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不器用すぎる恋のレシピ ~料理スキルゼロから始まる彼女たちとの恋愛ストーリー~  作者: 睡眠の精霊ぽち。
第五章「掃除をしましょう そうしましょう」
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冷たく温かいご飯

 三人で喋っていたら忘れそうなもの、そう!夕食。だけど郁巳は味が分からず乗り気じゃなかった。

 「さてと、じゃあお二人さん、一階に降りますか」


 八花が突然言った。


 「あ、そう言えば夕食とってなかったね。じゃあ私が腕によりをかけて作ろうかな?」


 菓愛莉がここぞとばかりに料理出来るよアピールをしてきた。


 「はいはい、あんたの腕じゃあ先輩が死んじゃうからダーメ」


 「ひどいっ!んまあ、恋人初日で手料理を振る舞うのも彼女アピールが出来て良いかなっと思って」


 「だそうですよ先輩。どうしますか?彼女アピールされて死ぬか美味しい物が食べれて安心するか。二者択一」


 「ちょっとハッカ!それひどくない!?私だって作れるよ~料理」


 「ほほう、では菓愛莉さん、あなたが作れる料理とは?」


 「え!?え~っと…味噌汁?」


 「何故疑問系?」


 「あー、時々味噌が溶けきれてない事があるんだ」


 「ぐさっ」


 郁巳の一言にぐさりにする菓愛莉。


 「そしてよくお母様から出汁とったか聞かれてきるから出汁入れてないんだと思う」


 「ぐささっ」


 更に郁巳の一言にぐささとくる菓愛莉。


 「ほーう。どの口が手料理を振る舞うといったのかな~」


 「やめて!私のメンタルはもうゼロよー!」


 菓愛莉は恥ずかしさのあまり顔を両手で隠した。


 「自業自得だ」


 「だな」


 八花と郁巳は自業自得と菓愛莉に救いの手を差し伸べることをしなかった。と言うか郁巳に至っては菓愛莉と同レベルなので飛び火するのを恐れただけだった。


 「あ、そう言えば私、郁巳先輩の作ったご飯食べたことがないです」


 「え?」


 菓愛莉の突然の一言に郁巳が耳を疑う。


 「え?だって俺今、味分かんないし…」


 「じゃあ味のない物を料理して下さい」


 「え、何とんち?」


 菓愛莉の言葉の意味を理解出来ず頭を捻らす郁巳。


 「あ、もしかしてうどんとかそうめんとか味が大体出来てるやつ?」


 「そうそう」


 八花の答えに菓愛莉が「せいかーい」と万歳をした。


 「それなら時間通りに茹でれば問題ないよね。普通なら」


 「そう、普通なら、ね」


 「ん?普通ならって時間通りに茹でたら駄目なのか?」


 八花と菓愛莉の意味深な台詞に再度頭を捻らす郁巳。


 「ふふふ、茹で時間はあくまで目安。歯ごたえを好みにしたかったら水と炎を味方に付けなければいけない…」


 「…なんか中二臭いねハッカ」


 「う…言わないで菓愛莉。正直やっちゃった感が否めないんだから」


 「あ、でも水と炎を味方には上手かったよ。お湯と火加減だからね」


 「う…そう言われるとかなり怖くなるな」


 「先輩、心配ないです。何も強火だけにする訳じゃないですから」


 「そうそう。私も強火じゃないからうどん茹でれるし」


 「じゃあ論より証拠。一階に行こう」


 「おー!…ってあれ?私が夕食にうどん茹でる事になってる?」


 「あっれ~?菓愛莉さんはうどんすらまともに茹でれないの~?」


 「なにを~!ちゃんと茹でれるし!見てなさいハッカ!私が美味しい茹で加減のうどん作ったるわー!!」


 「わー、たのしみー…てな訳で良かったですね先輩、交際初日で恋人の手料理が食べられるなんて」


 そう言って八花が郁巳に軽くウインクをした。


 「わ、わー…」


 郁巳が彼女が親友の手のひらで踊らされるのを見て戦慄すら覚えた。そして三人は一階に降りて行き菓愛莉が大きなお鍋に水を張ってコンロに火を着けた。


 「さてと、じゃあ乾麺は…あ、あったあった。えっと~入れてから15分程度っと。あ、何輪茹でようか?」


 「四輪位でいいんじゃない。今ここに大食漢の人いないから」


 「そうだね。じゃあお湯が沸くまで暫くお待ちを」


 「あ、そう言えばびっくり水ってどの位入れるんだ?」


 「え?びっくり水って差し水ですか?しないですよ」


