あなたの胃袋を掴みたい!
お米炊けない若者ってどの位いるのかな?郁巳は(まだ)炊けない派です。
舞羽は郁巳に促され居間に荷物を置いてキッチンへと足を踏み入れた。
「と、ところでいくみんの部屋ってドコ!?」
早くも舞羽が当初の目的を忘れかけていた。
「ん?二階の左の部屋だけど…どうした?」
「ん!?ううん!何でもないよ!」
舞羽はチラチラと階段の方を見た。
「そうだ舞羽」
「ん!?な、何かな!?」
郁巳の声に期待が高まる舞羽。
「そう言えば俺、ご飯の炊き方知らないんだ。教えてくれないか?」
郁巳の食べ物脳に舞羽は期待が萎んでいくのが分かった。そして力無く笑った。
「…ははっ。そうだよね。いくみんはご飯食べたいんだよね」
センチメンタルになった舞羽が郁巳に言った。しかし
「おう!舞羽の作る手料理が楽しみなんだ!」
鼻息荒く郁巳が答えると舞羽は急に生気を取り戻した。
「そ、そうなんだー。ふーん、ボクの手料理が食べたいんだ~。でもボク正直自信ないな~」
平静さを装いながら自らのハードルを下げにかかる舞羽。しかし郁巳は裏切らない。
「頼む舞羽!今日はお前だけが頼りなんだ!」
「ふ、ふーん。そうなんだ~。ボクだけが頼りなんだ~。ふふっ、なら仕方ないな~」
郁巳の懇願に舞羽は上機嫌になって料理を始めようとした。
「ところでいくみん、さっきご飯がどうとかって言ってたよね?」
舞羽は手を念入りに洗いながら聞いた。
「おう、ご飯の炊き方が分からなくて昨日からご飯を、正確にはお米を食べてない」
「ええー!お腹空かなかった!?」
「昨日はピザをデリバリーした」
郁巳の言葉に舞羽はこめかみを押さえながら言った。
「うん…まあ1日だけなら良いか。でも!」
舞羽はビシッと右手親指を郁巳に指した。
「そんなんじゃ!体壊すよ!いい!食事は大事!体は食事からも作られるんだから!」
舞羽の熱意に郁巳は「お、おう…」としか言えなかった。
「さて、と。ご飯の仕掛け方覚えてね。これ位は出来てね。いくみん!」
舞羽がボウルとザルを探し出して言った。
「まずカップ…あ、やっぱりお米の袋の中にあったね。このカップで山盛りにすくい押さえつけないで擦り切る。ほらボクがやったみたいにやってみて」
「こう…か?」
「そうそうそれが1合。今日は…何人分必要?」
「今日は俺と綾、お母様。それと舞羽だから四人だな」
「うーん、なら五合位は炊いた方が無難かな?だったらさっきのを五回繰返すんだよ」
そう言って五合分のお米をボウルを重ねたザルに入れていった。
「うん、じゃあお米研ぐね。見てて」
そう言って舞羽は水道から水を出しお米が浸るまで水をいれたかと思うと直ぐにザルを水から上げボウルの中の水を捨てた。
「いい、いくみん。お米って乾燥してるのそれに周りにぬかが付いてて、これと一緒にご飯を炊くと美味しくないの。だから最初に水を浸した後直ぐにザルを水から上げて水を吸わない様にさせるの」
「おおー」
「んでね、その後お米を研ぐんだけど…私も正確には知らないんだ。ただお米同士を擦り合わせてぬかを取るのだけは頭にはいっているんだけどね」
「ふむ。ぬかを落とすのが大事なんだな」
「あ、後お米って洗ったら白い水になるんだけど、これって洗いすぎも良くないんだって」
「ほう。そうなんだ」
「うん、水入れて軽く擦ってを三、四回位繰り返せば大丈夫みたい。実際それで食べれたよ」
「おお!そうなのか!ありがたい」
「んでジャーだけど、知っての通り内釜が取れます」
そう言ってジャーの内釜を取る舞羽。それを見て郁巳は驚いた。
「な、それってとれるのか!」
「当たり前じゃん。本当に料理初心者なんだねいくみんは」
「う、…す、すまん…」
少し呆れた口調の舞羽に落ち込む郁巳。そんな郁巳に舞羽は声をかける。
「ほら、落ち込まない。今は覚えることが大事。ほら続けるよ~」
場の少し暗い空気を明るくする為に間の抜けた口調で話を続ける舞羽。
「んで、今日は5合お米を入れたので内釜の“白米”の五の数字の目盛りの所まで水を入れます。」
舞羽は研いだお米を入れた後、五の目盛りまで水を入れた。
「そしてジャーにセット。今回は時間がないから早炊にするね」
舞羽は手慣れた様子でジャーの蓋をしてセッティングし炊飯ボタンを押した。
ピー
ブォォォォー
軽快な機械音が鳴ってジャーから低い音が出始めた。
「よし!これで多分30分位でご飯が炊けるよ」
そう言って舞羽は次の作業、“本日の主菜”に取りかかった。
お米炊くのもまあ色々。




