誕生日、告白、気絶
郁巳誕生日を迎える。普段ならおめでたい事だが………
「郁巳先輩(肉兄)、誕生日おめでとうございます」
「…ありがとう………」
「……ほ、ほら肉兄。私と菓愛莉が誕生日祝うんだから」
「綾ちゃん」
「うん…ごめん………」
「………」
「………」
「………ほ、ほら!私、腕によりをかけて作りました。チーズケーキです!…少し焦げてますが…」
「あはは、確かに少し焦げてるね~」
「あはは、郁巳先輩ごめんなさい。私の実力ではまだこの位です。でも次こそはちゃんと作れる様に頑張ります!」
「ほほう。それは菓愛莉が次も今みたいに肉兄の隣にいると~」
「や!やーだな~!郁巳先輩卒業までまだ一年あるんだから。それだけだよ。そうですよね郁巳先輩!」
「………………」
「い、郁巳………先輩?」
「………あ、ああ。ごめん。ちょっとボーっとしてた………」
「郁巳先輩………」
「そ、そう言えば肉兄痩せたね。もう肉兄なんて呼べなくなるね~。今度からはあにぃなんて呼ぼうかな~なんてね」
「………………」
「に、肉兄!!」
「!?………ああ。どうした綾………?」
「肉兄………」
「………郁巳先輩、いつも食事と一緒に置いているお菓子、どうしてますか」
菓愛莉が少し真面目な口調で郁巳に問いただした。
「………食べてるよ………」
「嘘ですね」
郁巳の言葉に菓愛莉が即座に否定した。
「郁巳先輩の机の中見ても良いですか」
「………………」
「……!?失礼します!」
菓愛莉が郁巳の机の中を開けるとビニル袋に個包装だけ取り除かれたお菓子が無尽蔵に入れられていた。
「!?郁巳先輩!!」
「………………」
「これじゃあ郁巳先輩倒れちゃいますよ!!」
「ちょっと菓愛莉、落ち着いて…ね」
「だって郁巳先輩が…郁巳先輩が死んじゃう………ううっ」
菓愛莉は両手で顔を覆いポロポロと泣き始めた。
「………ごめん」
郁巳は申し訳なさそうにチーズケーキに手をのばした。
「食べないで下さい!」
「………………」
「郁巳先輩食べたくないんでしょう!!無理して食べなくて良いです!!」
「………………」
それでも郁巳は手をのばしてチーズケーキを食べた。
「………はは、やっぱり味がしないや………」
「え………」
菓愛莉が驚いて自分の作ったチーズを食べた。それは苦くてチーズケーキと言える物ではなかった。
「苦い………郁巳先輩、これ苦くないですか………?」
菓愛莉は恐る恐る郁巳に聞いた。
「………ああ、美味しいよ…甘くて………菓愛莉の優しさが伝わってくる」
「郁巳先輩!今そんな事言わなくて良いです!」
「私お母様呼んでくる!!お母様!お母様!!」
綾は急いで母親を呼びに言った。
「郁巳先輩ごめんなさい!!私側にいながら気づけなくて!!」
「………大丈夫だよ。もう、菓愛莉は泣き虫だな………」
「郁巳先輩!郁巳先輩!!」
「菓愛莉!お母様呼んできた!」
「郁巳!あなた味がしないって!いつからなの!?」
いつもはどこか掴めない大人な母親も今ばかりは戸惑いの色が見えていた。
「……5月…入ってから………ごめん」
「あ……ううん………仕方ないわよ。郁巳は優しいから。ちょっと待ってて、病院に聞いてみる」
そう言って直ぐにスマホを片手に病院へ電話した。
「あ、こんにちは琴乃葉真海です。いつもお世話になっております。すみませんちょっとですね息子の郁巳が………」
「先輩!何か飲み物持ってきます。ちょっと待ってて下さいね!」
「菓愛莉は肉兄の側にいて!」
菓愛莉が直ぐに飲み物を持ってこようとすると綾が制して飲み物を取りに行った。
「………ごめん、皆………」
「何言ってるんですが!!もう少し頼って下さい!!」
菓愛莉はこぼれ落ちる涙を拭わないで悲痛な叫びで郁巳に言った。
「…ごめん………疲れたから少し寝るわ………」
そう言って郁巳は横になり目を閉じた。
「郁巳先輩………郁巳先輩!!お母様!!郁巳先輩の意識がないです!!」
「え!?菓愛莉ちゃん!!急いで救急医呼んで!!」
「はいっ!!」
そうして震える手で菓愛莉はどうにか119番を押したのだった。
郁巳倒れる。そして入院へ。




