も想定外だった……。
実際に危害を加えるつもりがないということで、『暗殺者の洞察』も全く反応しなかったし……正直、完敗だ。
「しかし呆気なかったのう……魅了状態に陥ったお主は、儂の質問にあんなことやこんなことまで、言われるがまま答えてくれたぞ?」
そう言ってニトラ学院長は、ニヤリと笑う。
マンドラゴラの霊薬の効能は、麻痺、催眠、そして、媚薬……。
催眠状態に陥った僕は、トーヤは学院長に為すがまま。そして彼女に問われるがまま、答えさせられていたのだ。
ベッドの上で、くんずほぐれつしながら……。
薬に操られていたとはいえ、流石に恥ずかしくなってきた……!
この夜の記憶が、頭の中に蘇ってくる。
本能に動かされるまま、何度も互いを貪りあう僕たちの姿……。
口では仕返しだと言っているけれども、後半はどう考えても楽しんでいるとしか思えなかった。
僕が喋らされている間も、褐色の少女は僕に向けて、様々な『奉仕』で僕の快楽を引き出そうとするのだ。
まるで、伝承の中の淫魔か何かのように……。
そのおかげで、一夜にして経験豊富になってしまった……。
「ククッ、色々聞かせてもらったが……どうやらお主、小さい頃から中々の苦労をしているようじゃの」
「おかげさまで、現在進行形でね……!」
ニトラ学院長の言葉に、僕は精一杯の皮肉で返す。
僕なりの強がりだったのだけれど、しかしそれも、彼女を喜ばせるだけ。
全くとんでもない人だ、この人は……!
「しかし流石は元暗殺者。毒に耐性があるのは驚きじゃったが……マンドラゴラの毒には耐性はなかったようじゃの♡ ククッ、見事に魅了されておって……あれだけ情熱的に求められたら、儂も年甲斐も無く燃えてしもうたわ♡」
ニトラ学院長は、思い出したようにウットリとした表情で言う。
そしてその後も、僕はニトラ学院長に散々弄られるのだった。
「先ほどのお主のがっつき振り、可愛いかったのぅ……よっぽど溜まっていたのじゃな……あれだけのモノを持て余すとは、お主はどれだけ奥手なのじゃ! アレを見せられて、靡かぬ女子はいなかろうに……」
――つんつん。
ニトラ学院長は面白い玩具を見つけたかのように、ピンとした指でつつく。
「~~~~っ!」
「クックック、どうやらお主のような童貞には、ちと勿体無い物のようじゃのぅ。せっかくの御立派様も、頼りない御主人様に泣いておるぞ?」
「ほれ、やはり、えーん、えーんと涙を流して泣いておるではないかっ」
「いくじなし♡」
「甲斐性なし♡」
「ざーこざーこ♡」
ニトラ学院長は、意地悪い顔をして、僕の耳元で延々と囁いてくる。
我慢、我慢……僕は平常心を保ち、何とか自分を抑えていたのだが……。
――もう、我慢の限界だっ……!
挑発するように、延々と甘ったるい声を聞かされ続けた僕の我慢が爆発する。
こうなったら、僕も反撃してやるっ……!
ついに我慢の限界になった僕は、ニトラ学院長をベッドの上に押し倒す。
「ククッ、威勢が良いのぅ。どうせ、何もできぬくせに……」
「僕だって、ここまで言われて黙っていられるほど、お人好しじゃ有りませんよ……!」
「……♡」
そして、しばらくして――
二回戦を終えた僕は、ベッドの上でぐったりと息を切らしていたのだった。
肩で息をする僕に対し、しかしニトラ学院長は余裕の表情である。
「ククッ……童貞を卒業したばかりの小僧には、儂の相手はちと、荷が重すぎたようじゃのぅ。……ま、若さ任せというのも、中々良い物じゃ。ククッ、愉しませて貰ったぞ♡」
ベッドでぐったりしている僕を見て、余裕の笑みすら浮かべている。
やってしまった……薬を盛られて初体験を奪われて、ヤケになっていたのもあると思う。
けど……ニトラ学院長は、とにかくスゴかった。
僕だって年頃の男子なわけで、その、自分ですることはあるけれど……気持ち良さは、その比じゃなかった。
『感覚の遮断』――本来なら痛覚に対して使うモノを、快楽に対して使わされるとは……
しかし驚くべきは、ニトラ学院長の恐ろしい性豪ぶりである。
僕だって、スタミナには結構自信があるというのに。やっぱり、ベッドの上でのスタミナは別なのだろうか……。
僕の正体を知られて、その上ベッドの上でも翻弄されるなんて……。
とにかく――このまま負けっぱなしというのは癪だ。
「ハァ、ハァ……ニトラ学院長、一つだけ……質問してもいいですか?」
僕は何とか息を整えて、ニトラ学院長に問いかける。
「ん? なんじゃ? ククッ、性技の手ほどきを受けたいというのなら、いくらでも受けさせてやろうぞ♡」
