暗殺者VS極道者
ウォーミングアップを終え、いざ試合に向けてチーム分けが始まる。
「よし、初日だしとりあえず試合するからチーム決めるぞ!とりあえずやる気ある奴は挙手。運動が得意な奴と苦手な奴は試合しない様にするから、苦手だったりする奴は手を上げなくて良いぞ。あぁ、別にこれで評定は変わらないから、お前らも気分よく行きたいだろ?」
先生は無責任ともとれる発言をするが、実際かなりいい試みだと思う。
運動が得意な子と苦手な子、それが一緒のチームになっても良くも悪くも熱くなりやすい運動は、そういう場合温度差が出来お互い良い気分にならないだろう。
それなら初めから住み分けさせれば雰囲気を悪くすることも無く、動ける子達は水をさされる事も無く熱くなれ、動けない子は軽く身体を動かす程度の気楽さでのんびり楽しめる。
他がどうかは知らないけれど、私はこの住み分けはとてもいいと思う。
先生の声に従って手を上げた生徒の数は半数、全員運動に自身がありそうな生徒たち。その横で東城 夏樹が手を上げるのを見て私も手を上げる。
「ほう、積極的なのが半分、それ以外が半分。丁度2、2で組めるな。それじゃ、とりあえずグループリーダーを各四人決めて貰う。やりたい奴居るか?」
その言葉ににわかにざわつく。
当然皆バスケ部の子がやるものだと思っていたが、最初に手を上げた人物は、まぁ予想道理の人物だった。
「はい」
「東城か、お前はさっきも手を上げてたな。積極的な方のもう一人のリーダーは誰がやる?」
東城 夏樹が手を上げた。
別にここで私が手を上げなくても、彼女の相手の班に入ればいいだけなのだが、東城 夏樹が挑発的にこちらを一瞥する。
手を上げなくてもいちゃもんは付けられないだろうが、あの手の人間は満足いかないと機嫌を損ねるしいつまでも付き纏ってくる、なら一度完全に叩き潰す勢いで満足してもらう他ない。
「はい」
「お前は、月島か。これで2チーム埋まったな」
おお。と歓声が上がり、前に踊りだす。
経験者や運動が得意な者が集まるチームは二つに別れる。
月島 美琴率いるバスケ部2、弓道部1、水泳部1。対、東城 夏樹率いる陸上部2、ソフトボール部1、新体操部1の組み合わせになった。
「時間も無いしもう二チームは好きに組んでくれ。それじゃ、試合やっていこう!!」
急かされるように私達はビブスを着込む。
因みに里沙と九条院 純花はお互い敵同士。
「乗ってくれると思ったよ。お陰で楽しめそうだ」
「あんなに熱烈な視線を寄こされたら、流石にね?」
私はオレンジのビブスを、東城 夏樹は青いビブスを着けてコートの中央に整列する。
「私が勝ったら色々教えて貰うね」
「良いさ、だけどあたしは勝ったら貰うから」
「それは私の一存では何ともなんだけど」
「なに、その時は貸し一つって事で良いさ」
周りに生徒が居るから明確な言葉は使わずに会話する。
試合開始の用意が始まり、お互いジャンプボールの体勢に入る。
視線が交差するが、ボールが投げ上げられると共に顔を上げる。
ボールが静かに上がり、空中で一瞬止まると落ちだす。その瞬間私達は跳ね上げる。
「っし!!」
「ちっ!!」
ジャンプボールは僅かに先にボールに手が着いた私の勝ち。
打ち出されたボールは東城 夏樹の背後に落ち、バスケ部のツーブロックの子に渡り流れる様にドリブルに入る。
そのまま流れる様に正面に対峙する二人を抜き、軽快なドリブルでゴール下まで駆ける。
しかし彼女の前に立ちはだかるのは新体操部のツインテールの子。見事な割り込みのディフェンスで足踏みし、その一瞬の隙をついてボールを奪おうと手を伸ばす、が直ぐに後ろに飛びながら右手に駆けたもう一人のバスケ部のミディアムボブの子にパスを出す。
パスを出され受取ろうとしたミディアムボブの子の前に割り込む影が。
「貰い!!」
「あっ!」
東城 夏樹だ。
彼女はボールを奪うと豪快にボールを弾ませながら反対側の私達のゴールへ走る。
「させない!」
「ちっ、早いな」