 「え!?だって麺茹でる時はびっくり水入れるもんじゃないのか?」


 「あー、それは吹きこぼれる前に入れるものですが吹きこぼれない程度の強火にしている、更に言えば麺がお湯の対流で回る火の強さにするのがミソなのですよ」


 菓愛莉がここぞとばかりに料理出来るアピールをした。


 「ほー、スゴいな菓愛莉は」


 郁巳は純真に感心をして目を輝かせた。そしてそれらを見ていた八花が今にも噴き出しそうなのを堪えた。


 「う………すみません。実はこれ全部ハッカからの受け売りなんです…」


 「へ、そうなの?でもそれがちゃんと身に付いている菓愛莉はスゴいよ。そして正直に言えるのも可愛い」


 「へ!?あ!?…ありがとうございます…」


 菓愛莉は恥ずかしさで乾麺より先に茹で上がった。


 「ぷ、ぷぷ………菓愛莉かわいい~」


 八花が噴き出すの堪えながら菓愛莉をからかった。


 「あ、でもこの歳でちゃんとご飯を作れるハッカはカッコイイと思うぞ」


 「え!?あ…ありがとうございます…」


 「あれれ~?ハッカ顔真っ赤~」


 「ううう、うっさい菓愛莉!」


 「きゃー、ハッカが怒った~」


 二人とも言葉ではふざけてはいたが火やお湯等危ない物の近くでは暴れたりはしなかった。そしてお湯が沸くと菓愛莉はうどんの乾麺を入れタイマーをセットした。


 「さてと、じゃあお湯が再度沸くまでそのまんまで」


 「え?引っ付かない様に混ぜなくていいのか?」


 「そうしたら麺まだ硬いから折れちゃいますよ。それにお湯が沸かないのは沸騰していたお湯の熱量が乾麺を入れたことにより奪われた事によるものです。だからもう一度同じ熱量、つまり沸騰するまでは何もしない方が良いのです」


 「??熱量やらよく分からないけどそういうものなのか」


 「先輩先輩、熱力学です。習ってないですか?熱力学。高校の物理で習いますよ」


 「あー、俺物理苦手なんだわ」


 「おお、先輩の苦手な学科を一つ知ってしまった」


 「まあ百度のお湯に零度の水を同量入れたら五十度の物が出来るという訳です」


 「ん?百度のお湯は分かるけど零度の水は氷じゃないのか?」


 「あー、そこの辺は融解熱というものがありまして…まあ面倒くさいのでこの話はこれまでで」


 「まあ強いて言えば百度のお湯に零度の氷を同量入れたら五十度のお湯は出来ないということです」


 「ん、そうなのか…よく分からないが」


 「あはは、まあ知っていたら損はしない程度なのかもしれないです」


 菓愛莉が笑いながらお湯の中の麺の具合を見つめてた。そしてお湯が再び沸騰しはじめて麺が軽く踊り始めたら静かにかき混ぜた。そして吹きこぼれる前に火加減を調節して麺がお湯の対流で回る様にした。


 「よし、じゃあこのままで良いとして…先輩、うどんはどんな感じに食べたいですか?」


 「え?えーっと…お任せします」


 「せーんーぱーいー、何も味だけが料理の全てじゃないですよ。温かいの、冷たいの、歯ごたえとかも大切なんですよ」


 「あ、だからうどん」


 「ですです。ざるうどん、釜揚げうどん好きな方が食べれる様にです」


 「うーん、じゃあざるうどんで」


 「はいはーい。じゃあもう少し待ってて下さいね~」


 「はーい」


 そうして茹で上がったうどんを流水で洗い三人前のざるうどんが出来上がった。


 「じゃあ二人とも、手を合わせて」


 「「「いただきます」」」


 菓愛莉の一言で皆が手を合わせいただきますをした。


 「ん、美味しい!コシが少し固めだけどそれが良い!何よりのどごしが美味しい」


 郁巳は味が分からないと言っているのでざるうどんに汁を浸けないですすり舌鼓を打った。それを見て八花もうどんをすすった。


 「ん、確かに美味しいわ。やるわね菓愛莉」


 「まーあね~。さすが私」


 菓愛莉と八花はめんつゆを薄めたのにざるうどんを浸けてすすった。


 「それにしても汁を浸けないうどんがこんなに美味しいなんて、本当にびっくりだ」


 「先輩にはそんな美味しい体験をこれからもいっぱいいーっぱいしてもらいますからね」


 「菓愛莉、箸で人を指さない」


 そうして三人の楽しい食事が過ぎていったのだった。

 冷めて美味しいもの温かくて美味しいもの。


 もちろん相手の事を考えて作る人の心は温かい。

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