修羅場、再び
とりあえず一区切りついた恋。でも知らないパートナーの自慢を他の人に教えたくて…
「じゃあ私はまっちゃん連れて帰るね~」
和が玄関でそう言った。隣でまりもが未だスンスンとべそをかきながら立っていた。
「はい、先輩。ありがとうございました」
「って何でハッカがこっちに立って言ってるのよ!」
「何でって…だって二人っきりにしてると襲いそうだから」
「お、俺は襲わないって!!」
「…襲わないんですか先輩?」
「え!?………いや~…………」
「………ちらっ」
「うっ………」
「いえ、先輩ではなく菓愛莉が襲いそうなので」
「お、襲わないって!!」
「本当に?絶対?」
「うっ………いや~………」
「てな訳で私ハッカは残ります」
「うん、じゃあ八ちゃんよろしく~。ほらまっちゃん行くよ」
「…先輩、今日までありがとうございました」
「いやいやまりもちゃん!懇情の別れみたいに言うけど今度普通に会うからね!」
まだ少しまりもの様子がおかしく郁巳の返しも少しおかしかった。
「はいはい、じゃあね~」
そう言って和とまりもは玄関の扉を開けて出ていった。
「先輩…まりもちゃんに今度会うんですか~」
菓愛莉がぷく~っと可愛く膨れっ面を郁巳に向けた。
「はいはい菓愛莉、僻まない僻まない。あんた今後郁巳先輩と一緒にいるんだから。あら?そう言えば先輩の体調がまだ治らないのだから“一緒に居る”のかな?かなかな?ニマニマ」
「ん、まあそうなるかな」
「せ、先輩!?」
朴念仁郁巳はさも当たり前の如く言い切った。
「おや~年頃の菓愛莉ちゃんには刺激が強かったかな~。…このムッツリ」
「ちょ!?ハッカー!!」
「?」
年頃の菓愛莉は顔を真っ赤にして鈍感な郁巳はぽかんとしていた。
「さてと、じゃあ話の第二ラウンドといきましょうか」
八花が背伸びをしてリビングへと向かった。
「?第二ラウンドって何の?」
「当然菓愛莉から郁巳先輩への愛のこ・く・は・く」
「「!?」」
「あはっ、ここは郁巳先輩も反応するんですねっ」
顔を完熟したトマトの様にして固まった二人を残して八花は二階へと逃げていった。
「あ、あの…い、いくみせんぴゃい!?」
「ひ、ひゃい!」
「あ、あの、その…………先輩の事は学校に来なくなってから気になっていき、気付いたらその日に早退をして郁巳先輩の家へ足を運んでました。そして成り行きで同居する事を許してもらいました。でもまりもちゃんや舞羽先輩への建前上好きになったらいけないと思いながらも日に日に郁巳先輩と一緒にいると…その……ほっとけないというか…ごめんなさいっ!先輩って何となくチワワにも見えるっていうか…その…か、可愛いというか……でもそんな気持ちでいればいるほど好きになっていって先輩からも好きになって欲しいという欲求も膨れ上がっていって…その…ごめんなさいっ!一度だけ先輩の頬っぺたに…その…」
「も、もしかしてキ」
「つんつんぷにぷにしちゃいましたっ!!」
「………………」
「あ、あれ?先輩どうしたんですかそんな能面の様な顔をして」
「うんや、何にも」
「え?だって何でそんな能め」
「うんや、何にも」
「そ、そうですか…」
「デデーン、郁巳先輩アウトー」
「「ハッカ(ちゃん)!?」」
突然二階から聞こえた声に郁巳と菓愛莉は我にかえった。
「あはは、そろそろ私も一緒に馴れ初めを聞かせてもらいましょうか」
「い、いや~、そ、そうだハッカ!郁巳先輩のチェキ撮ってるからそれ見ない!むっちゃ可愛いよ~!」
「ちょっ!?菓愛莉さん!?」
苦し紛れにパートナーの郁巳を生け贄にする菓愛莉。
「あらあら。それは楽しそう。じゃあ私は菓愛莉のか・わ・い・い&セクシーなチェキを郁巳先輩にお見せしましょう」
「え!?」
「ちょっ!?ハッカ!?」
「おほほほほほほー」
菓愛莉が八花を追いかけて二階にかけ上がっていった。そんな二人を見ていてもまだ菓愛莉のセクシーチェキが見れるかと思う郁巳も年頃の男の子であった。
「…とりあえず飲み物持っていくか」
郁巳は和達が差し入れでくれた紅茶を濃いめに入れてそれを氷をたっぷり入れたボトルに注ぎ残りのクッキーをお皿に入れ直して二階へ上がって行った。
「(キャー!それ本当に郁巳先輩!?むっちゃ可愛い~!)」
「(でっしょ~!そして更に、これ!)」
「(キャー!)」
ガチャ
「何してんだー!!」
「「キャー!!」」
郁巳の突然の乱入に菓愛莉、八花両名はかん高い悲鳴を上げた。
「ちょっ!?郁巳先輩!乙女達がいる部屋に何の断りも無く入ってくるのはデリカシーがないですよ!!」
「お前らが勝手に俺の写真を見てるからだーーー!!」
「もう、先輩のえっち」
「お・ま・え・らーーー!」
「「キャー」」
郁巳の怒りも菓愛莉達の前では黄色い声に変わるのだった。
「全く…で、どんなチェキを見せてたんだ?」
「え?それは…先輩の寝顔?」
「今すぐ消せっ!」
「キャッ!ちょっと郁巳先輩そんなに寄ったら、キャッ!」
「うおっ!」
郁巳が菓愛莉の手からスマホを取り上げようとして菓愛莉の手を掴み重なる様な形になった。
「!?………」
「…………」
「…………」
三人が空間を纏った。
「………………」
「………………」
「………………」
三人とも固まってしまい動くことすら頭が働かなかった。
ガチャ
「「「!?」」」
「ただいまー…ってあれ?どしたのみんな?」
綾の突然の帰宅に一同に時間も流れだした。
「お、おかえり綾!どうしたんだ!確か舞羽を追っていったんじゃ」
「ああ、今日、舞羽先輩の家にお泊まりする事になったから」
「「ええっ!?」」
突然の綾のお泊まりに恋人初日の二人が顔を赤くして驚く。
「お、おい綾!何がどうなってそうなったんだ!?」
「え?何ってあにぃからの失恋に悲しんでいる舞羽を私が慰める事になって成り行きでお泊まりになったの。あ、そうだ。和先輩達も呼ぼうっと…あ、和先輩。お疲れ様でーす」
そう言ってスッスッとスマホをいじり和を呼び出す。
「あ、はい。じゃあ舞羽先輩の家で。はーい。じゃあまた後で~」
「お、おい綾…」
「ね、ねえ綾ちゃん。このままだとこの二人初夜を迎えるかもしれないわよ…」
八花が恐る恐る綾に問いかける。そして綾は笑顔でこう答えた。
「かもしれないね」
「綾ちゃーーーん!!」
「あはは、冗談冗談。…半分は」
「綾ちゃーーーーん!!」
「あはは、まあてな訳でハッカ、私の部屋でのお泊まりを強制するわ」
「綾ちゃーーーーーんーーーー!?!?」
「……え!?お、俺………………」
半狂乱する八花を見ながら混乱が収まらない郁巳。そしてその隣で顔が赤黒くなる菓愛莉。そう、ここは修羅場だった。
何がどうしてこうなった。郁巳達の1日はまだ続く。。。




