酒池肉林(卑猥な意味はない)
イノシシ肉購入の話がまだ続く。
「ふぁへと、にゃああらためてイノジジ肉ごうにゅうずるよ~」
「「「はーい」」」
「というか舞羽、まだ鼻血止まらないのか?」
「にゃれのぜいでごうなっだとおぼってるの!?」
郁巳から指摘された舞羽は鼻に積めたティッシュを鼻息で飛び出しそうな勢いで言った。
「いや、和先輩やまりもちゃんはもう鼻血止まってるのに何でお前だけ止まらないのかって思って」
郁巳がそう言った直後に後ろから肩に手を置かれる感じがして振り返った。そこにはまりもがジト目で郁巳を見ていた。
「…郁巳先輩……」
「ん?何?」
「…アウトー」
「え!?何が!?」
「(ねえ、綾ちゃん。あれって字?それともわざと?)」
「(…舞羽先輩、察して下さい。時々空気を読まない肉兄の業を)」
「(あー、悪気が無いから更に達が悪いんだよね~)」
「(ですです)」
「(うん、分かった)」
「さてと、じゃあいくみんには支払いプラス千円追加でっと」
「何で!?俺、本当に何したの!?」
「あはは、…肉兄が悪い」
「……(こくこく)」
「あはははは…うん、まあ、ね…」
郁巳の感の悪さに女性陣から同意が一切得られないまま舞羽がスマホでイノシシ肉の購入サイトにページを移した。
「え~っと予算は六人、いや七人で二万一千円となるとお米千円、飲み物千円として一万九千円っと。え~っと大体いくみん、綾ちゃんが三百グラム、その他が二百グラム食べるとして…大体千六百グラムっと…あ、スライスしたので部位がロース、肩、モモ、バラがあるみたい。大体各五百グラムづつだから選べるのは三つまでだね。どこ食べたい?」
「「ロース!」」
「はい、お肉大好き琴乃葉兄妹のリクエストはロースと…他には」
「…部位言われてもよく分からない…です」
「ああ、まあ普通にそうだよね~」
まりものおずおずとした言葉に和がフォローした。
「えっとね、ネットによれば…ロースは何しても美味しい。肩は味が濃いが歯ごたえがある。モモは歯ごたえ重視、バラは脂が多いらしいよ」
舞羽がスマホを見ながら語った。
「じゃあ今回はロースと肩とモモかな」
「そうだね。それで良いまりもちゃん?」
「はい!はい!俺バラ食べてみたい!」
「いくみん達のリクエストのロース入れたからだめでーす」
「え~、けちー!ぶーぶー」
「いくみん!捌いてイノシシ肉と一緒に食べちゃうよ!」
「それは困る!イノシシ肉食べれなくなる!」
「(舞羽先輩はちょくちょく変化球だけど投げますね)」
「(さっきの事があったからスキスキ光線を躊躇いながらも撃ってるんだよ)」
「あら?そこのお二人もお肉になりたいと…?」
「なりたくないなりたくない!!お肉は好きだけどお肉にはなりたくない!!」
「悠季ちゃん顔が無表情でマジで怖いからやめて!!ごめんなさい!!」
「…舞羽先輩、話が進まないので取り敢えず話を進めましょう」
「はっ!そうだった。え~っと話を戻すね~」
「「「ほっ」」」
「あ、さっきの話は後でじっくりねっとりとお聞きしますね~琴乃葉兄妹と和せ・ん・ぱ・い」
「「「ひーーっ!」」」
「…舞羽先輩、はなしはなし」
「はっ!そうだった。じゃあお肉はロースとモモで。量は…ちょっと少ないけどロース五百グラム、肩五百グラム、モモ五百グラムの合計千五百グラムっと」
「えー!お肉少なくなるの嫌だ~」
「綾ちゃん、何を仰る。今回はご飯もあるんだからお肉少なめでも大丈夫だって。それに私達はそんなに食べれないから。ね、まりもちゃん」
「……(こくこく)」
「あ、そうだね。マーちゃんそんなに食べないものね」
「……(こくこく)」
「あはは、じゃあ会計っと……おっ、合計で八千五百円位だよ」
「意外と安いんだなイノシシ肉って」
「あはは。まあそれでも一人当たり二百グラムちょっとで千二百円、百グラム六百円強って考えたら贅沢だよ~」
