年上として、兄として
食べ終わってから片付け。ちょっと気を抜いて羽目を外すとあっという間地獄へ
「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」
郁巳達は戴きますと同じく揃ってごちそうさまをした。
「じゃあ肉兄、片付けよろしく~」
綾がテーブルの上の皿を片付けもせずにテレビを見に行った。
「「こら綾(綾ちゃん)」」
そして母親と舞羽からの説教が始まった。
「…郁巳先輩、手伝います」
「おっ、本当?まりもちゃんありがとう」
「…いえ。使ったら片付けるのは当たり前です。ちゃちゃっと終わらせて綾を救出しましょう」
まりもはフンスと鼻息を荒くしてテーブルの上の食器を重ねていった。
「ははつ、本当にまりもちゃんは綾と仲良しだな」
「…はい、親友です…」
「まっちゃんは素直だね~」
茶化す和にも今お皿を持っていてツッコミを入れられず頬を赤くしてプルプルするまりもに郁巳は微笑んだ。
そして郁巳とまりもは食器等をシンクへ持って行った。
「え~っと、じゃあ俺が洗うからまりもちゃんは拭きをお願いするよ」
「…はい。了解しました。」
「よし。じゃあスポンジを湿らせて洗剤を付けて洗おう」
「…郁巳先輩、つかぬことをお聞きしますが食器を洗うのは初めてですか?」
「ん?いや。前に舞羽にレクチャー受けた位だよ。何か問題でもあった?」
「…いえ、逆に普通すぎるのでびっくりしました。ところで食器洗いで何を落とすのかは知ってますか?」
「汚れだよな?それ以外何を落とすの!?」
「…こほん、言葉が足りませんでした。汚れ、しつこい汚れとして油汚れが一番強いのです。油って残っておくと雑菌がついて食中毒、最悪入院にもなります」
「ああ、そう言えば前の時にも舞羽から同じこと言われたわ。まあ食中毒云々は言われなかったけど」
「…そうですか。でもそこまで気負わなくても大丈夫です。ちゃんと洗う。それだけしてれば問題無いです」
「…そうか。うん、分かった。…ちなみにだけど油汚れってどうやって落とすんだ?やっぱり洗剤だけなのか?」
「……」
「ど、どうした?」
「…いえ、郁巳先輩が洗い物について考えておられるのでビックリしました」
「お、おう…」
「…こほん、本題に戻ります。答えは間違いです。洗剤だけではなくもっと単純に出来る物があります。先輩、油の特性として何を感じますか?」
「ん?油の特性?…んん??」
「…先輩には少し早かった様ですね。答えはお湯です。お皿洗いでの油の特性として冷えて固まってるのです。なのでお湯で溶かして落とします。まあこれは油が少ない時でベトっと油汚れがある場合はキッチンペーパー等で落としてからが良いと思います。私のオススメとしては電子レンジで温めた後に捨てる事が多いラップを使って落とします。そうすれば一石二鳥です」
「油汚れは落としてから…。うん、勉強になった」
「…これで油汚れが強いのも安心して郁巳先輩に任せられますね」
「うおっ、…お手柔らかにお願いします…」
「…クスッ。お手柔らかにします」
「ふふっ」
そんな会話をしながら食器を洗って行ったのだった。
「終わった~」
「…お疲れ様です郁巳先輩」
「おう、まりもちゃんもお疲れ」
「…じゃあ食器棚に直しましょう」
そう言ってまりもは六枚の食器を持とうとした。
「おう。じゃあこっちだな」
そして郁巳は当たり前の如くまりもから食器を受け取り持って行った。
「…郁巳先輩、何気に気が利きますよね」
「ん?」
「…いえ、何でもないです」
「?そうか。あ、まりもちゃん、ごめん食器棚開けてもらえるかな?」
「…前言撤回。郁巳先輩は郁巳先輩でした」
「??」
「…さあ、ちゃちゃっと片付けて綾ちゃん救出といきましょう」
「ああ、そうだな。お母様はとにかく舞羽も小言多そうだもんな~」
「…多分その言葉、舞羽先輩が聞いていたら怒られますよ」
「…うん、聞こえてないだろうけどごめんなさい」
そう言いながらリビングへ戻ってきた。
「だから綾はダメなの。もうちょっとそういう所を直したら男女問わずモテるのに…」
「そうだよ!ボクなんてこんな感じだから男女問わずモテるんだから綾ちゃんだって出来るんだよ!」
「は、はい…」
「…郁巳先輩、気のせいか説教…と言うよりモテ話になってませんか?」
「そうだな…これはスゴい…」
「あ、いくみん、まっちゃんお疲れ様」
「…あ、和先輩お疲れ様です。…あの、何なんですかこれ?」
「何って…うん、最初は説教だったんだよ。でもね何故かおば様の過去のモテ話になって悠季ちゃんのモテ話も追加されて気がついたらあーちんがどうやったらモテるかという話になってきてる。うん、私も何言ってるか訳が分からないよ」
「とりあえず…舞羽達を止めてきますね」
「あ、うんお願い。私がしゃしゃり出ると巻き込まれそうでどうしようもなかったから」
「俺がしゃしゃり出ると俺まで巻き込まれるのが分かるけど…」
郁巳は腹をくくり母親達の方へ行った。
「お母様、舞羽。もうそろそろ良いじゃないか。綾も反省してるみたいだし」
「肉兄…」
綾が少し涙目で郁巳を見た。
「でもねいくみん!綾ちゃんだって女の子なんだから」
「はいはい、そこは本人だけが判断するのであって本日でない外野がとやかく言う必要は無いんだって」
「でもね郁巳。私の娘だからやれば出来る子なのよ」
「でももへちまもありませんお母様。綾も綾なりに考えているんですから。そこは綾自身に任せて良いと思いますよ」
「「でも郁巳」」
「自分の事を自分で無い人がとやかく言う義務はありません!貴女達もそれは承知でしょう!」
「…」「…」
「だから…綾の成長を見守りましょう。ね」
「…ん、んん。そうね。綾の成長を見守られるのも親としての楽しみでもあるものね。ごめんなさい綾。ちょっと意識し過ぎてて」
「ごめん綾ちゃん。ちょっとオーバーヒートしてた…本当にごめんなさい!」
「あ…ううん。私こそ食器片付けなくて人任せてにしてごめんなさい。ごめん、肉兄。そしてありがとう」
「おう、妹の為だからな。兄として当たり前の事をしただけだ」
「肉兄…」
「さてと、皆帰らなくて大丈夫か?もう時間が良い頃だぞ」
「あ!そうだ!もう帰らないと」
「そうだね。宴もたけなわだけど、もうそろそろお開きにしましょうか」
「…じゃあ帰りますか」
「おう。じゃあ皆送って行くよ」
「あ、肉兄。私も行きたい」
「じゃあ行くか。じゃあお母様行ってきます」
「「「お邪魔しました。お休みなさい」」」
「皆、お休みなさい」
そうして郁巳と綾は舞羽達を送って行った。最後に和を送って郁巳と綾は二人で幼い頃の話をして笑いあって帰路に就いたのだった。
綾にとっては兄として、まりもにとっては年上としての気遣い。郁巳、ポイントアップ。




