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女子高生は忙しい。



 2023/4/01


 入学式。

 無事入学し、護衛対象である九条院 純花と接触、連絡先の交換など、無事友好関係を築く。

 学校は11:30には終了。その後、私、月島 美琴と錦戸 里沙は九条院 純花と東城 夏樹両名と共に駅前のアミューズメント施設にて親睦会を行う。

 18:30には九条院 純花は門限を理由に帰宅。その後東城 夏樹も並ぶように帰宅。

 護衛開始一日目、異常なし。


 2023/4/02


 授業開始。

 各授業で学力を図るテスト開始。学力は問題なしと自己分析。同僚の錦戸 里沙は勉強の必要あり。

 昼食時間含め、休み時間は主に私、月島 美琴と錦戸 里沙、九条院 純花と東城 夏樹で過ごすことが多め。

 個人的要望。東城 夏樹の舎弟を名乗る早乙女 雄一についての調査を求。

 理由。彼の情報収集能力が16歳のそれとは思えず、また極道筋の者にしては女性や女性の好む流行やそれ関連に偏っているようにも思える。場合によっては有用な情報源に成り得ると愚考する。

 護衛二日目、異常なし


 2013/4/03から2013/4/09日までは平穏な学校生活と、四人で仲睦まじく生活する様子が描かれている。


 2013/4/10


 戦闘発生。

 九条院 純花を狙う殺し屋3名を発見、即時排除。それぞれ別口での依頼の様で組織的行動は見られず。幸い、三流の殺し屋であったが、状況開始に伴い警戒レベルの引き上げを進言する。

 備品要望。折りたたみナイフの取り寄せ。

 理由。現在使っているナイフでは耐久性と使いやすさに難あり。可能であればオーダーメイドでコンバットナイフの作成を請う。

 消耗品報告。拳銃用9㎜弾3発使用。

 護衛開始10日目、状況開始。


 2013/4/11


 戦闘発生。

 23:30。九条院 純花の自宅を強襲しようとしたK国工作員5名を発見、交戦排除。

 四名は私、月島 美琴が排除。残り一名が車両に乗り逃げた所を、錦戸 里沙が運転席を狙撃し排除。車は横転。やむを得ず事故に見せかけたが、細かい後処理をアライグマと五十嵐 葵に任せる。

 要望。九条院 純花の住居の転居を要請。少なくとも、もう少し監視のしやすい、又は人気の少ない位置への転居を要請。


 2013/4/12


 戦闘発生。

 13:00。九条院 峰典の護衛に佐藤 一夜、堂本 美野里両名が配置。

 九条院 峰典の元へK国工作員が武装強襲。月島 美琴、錦戸 里沙両名も急行、交戦。

 月島 美琴が二名を排除、錦戸 里沙が一名排除。一名は佐藤 一夜が拘束。残り一名は逃走、五十嵐 葵のサポートの元堂本 美野里が追跡、強襲してきたK国工作員の活動拠点を発見、特捜班総員にて強襲、掃討。

 消耗品報告。量過多につき、別紙にて記載。

 

 K国工作員からの圧力は収まる所を見せず、他敵対勢力の動向についての詳しい情報を求。

依然、警戒をゆるめる事叶わず。



◇◇◇◇



『敵総数5。南南西のピンクのパン屋脇に2人、北の駐車場のバンに三人。お姫様が近づく前に片付けちゃって~』

「了解。熊蜂、パン屋の方は任せたよ」

『りょーかーい』


 私はやる気の無さそうな声を無線越しに聞きつつ、襟を口元まで運び深くフードを被り、暗闇の中足を運ぶ。


 足音も立てず暗闇のなかを駆けると、数分もしない内に目標の駐車場に止められている黒いバンを目視する。


『あ、シェパード、悪いんだけどそこら辺監視カメラ無いから一応ドローン回してくれる?周りに無関係の人いないか確認しないとだし』

「だからそう言う事はもっと早く行ってくださいよ、オニクモ」

『テヘペロ』

『おばさんのテヘペロとかキッツ』

『ア?何か言ったか駄パイ』

『何も!!』


 思わず無線を切りたくなる衝動に襲われながら、私は胸元から三匹の黒アゲハを元にした蝶を取りだす。

 

 スイッチを入れ指先に載せれば瞬く間に羽ばたき始める。

 その姿はまさに本物の蝶そのものだが、実際は葵さんが作った偵察用ドローンで、こうやって監視カメラの届かない場所に投げて蝶に着いたカメラでしっかりと周囲の偵察をしてくれる。

