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入学式



「えへへ~、美琴と学生生活~」

「くっつかないで、ただでさえ里沙のライフル背負ってて重いんだから」

「むぅ、それは申し訳ない」


 私達は桜の並木道を二人並んで歩いている。

 武装がハンドガン、投げナイフ、折りたたみナイフの私に対して里沙はリュックサックに隠した組み立て式のマークスマンライフルだけ。ただそれは今私が背負っている。

 スクールバックを左肩に、背中にリュックを背負っているの、明らかに荷物持ちって感じで周りからの目を気にしてしまうけれど、朝里沙が背負って歩いていたら肩が擦れるのが痛そうにしてたから、仕方なくだ。里沙に限っては無いだろうけど、いざと言うときにそれで狙撃の精度が落ちるのは問題だし。


「ていうか里沙、着崩すの早くない?」

「だって、きつくて苦しんだもん。誰かさんがいつも揉むから」

「いつもって程じゃないし揉んでっていうのは里沙でしょ」

 

 これから入学式を控えているのにも関わらず、里沙は既に胸元のリボンを緩め第一ボタンまで開けている上スカートも腿を晒す様に短く折られている。低身長だからか、すこしかがんだりして胸元が緩めば里沙の谷間が見えてしまうし、それでなくてもシャツが胸に押されて若干きつそうにしている。

 超敏感肌の里沙には申し訳ないが、我慢してもらうしかない。いきなり往来で服を脱ぎかねないからね。

 なんて会話をしていると並木道が開けると同時に大きな建物が視界に映る。


「おー、資料では見たけど実際に見ると迫力だね~」

「だね、しかも綺麗だしこれなら人気な理由も分かるよ」


 私立西横浜聖稜せいりょう学校。


 九条院家を筆頭に名だたる財閥やお金持ち達が出資し建てられた校舎は、まだ10年も経ってない為陽の光を鏡の様に反射させている様な清潔さがある。

 出資者の通り、お金持ちの子達が多く通う学校だが、余程学力と素行が悪くなければ一般的な家庭の子でも通える程度の学費だし、特待生制度や奨学金制度も積極的に取り入れている為余りお金持ち学校と言う感じはしない。

 

 それは当たり前で、この学校が建てられたコンセプトが『安全に、一般家庭の子の価値観や視点を同じ環境で知り、極一般的な学生生活を送らせたい』という親心に基づくものだからだ。


 その為、小説等である親の権力を笠に一般学生に横暴な態度を取る。見たいな展開は無いらしい。


 絶対にない、と言う訳でも無いらしいが、予め葵さんに調べて貰った限りでは目立った諍い等は無く極々普通で平穏な学校らしい。

 真面目に勉強して、楽しく友達とおしゃべりして恋に恋して。見たいな普通の学校風景らしく、文学や想像の上ででしか知らないそんな学校生活に、私の心は踊ってしまう。


 校門の前に辿り着くと先輩であろう胸元のタイやリボンが赤い人たちが、笑顔で新入生である生徒に白い造花を手渡している。


「ちょっと里沙止まって、せめて服装整えよう」

「えー?きつくて苦しいんだけど…」

「我慢して、あんまり目立つわけには行かないし」

「むぅ」


 入学初日から悪目立ちするのはあまり好ましくない。

 胸元をきつそうに張らせる里沙の第一ボタンは開けたままリボンを緩く締め、少しでも見栄え良くしスカートもせめて膝上位までに下ろす。

 完全に真面目。とは言わないが許されるであろう程度に着崩し、実際周りを見ても多少は着崩している生徒はチラホラ見かける為、それに合わせる様にし、若干苦しそうにする里沙の手を取り歩みを再開する。

