昔の想い出(その1)
菓愛莉の一言で郁巳は過去のアルバムを二人に見せる事になった。が、話が何故か郁巳の過去の想い人の事になり…
「そう言えば、先輩と綾ちゃんの幼い頃ってどんな感じだったんですか?」
「ばかっ!…な、何でもないですよ~先輩」
何気なく菓愛莉が郁巳達の過去を聞いた。それを隣で聞いてた八花が慌てて菓愛莉の口を両手で塞いだ。
「ん?…ああ、見る?」
「はい!見たいです」
菓愛莉がキラキラと目を輝かせて郁巳に言った。が、それに反して隣の八花の表情が曇っていった。
「…大丈夫だってハッカ。大丈夫」
郁巳が八花の気持ちを察して八花に優しく声をかけた。
「先輩…」
「んじゃ見るか。えっと~確かここの棚にア~ル~バ~ムが~…」
郁巳が立ち上がり本棚でアルバムを探し始めた。その後ろ姿を散歩を待つ子犬の様にワクワクとしている菓愛莉に八花は肘でつついて顔を近づけた。
「(ちょっとオオバカエリ、あんた何してんの!)」
「(え?何って?)」
「(あんた、郁巳先輩達のお父さんどこにいるか知ってるの!?)」
「(え?……あ……!)」
「(はぁ…まあ、郁巳先輩は気にしてないみたいだけど…というかそれを察した私にさっき大丈夫って声かけたんだよ先輩。あんた、良い彼氏もったね)」
「(あう……)」
八花はしみじみと菓愛莉の肩をポンポンと叩いた。菓愛莉は嬉しいやら自分が情けないやらで複雑な心情でどう顔を取り繕ったら良いか分からなかった。
「お、あったあった。菓愛莉、ハッカこれ…ってどうした菓愛莉?複雑な顔をして」
「え!?…あ……な、何でもないですよ何でも!」
突然郁巳に声をかけられた菓愛莉が一瞬呆気に取られていたが直ぐにブンブンと首が千切れんばかりに横に振った。
「で、先輩。それがお探しの物だったのですか?」
八花がさらっと話題を郁巳が手に持っている物に反らした。
「ん?ああ、これこれ。これに綾が小さい頃の泣きっ面があるんだよ~」
「そうなんですか~?じゃあ先輩の小さい頃の写真もあるんですね」
「おう、あるある。まあ大半が食べている時だけどな」
「あはは、先輩らしいですね」
郁巳と八花がキャッキャと話が盛り上がってる中、菓愛莉は先程の失態が尾を引いて話に入れないでいた。
「そう言えば菓愛莉とハッカは小さい頃の写真とかは持ってないの?」
「どうだっけ菓愛莉?」
郁巳が菓愛莉に会話のボールを投げた。それをハッカは菓愛莉が取れる様にスルーして菓愛莉がキャッチするのを待った。
「え?…あ…はい!…え~っと、取っておきのが今手元にありますよ。ハッカとツインキュアのコスプレしたやつありますよ」
「ちょっと待って菓愛莉!それ去年のじゃないの!?」
「ふふふ…死なば諸ともよハッカさんよ」
「やめてー!せめて菓愛莉だけのにしてーーー!!」
八花がキャアキャアと騒ぎながら菓愛莉とスマホの取り合いをしているのを郁巳は微笑ましく見ていた。
「まあまあ、それは後々見るとして今はこっちを見てくれ。ほら、綾の誕生日の時の写真。ケーキがっついて口元いっぱいにクリーム付けて笑ってるやつだぜ」
「「きゃー!」」
郁巳の秘蔵の写真を見て自国のプリンセスを見たかの様な声を上げる菓愛莉と八花。
「他には!他にはないんですか郁巳先輩!」
「そうですよ!他には!郁巳先輩の誕生日の時の写真は!?」
「落ち着け!落ち着けお前ら!ていうかお前ら食い付きいいな!」
可愛いの好きな女子二人に迫られながらもアルバムをめくる郁巳。それをプレゼントの包装紙を剥がしていくみたいにワクワクして見つめる菓愛莉と八花。
「わー!綾ちゃんと郁巳先輩の寝顔可愛い~!」
「これ…郁巳先輩と…女の子!?先輩!誰ですかこの女は!!」
「落ち着けって菓愛莉!これ昔だし!この子の事はあんまり覚えてないし!それにこの子転向したし!」
「先輩、何気に覚えてるじゃなですか~」
「うぐっ」
「せーんーぱーい~」
「分かった!分かった!話すから泣きそうな顔するな!」
郁巳は過去の想い出の引き出しの中を交際初日に開ける事となったのだった。
彼氏の過去の想い人…一体どんな女の子なのか…彼女はそれを聞いて何を思うのか。