ニトラ学院長は、ノリノリで僕ににじり寄ってくる。
「いやいや、これ以上貴女の相手をさせられたら、さすがに死んでしまいますって……! とにかく、僕が聞きたいのは別のことです。それは――ニトラ学院長、あなたの正体についてです」
「……ほう。儂について、何が知りたいのじゃ?」
そして僕の一言に、ニトラ学院長の雰囲気が一変する。
先ほどまでの淫靡な雰囲気から一転して、真剣な表情へと移り変わる。
間違いない。僕は核心をついている。
「貴女の正体――それは、『背徳の魔女』ですね?」
そして僕は、その名前を告げるのだった。
――背徳の魔女。
かつて『勇者の物語』において、始祖ウィルに『マンドラゴラ』を要求し、勇者を手中に収めようと画策し、そして勇者に敗れたという……。
その、背徳の魔女である。
――なぜ、ニトラ学院長がマンドラゴラから作った霊薬を持っていたのか。
――なぜ、長命で有名なエルフ族とはいえ、千年近く昔の人物である『名工クオン』と直接の知り合いなのか。
ニトラ学院長が背徳の魔女であるとしたら、全て説明がつけられるのだ。
マンドラゴラの効能は、多岐に渡る。
麻痺、催眠、そして、媚薬……。
そして、その"果実"から得られる最大の効能――それが、『不老不死』。
勇者に敗れた背徳の魔女であったが、彼女は既にマンドラゴラの霊薬によって『不老不死』となっていたという。
勇者は魔女を殺すことができず、結局、深い井戸の底へと封印した――それが、『勇者の物語』における魔女の末路だったはずだ。
そんな彼女が、なぜ勇者候補生を育成するカルネアデスの学院長の座に就いたかは知る由もない。
ただ……ニトラ学院長は僕の言葉に、嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「なるほど、なるほど……。クックック、どうやら、ちとサービスしすぎたようじゃな。……いかにも、儂はかつて、『背徳の魔女』と呼ばれておった」
「そんな儂が、なぜこのカルネアデスの学院長を務めているか、不思議そうな顔をしておるの。……ククッ、別に難しい話ではない。後世に伝わったこと、それだけが真実ではない、というだけじゃ」
「……儂には、あの娘に救われた恩がある。だから儂は、あやつの生まれ変わりがこの地にやってくることを、ずっと待っておったのじゃ」
「そして、ようやく表れた【剣聖】の異能……それが、リゼ・トワイライトじゃった。正直、あのリゼという娘がそうであるかは、儂も分からぬ。ただ……儂はそうであって欲しいと願っておる」
そう言うニトラ学院長は、どこか遠い目をしていた。
しかし……そんなしんみりした時間は、長くは続かない。すぐに元のニトラ学院長に戻ると、意地悪な表情で僕ににじり寄って来るのだった。
「……それで、どうじゃ? 乙女の秘密を暴いた感想は? ん~? まさか、無事で帰れると思っておるのではなかろうな?」
マズい……っ!
急いで逃げようとする僕だったが、恐ろしい力でニトラ学院長に押し倒されると、ベットの上に押さえつけられる。
形勢逆転。今度は一転して、僕が押さえつけられる番だった。
そしてニトラ学院長は、ゾクりとするほどの甘い声で言う。
「ククッ、第三ラウンドの開始じゃ……♡ この儂の秘密を暴いた罪、たっぷりと体で味わってもらうぞ……♡」
その一言に、僕は死を覚悟する。
そして始まる、夜の『第三ラウンド』。
僕を待っていたのは、ベッドの上で繰り広げられる、めくるめく快楽地獄だった。
――まるで千年もの時を生きているとは思えない、すべすべとした吸いつくような"きめ細かい肌"。
――ベッドの上を舞う、豹のようにしなやかな、引き締まったボディライン。
――褐色の肌に映える、控えめな薄ピンク色の突起。
――小柄な体から想像できない、安産型のセクシーなお尻。
ゆらゆらと揺らめく蝋燭の灯りに照らし出される、"魅惑の肢体"。そしてそこから繰り広げられる『快楽の渦』に、僕は為すすべなく飲み込まれていく。
そして――ようやく解放されたときには、こってりと搾り取られ――まさに精も根も尽き果て、学院寮の自室に戻るのがやっとという有様だった……。
そして……なんとか学院寮にたどり着くと、自分の部屋へ。
なるべく音を立てないように扉を開くと、部屋の中に入る。薄暗い寝室では、リゼがスヤスヤと寝息を立てていた。
ううっ、やってしまった……。僕は頭を抱えて、ベッドに潜り込む。
――ばたり。そして僕は、気を失ったように眠り込む。
こうして、長かった一日は終わりを迎えたのだった……。