 その際里沙が指を絡めてきたが、緩く握り返すだけで無感動に視線は校門に向けたまま歩く。


「おはよう、入学おめでとう」

「おはようございます」

「はい、新入生はこれを胸にさして誘導に従って体育館に向かってね」

「はい。いくよ、里沙」

「おっけー、先輩お疲れ様です!」


 元気そうに胸に花を挿してくれた女先輩に労いの言葉をかけ、少し先に進んだ私の元へ小走りで駆け寄る。そんな里沙をお礼を言われた先輩はニコニコと笑顔を浮かべながら控えめに手を振って見送っている。


 私達は二、三世間話をしながら、誘導の生徒に従い喧騒の中大きな体育館の前に辿り着き、中へ入ると檀上手前に並べられたパイプ椅子に順番に着く。


「ほぇ~、おっきいね~」

「そうだね、でも窓が多いからちょっと不安かも」

「あ~、割と死角多そう。ちょっと高い場所から狙われてもかがめば何とかなるかな」


 私と里沙は喧騒に埋もれるのが良いことに小声で人には聞かせられない会話を繰り広げる。だが大事な事だ、敵が居ると知っている状況であらゆる状況を想定するのは当然だし、予め地理や建物の構造を頭に入れていたが実際に見て、それや直感と照らし合わせて避難経路や警戒線を想定するのは必要な事なんだし。


 私達の周りは友人知人と話す新入生で囲まれ、姦しく話し声が空間を支配するが、規定時間になったのか、静かに音楽が鳴りだすと喧騒も止みだす。


 私達も周りに沿うように姿勢を正す。

 すると入学式の開始の声が響くと共に式が始まる。

 少しだけ楽しみな気持ちを抱きながら、私は視線を光集まる壇上に向ける。



◇◇◇◇



「ふぁ~…詰まらなかった~」


 式が終わって私達は誘導に従いながら自分の教室へ行進する。

 隣ではうたた寝していた里沙が大あくびしていて、内心私も同意する。

 何となく楽しみにしていた気持ちは、割と序盤で入った各財閥からの代表者のお祝いの言葉で萎えてしまった。

 途中から思考にふける事で暇を潰しては居たが、結局長く感じる式の中早く終わる事を願うばかりだった。


「お、此処じゃない?1-A組って」


 そうやってしている内に教室に辿り着き、正面の黒板に張られている座席表を確認する。


「やった!美琴の隣だ!!」

「いや…それはいいんだけど」


 座席を確認して割り振られた席に着く。

 月島のつの私は左手後ろ寄りの席で錦戸のにの里沙が私の左隣。

 それは良いのだが。


「肝心のあの子と遠いじゃん」

「あ……」

 

 護衛を担う以上、対象に近い方が良いのだが頭文字順で並ぶ席順では接点が無さすぎる。いやまぁ、作ろうと思えば作れるのだがやはり自然に友人に成るためにはやはり席が近い方が良い。とりあえず美野里さんにそこら辺聞いてみよう。


 美野里さんにニャルイプでメッセージを飛ばすと直ぐに返信が来る。


『なら……こうして……こう言って……こうするのがいいよ!!』

「忙しい中すいません、ありがとうございます」

『ノープロ!きっかけ作り頑張ってね!!』

「すまんすまん!ちょっと遅れた。……全員いるな?それじゃHR始めるぞ、とりあえずプリント配るからこれを後ろに回してくれ」


 そうやって美野里さんから助言をもらっていると時間になったのか、先生が入ってきて年間の行事表やら直近にあるイベントや保護者への連絡事項や、奨学生や特待生への連絡、学校についての事についてなどそこそこの数のプリントが回される。


 三年間通えるかは分からないから、直近の数か月辺りの行事予定にざっと目を通す。


「よし、これで全部だ。全員回ったな?それじゃ、まずは遅れたが入学おめでとう、この学校で三年間、思い出に残るような青春を送ってくれ」


 先生が黒板に自分の名前を書く。


「よし、とりあえずまずは定番の自己紹介と行こうか」


 こうして私の高校生活が本格的に始まった。




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