 正直万能すぎて頭おかしい位に助かっている。


『シェパード~、オールクリア―、一般人の影ゼロ~。いつでも良いわよ~』

「了解です。聞いた?熊蜂」

『もっちー、こっちは何時でもおっけーだよ』

「10秒後に、9、8、7……」


 私はカウントを止め、バンに近づき、トランクのドアにブリーチング材を取り付けバンの側面に隠れる。


『3、2、1、ファイア』


 ボンッ!という音と同時にわずかに開いた後ろのドアに手を掛け中に向かって銃を構える。


 視界の先では三人の人影が動いていて、輪郭だけだが、明らかに冷静さを欠いている。

 が、そんなこともお構いなしに私は左手に握った銃の引き金を引く。


 バスッ!と一発の弾丸が撃ち出されると共に、運転席に居た人物の向こうのガラスに鮮血が咲く。

 直ぐに銃口をずらして二人目に向けた瞬間、二人目の人物はこちらに銃口を向けていて、私は身を捩じりながら指先を引く。


 身を捩じった私の、直前まで顔があった所を熱と共に弾丸が通り過ぎ、代わりに私が放った弾丸は撃ってきた人物の眉間を穿ち、大きくその輪郭がのけ反る。

 崩れた体制を立て直し、片膝を尽きながら素早く銃を構えると、視界一杯に三人目の人物が映りこむ。


 どうやら私に覆いかぶさる様に、車内から飛び出して来たようだ。

 その姿がスローモーションに見えて、まるで水の中に居るかの様に音が遠くなる。


 これは仕事中、偶にある現象だ。

 危機的な状況だったり、咄嗟の反射なんて時に起こる現象。

 全ての時間が引き延ばされた様な、まるで世界がゆっくりになったような感じ。


 原因も知らないし、好きにこの状態に入れる訳じゃないけど、こうなると私の頭は酷く冴え出して思ったように身体が動く。


 恐ろしくゆっくりとした世界の中で、私は身を屈め腰にさしたナイフを右手に逆手に構え、身体を捩じりながら振り抜き、飛び掛かってくる男の脇を抜ける。

 するとまるで糸が切れたかのように、突如世界が正しく回り始め。背後で何かが倒れる音と共に、身体の気怠さと共に私は素早く受け身を取り膝立のまま背後に銃口を向ける。


「う……あぁ……」


 しかし男の様子を見て私は警戒を少し緩め、立ち上がる。

 私が切り裂いた場所は頸動脈で、男は息も絶え絶えに、大量の血で池を作りながら虚ろな目をしていた。

 私はそんな男に近づいて、弾の無駄だとはわかりつつも念のため頭部に一発銃弾を撃ち込み、深く息を吐く。


「終わりました。熊蜂の方は?」

『余裕―、これで全部?』

『みたいだね~、しっかし最近多くな~い?大本の方も今だ人気耐えないらしいし、班長とJBなんて泣き言良いまくりよ~。繋げる?』

「いえ止めてください、煩いの分かってるので」

『右に同じー、JBからのグループメッセヤバいんだけど、仕事中でしょ?』

『今は事故処理中で、護衛の必要ないみたいでめっちゃ寂しがりながら鬼打してるよ~、笑う』

「とりあえず、私達は一旦戻りますね、アライグマ呼んでおいてください」

『もう呼んであるからも~まんた~い』

『ちょっと待って!エレベーター止まってんだけど!!ここ30階だよ!?オニクモ!!何とかして!!』

『え~?ババアだから聞こえな~い』

『ふぁぁぁぁっっック!!!』


 私は憐みの念を遠くのビルに送りながら、踵を返す。

 疲れた。

 

 ここ連日遅くまで仕事していて、昨日なんて敵の拠点に殴り込みに行ったんだから。それでなくても連日の戦闘で溜まった疲労が瞼を重くさせる。


 歩きながら、スマホを開くとグループチャットに幾つものメッセージが入っている。


『もぅ疲れた~!!飽きた~!!帰りたい~!!』

『仕事したくない~!!』

『……つか……れた……』


 JBというコードネームを使っているのに、誰が話してるのか丸わかりなメッセージにため息が出る。

一応、仕事中は誰が誰かを分からない様にそれぞれ割り振られたコードーネームを使ってるけど、唯一美野里さんと一夜さんだけは、自分でコードネームを選んで使っている。


 一夜さんは分かりやすく班長。この特務機動国防特選班の班長を担っている。

 美野里さんはJB。変装が得意だからスパイ映画から取った?と思うけど、本人によるとアクション映画の26から取ったらしい。


 因みに私は猟犬、シェパード。素早い動きとすれ違いざまに相手を攻撃するナイフ捌きから付けられたらしい。

 今もオーダーメイドで作られたコンバットナイフを右手に逆手で持っている。

 左手に9mmオートマチックハンドガン、右手にナイフの近接戦闘スタイルは嘗て先生に教えて貰ったもので、私が唯一誇れる、まったく誇って良いものでは無い技術だ。


 里沙は熊蜂。

 有り得ない長距離狙撃を成功させる狙撃術の高さと、見た目が何か似ているかららしい。あれか?低身長巨乳だからか?


 葵さんはオニクモ。

 オニクモの様に一瞬で網、比喩だが。を張る事が出来るのと昼夜逆転していて日中は一層だるそうにしている所から付けられている。


 まぁ、各々好きなコードネームを付けられながら、こうやって忙しい日々を過ごしている。

 ただ、少しずつ忙しくなっている日々に、更に帰宅する度に殺しをして不安定になった里沙を身体を重ねる生活に辟易としながら私は帰路を歩む。

 普通の生活の楽しさを味わったから、なおさらこの殺しの日々に辟易としながら。


 殺しをしていると感覚が遠くなる。

 ここが現実なのはしっかりと理解している。死んだら暖かなベットの上で優しい両親が迎えてくれるような夢ではないのだと嫌でも知っている。

 でも、こうして日々仕事をこなしていると、心が遠くに行くような錯覚に襲われる。まるで身体だけが現実を歩いてるような。


 今だけは、四人で過ごした何気ない、さして話の種にもならない普通の学校生活が恋しい。


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