「どうも!」
すぐさま私が張り付き、圧を掛ける。
東城 夏樹は一度足を止め、軽快なドリブルで巧みに前へ進む。身体を一回転させたりフェイントを入れながら先へ進もうとするが、私はその全てに対応して道を潰す。
「邪魔っだな!」
「っ!?」
東城 夏樹は一つ悪態をつくと勢いよく足を止め、視線を私の後ろへ向ける。
上に飛び跳ねると見せかけて腕だけで足元にボールを出し、後ろのソフトボールのベリーショートの子にパスを出す。
ギリギリ、反応が間に合って指先が触れたお陰で軌道がそれ、水泳部のお団子の子が奪い、コートの中央、少し相手チームよりの位置に居た弓道部のポニーテールの子に渡る。
が、彼女がボールを受け取って振り返るも、彼女の目の前には新体操部とソフトボールが立ちはだかっている。
弓道部の子は後ろを一瞥するが、直ぐに視線を前に戻し、ボールを胸に抱え、膝を折る。
「中る」
「っ!!止めろ!!」
東城 夏樹の声が響くのと彼女がボールを掲げながら膝を伸ばしたのは同じタイミングだった。
ボールはディフェンス二人の手を飛び越しながら、大きく弧を描きゴールへ向かい、静かにゴールへ落ちた。
「オレンジに三点!3on0」
「やったぁ!!」
「ナイッシュ!!」
「センターからフリーってマジか」
弓道部の子が小躍りしながら喜び、それをチームメイトが褒める。
「良いじゃん、盛り上がってきたじゃん」
「私もがんばろ」
笑みを深める東城 夏樹の横で私は気合を入れ直し、ゴールを褒めながら体勢を整える。
ボールは既にゴール下でソフトボールの子の手に渡っている。
ソフトボールの子の前にはバスケ部のツーブロの子が距離を開けて待っている。
それだけではなく、全員がセンターより手前におり私達は彼女たちの横に佇む。
何処にボールを出すか、いつ横の青ビブスが飛び出すか、一瞬の緊張の中私の横で東城 夏樹が笑みを深める。
「速攻!!」
「っば!!下がれ!!」
「お願いっします!!」
東城 夏樹が叫んだ瞬間、コート両端に陣取っていた陸上部二人が同時に私達のゴールへ駆け出す。
それと同時にソフトボールの子が叫びながら、大きくボールを振り被って遠投する。
反応が遅れた私は急いで反転するが、ぴったりとくっつくようにとなりを走る東城 夏樹に邪魔されてトップギアを出せない。
その合間に、陸上部のサイドテールの子がボールを拾いドリブルを行う。
完全なフリーではない、後ろ寄りで守っていたバスケ部二人が後ろについていて、直ぐに横に張り付く。
彼女は行く手を遮られ、もう片方の右手に居た陸上部のミディアムボブの子にパスを出す。
ミディアムボブの子はボールを受け取り前に出ようとするが、直ぐにバスケ部のツーブロの子がディフェンスに入る。
思う様に前に出れない彼女は一瞬の隙をついてディフェンスの脇を抜け、シュートフォームに入る。
「左手は添えるだけ、左手は添えるだけ」
そのままボールは彼女の手を離れ、ゴールへ落ちる。
そのまま綺麗に入るかと思ったが、軽快な音を鳴らしリングに当たり跳ね返る。
「あっ!」
「リバウンド!」
良かった、と一息つく間もなくバスケ部のツーブロの子の声が響き、直ぐにゴール下に集まる。
ボールはリングに跳ね返り、ゴールから落ちていく。
誰もがタイミングを見て、飛びつこうとしたタイミングで後ろから一つの影が飛び出す。
「おっらぁ!!」
東城 夏樹は誰よりも勢いよく飛び出し空中でボールを片手で拾うと、なんとそのままダンクシュートを決めこむ。
ゴールを豪快に揺らしながら、リングにぶら下がる彼女は地面に降りると私に挑発的な笑みを向ける。
「青チーム2点!!3on2!!」
「やったぁ!!東城さん凄いかっこよかったよ!」
「ヤバい!めっちゃこの試合ヤバい!!」
滲んできた汗をぬぐいながら、意識を切り替える。
負けっぱなしは性じゃない。次からは私が勝つ。
未だ活躍できない事へ焦りながら、東城 夏樹の挑発に乗る。
いつの間にか本気でこの試合を楽しみだしていた。




