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不器用すぎる恋のレシピ ~料理スキルゼロから始まる彼女たちとの恋愛ストーリー~  作者: 睡眠の精霊ぽち。
第一章「料理初心者としての一歩」
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失敗は成功のお母様

時間は遡り一年前。初心者の二人は果たしてハンバーグを作れるのか?

 綾はハンバーグの種を見てため息をついた。


「さてと、これどうしよう…」


「どうしよう……ってハンバーグの形にして焼くだけじゃないのか?」


 郁巳は“何言ってんがこいつ?”という顔で言った。そうしたら“うわっ、何言ってんのこいつ?”という顔で綾が見返した。


「えっとね、焼き方だって強火から弱火、強いてはとろ火なんてのがあるんだから“ただ焼けばいい”なんてことはないの!分かる!?Do you understand?」


「お、おう。イエス、アイドゥ…」


 綾の歯に衣着せぬ口調に郁巳はたじろぎながら堪えた。


「んまあ、私もハンバーグの焼き方なんてもの知らないんだけどねっ」


「はあ……って、はあ!?」


 茶目っ気に舌を出しながらウインクする綾に再び衝撃を覚える郁巳。


「お前知らないのに強火やとろ火なんて言ってるの!おいこら、さっき俺を怒った事を謝れ」


「ごめんチャイ♪」


 悪びれる事なくハニカム綾に郁巳は呆れながら言い放った。


「じゃあ焼くのは綾に任せる」


「はあ!?何で私が!私料理したことないよ!」


 綾は不満タラタラに郁巳に言葉を投げつける。しかし郁巳は満面な笑みで親指を立てた。


「大丈夫だ綾。俺の方がない!」


「格好つけるタイミングじゃないわー!」


「とりあえずだ、種作りまでは俺がしたんだから焼く位は綾がしてもバチが当たらないんじゃないのか?」


「あー!面倒くさい焼きを私に押し付けようとしてるー!ずーるーい!」


「キーキー喚くな!」


「キーキー!」


「…お前どうでも良くなったな……」


「てへっ」


「ふぅ、疲れる……」


「それは私のセリフ~……ふふっ」


「……ぷっ、ふふふ」


「「あーはっはっはっはっはっ!」」


 お互い顔を見て言いたいだけ不満を言ってスッキリして笑った。そして郁巳は先に行動し始めた。


「んじゃあ、焼きは任せるから形作っとくわ」


「オッケー郁兄!……ところで、形どんなのにするの?」


 フライパンを用意していた綾が何気に聞いてきた。うん、形大事だからね。


「どんなのって楕円形じゃないのか?普通」


「んー、ならいっか。いや、肉兄だから俵型とかしてかじりつきたいのかなーって。って何“お前天才か!”みたいにこっち見てるの!」


「綾、お前天才か?」


「だからそういうのは良いって!普通!普通に楕円形にして!」


「お、おう…そうか……良いアイデアだと思ったのだけどな…」


 綾の必死の願いが通り郁巳は歪ながら楕円に形を整えていった。

「綾、出来たぞ」


「うん、ありがと肉兄。……ってちょっと肉兄さんや」


 整形し終えてハンドソープを手でプッシュしている郁巳に綾がジト目で話しかける。


「この他のより少し大きいのは……兄のかい?」


「おう!もちろんだ。お肉大好き兄さんだからな」


 今日何度目かの満面な笑みで綾にサムズアップする郁巳。それに対しいつもなら怒る綾だが今日は反応が少し、いや、全く違った。


「ふーん。そっかそっか。肉兄のか~」


 意味深にフライパンに油を注ぐ。


「お、おう……」


 いつもと違う反応に戸惑いながらも「じゃあ後は任せた」と言って居間に行く。



 午後5時半、郁巳はこの時間に見たい番組がなくポチポチとチャンネルを替えていった。ふと料理コーナーのチャンネルで手を止めた。料理初心者であろうアナウンサーがハンバーグに挑戦した後だった。