「む、そう考えたらそうか…」
「まあ、たまに食べるから贅沢なんだけどね」
「お、それもそうか」
「うんそうだよ。…よし、じゃあポチるよ~」
「「「「はーい」」」」
「ポチッと。ほい、購入しました。あ、お肉は私の家に着くから」
「「「「はーい」」」」
「と言うことで大体合計一万一千円で六人で割ると…」
「はいはーい!」
「あ、和々先生復活したんですね」
「うん!金額聞いて復活したわ!んでここで先生らしく提案なんだけど~、あなた達は一人千円で残りは私が先生らしく出すわ!」
「「「「「えっ!?」」」」」
「えって何よ。一人千円で合計五千円。残り六千円は私が出しても残り四千円はお酒に回せるって寸法よ」
「「「「あ~……」」」」
「え?何その残念系を見るみんなの目は……」
「う~ん、実際少し残念なんだよお姉ちゃん……」
「え!?何で和ちゃん!だって四千円はお酒に使えるだよ!?得じゃん」
「いや実際にお姉ちゃんが使うお金が1円足りとも増減が無いって気付いてる?」
「………………」
「………………」
「「「「………………」」」」
皆がこの沈黙を重く感じた。
「…おほん」
「「「「「………」」」」」
「まあ、トントンでもお酒に割けるお金があるから問題ないのYO!」
「「あ~…」」
「何でいくみんと綾ちゃんは納得してるの!」
「いや~、何か身内でよく似た人がいるから…」
「だな~」
「あ、おば様か~」
「和先輩正解!」
「え!?綾ちゃん達のお母さんってそんなに飲むの?」
「えっとね…前に琴乃葉家で食べた時にすくりゅーどらいばー?とかもすこみゅーる?っていうのを飲んだって教えてもらったよ」
「え?レディーキラーばっか飲んでるじゃん!」
「れでぃーきらー?何ですかそれ和々先生」
「あー……うん、まあ知ってて損はないか。えっと~、『女殺し』通称『レディーキラー』は甘いのにアルコール度数が結構高くて調子に乗って飲むと酔い潰れるお酒の事よ。男と飲む時等でレディーキラー薦められたら気をつけてね」
「「「「「ほー」」」」」
「ってまだ二十歳にもなってないあなた達には少し早かったわね」
「いえ、大切な助言ありがとうございます和々先生。お酒を飲む時には気をつけます」
和がこの中の年長者として声を上げた。
「「「気をつけまーす」」」
舞羽、綾、まりもも同じ様に声を上げた。
「そこの男子も」
「はい?」
洋からいきなり声をかけられ郁巳はすっとんきょうな声を出した。
「女の子と飲む時にレディーキラー薦めるんじゃないよ」
「あ、はい。って言うか俺が女の子とお酒飲む事なんてこの先にも無いですよ」
「「「「それはない!」」」」
「え?」
郁巳は綾達女性陣からの否定にまたすっとんきょうな声を出した。
「あ…え~っと…いくみんさえ良ければ二十歳になったらお酒飲もうよ。ね」
「あはは、まあその時は私二十一歳だけどね」
「…私達はその時は二十歳になってないからもう一年待って下さい…ね…」
「肉兄がどうしても私と飲みたいなら皆でも飲もうよ」
「いいな。みんなで飲み会。楽しみだ」
「「「うん!」」」
「お、肉兄モテモテだね~」
「そ、そんなんじゃねえよ!」
「「「「あはははは!」」」」
「うんうん、青春だね~」
「和々先生も一緒に。ですよ」
「え?」
「和々先生も入れての家庭料理部なんですから一緒に飲みましょうよ」
「……青春じゃ~…」
「…和々先生、セイシュン時代なかったのですか?」
「私の同級生殆ど県外就職や結婚で飲んでくれる人いないんだよ~!」
「「「「「あー」」」」」
「みんなもその内そうなるんだからねっ!」
「「「「「あー」」」」」
キーンコーンカーンコーン
洋の言葉に皆が複雑な声を上げて今日のお昼休みが終わりを告げるチャイムが鳴ったのだった。
イノシシ肉購入。
そして近い未来のみんなの約束。