「では、二人分の材料のおさらいです。牛肉200g豚肉100g。両方共ミンチです。無かったら合挽き肉で良いです」


 郁巳は“合挽き肉”が解らないなりに聞き入った。


「玉子1個、玉ねぎ1/2個、パン粉15g、パン粉は予め牛乳か水で軽く湿らせておいて下さい。後は塩、コショウ適量でーす」




 郁巳は材料の説明に「は?玉子?なんで?パン粉?何故に?」と疑問を浮かべながらテレビに耳を傾けた。


「では先に玉ねぎをみじん切りにして耐熱皿に移しラップをして600wで1分加熱した後、パッドに広げてあら熱を取って下さい」


「何故に?」


 郁巳は声に出した。それでもテレビは続いた。


「次に種を作っていきます。ボウルに牛、豚両方のひき肉を入れます。そうしたらあら熱を取った玉ねぎ、繋ぎに玉子を入れて混ぜまーす」


「繋ぎって何?」


「肉兄うるさーい!」


 キッチンで綾が文句を言うが郁巳はテレビにかじりついた。

 テレビのアナウンサーは郁巳の疑問に答えるでもなく続けた。


「そしてひき肉に粘りが出たら形を整えていきます」


「それなら分かる」


「ねー、肉兄!誰と話してるの~?」


 キッチンから離れられない綾が不思議そうに言うが郁巳はテレビに集中していて答えない。


「では焼きに入りますが、ここで1つワンポイントがあります」


 アナウンサーが得意げに言う。


「焼くときにムラが出ない様に真ん中を少し凹ませます。」


 郁巳は「え?何それ?俺知らない」と呟いた。


 「そして両面中火で3分、その後弱火で更に3分蒸らして出来上がりでーす」


 アナウンサーの言葉に耳を疑いながら綾に叫んだ。

 「おい綾!火加減今何!?」


 「え~、分からない。焼けてるからいいんじゃない?」


 「中火で両面3分!弱火で蒸し3分だって!」


 「んもう!肉兄、注文多い!……ほいっ、焼けたよ~」


 郁巳の無理な注文に答えないで綾はハンバーグをお皿に盛りつけていった。


 「でーきた!ほい肉兄」


 「ああ、ありがと……おおっ!スゴい!まん丸い!」


 今までに見たことのない形に郁巳は興奮した。そんな郁巳を見ながら綾は満足そうに答えた。


 「まーね。火の魔術師の私にかかればこの位チョチョイのチョイよ」


 「ご飯は…炊いてないからな」


 「炊き方分からないからね」


 兄妹そろって料理経験ほぼゼロの二人が合掌して声をそろえた。


 「「いただきまーす」」


 郁巳たちは箸でハンバーグに切れ目を入れた。中からキレイなピンク色の汁が出てきた。


 「おお…きれいなピンクの肉汁!これぞ肉って感じだな!」


 郁巳は早く食べたい衝動に駆られた。


 「ん?何か変……あ!中身まだ生だ!」


 綾がそう言って郁巳も急いでハンバーグを割った。


 「な……何故に!?こんなに外側きれいに焼けてるのに!」


 郁巳は驚愕した。綾は納得したように自分の両手でポンッと手を打った。


 「……そっか!火が強かったんだ!」


 「ん?どう言うこと?」


 郁巳が不思議そうに綾に質問した。


 「いや、お母様に比べてやけに出来るのが早いなーとは思っていたの。私、表面だけ焼いたんだって解ったよ!」


 綾は郁巳に向かってサムズアップをした。


 「じゃ、じゃあ!ご飯は他に料理つくってないよ!今から買い物行ってたら食べるの夜になっちゃうよ!」


 郁巳は半狂乱になりながら綾に詰め寄る。


 「どうどう郁兄、大丈夫大丈夫」


 綾は冷静に郁巳を押し戻した。そしてこう言った。


 「ピザ取ろう!」


 「天才かーー!!」


 郁巳は半狂乱に興奮しながらピザを頼む為にスマホを手に取った。


 「あ、これ勿体ないから冷蔵庫入れとくね~」


 綾はそんな兄を片手間にハンバーグにラップをかけ冷蔵庫に入れた。


 本日の夕食、ピザ(宅配)。


 ちなみに冷蔵庫に入れた生焼けのハンバーグは帰ってきた母親に煮込みハンバーグにされました。この時、兄妹は初めて母親に「料理できる人ってスゲー」と感嘆したのだった。

 

 手作りハンバーグどころか夕食もろくに作れない。そしてそういう人に限って「ハンバーグ?捏ねて焼いただけじゃん」なんて言って失敗しますねよw私も経験あります。そんな時はレンジでチンする(ジューシーさなくなる)か煮込みます。煮込むのもコンソメだったりケチャップとカットトマトの缶詰を使ったりします。

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