恋の掃除
菓愛莉達から呼び出されたまりも、舞羽、そして郁巳。呼び出された場所は屋上…ではなくまさかの…。
郁巳と舞羽、そしてまりもの恋の行方は!?
「…で、何でこうなったんだ……」
郁巳は調理室で四人から離れた席であんぐりしていた。
「じゃあ対決のお題はハンバーグでおけ?」
「…おーけ」
「うん、ボク頑張る」
「にゃはははは!私は負けてあげる気は毛頭になくってよ」
八花、まりも、舞羽、菓愛莉がそれぞれ意気込みを言った。
「まあ食材が人数分ないので私と菓愛莉、舞羽先輩とまりもちゃんでいくよ。おけ?」
「………おーけー」
「ちょっとまりもちゃん、何で間があるの?」
「…いや、何で対決なのにこのペアなんだろうと思いまして…」
「まりもちゃん、菓愛莉の料理センスのなさしってるでしょう?これ初見の舞羽先輩にフォローさせられると思う?」
「ごめん…」
「まりもちゃん!?私に対して酷くない!?」
「…だって菓愛莉、自分自身の料理センスのなさ、自覚してるでしょ?」
「わ、分かってるわよ!でもね!私はこれから伸びるの!」
「背は無理だろうね」
「ハッカ!」
「ははは…まあ、ね、ここにいる女性陣は皆小さいから……ぐす」
「ああ、舞羽先輩!拗ねないで下さい」
「うん…分かってはいるんだけどね、改めて理解すると泣けてくるんだよ…」
「………」
「………」
「………」
「………あー」
「皆何か言って!そしていくみん!そこは「ふ、小さい子も可愛いよ(ハート)」位言ってよ~」
「無茶言うな!!」
「でも言ってほしいよね。皆」
舞羽が話を女性陣に振った。
「……ノーコメント」
「言われてはみたい…かな」
「私は可愛いのは当たり前!金髪ポニテですもん!」
「デデーン」
「…アウトー…」
「ハッカ!まりも!」
「あはは、みんな仲良いね。でも話が進まないから始めようか。先ずは手洗いから」
「「「はーい」」」
そうして女性陣四人は料理対決を始めた。のだが始まった直後に舞羽とまりもが郁巳の所へ寄って行った。
「ねえねえいくみん」
「…郁巳先輩のハンバーグの好みってどんなのですか?」
「え?ハンバーグってどれも同じじゃないのか?」
「あはは違うよ。捏ね方、まあふっくらした方が良いかそうでないかや味付けも薄めか濃いめかとかもあるから。後肉汁たっぷりが良いかヘルシーな感じが良いか。まあいくみんなら」
「肉汁たっぷり…ですね」
「だな。良く分かってるな。…そうだな、捏ね方は特に気にしてない。味付けは今回多めそうだから薄めが良いかな」
「ふむふむ、捏ね方おまかせ、味付け薄め、そして肉汁たっぷりだね。分かった」
「…では郁巳先輩、乞うご期待を」
「おう、楽しみにしてるな」
そうして舞羽とまりもは戻っていった。
「まりもちゃん、ハンバーグの作り方って知ってる?」
「…何となくでしか。玉ねぎみじん切りにしてひき肉、卵、牛乳に浸したパン粉、つなぎに片栗粉、味付けに塩コショウ…でしたっけ?」
「うん、すごいね。あんまり料理してないって聞いていたのによく知ってるね。それらをひたすらそれらを混ぜる。腕が痛くなるだろうけど混ぜる。そして食べるサイズにちぎって空気抜きをする。そして成形、焼く。簡単にいえばそんなものかな。細かい留意点はあるけどそれはその時伝えるよ」
「…はーい」
「では先ずは玉ねぎのみじん切りをするね」
「…私やります」
「そう?そしたらお願いね。私は意外に侮れないパン粉を牛乳に浸すのをするよ。これ本当に意外と難しいんだよ。私自身慣れてなくって、お恥ずかしい」
「…そんなことないです」
「まりもちゃん…」
「舞羽先輩は家庭料理部の副部長だし私の理想の先輩です。でも慣れないこと、出来ないことの一つや二つ、必ずあります。だって先輩は私のライバルでもあるんですから」
「まりもちゃん…」
「…!?さ、さあ玉ねぎみじん切りにします!」
「うん、お願いね~ふふっ」
「な、何で笑うんですか!?」
「ううん、なーんでもない。じゃあ私はパン粉諸々の準備するね」
「は、はーい」
そうしてまりもは少しぎこちない手つきでみじん切りを、舞羽はパン粉を牛乳に浸し、ひき肉等を慣れた手つきで捏ね始めた。一方菓愛莉、八花ペアは
「ハッカ!それじゃこのパン粉どうすんの!?」
「牛乳にヒタヒタになる位にするんだよ」
「?ヒタヒタ?あ、牛乳に浸かれば良いんだ。分かった」
「じゃ私はひき肉とか混ぜるわ。あんたは邪魔にならない様にしてなさい」
「うん、分かったわ」
「…で何で阿波おどりなの?」
「え?しない阿波おどり?」
「しないわ~」
「おかしいな~この前誰かしていたんだけど…」
「…まあ邪魔にならないからいいか」
なんやかんやしながら進行していってた。そして数十分後…。
「「「「完成でーす!」」」」
合計六個のハンバーグが出来上がった。
「郁巳先輩!私達のやつ食べて下さい!」
「ハンバーグね菓愛莉」
「そう!ハンバーグ!」
「分かった。じゃあ先に頂くわ。良いか舞羽、まりもちゃん?」
「うん、問題ないよ~」
「…問題ないです」
「おう、じゃあ頂きます」
「召し上がれ」
「召し上がりない!」
「ちょっとそこで阿波おどりでもしときない大バカエリ」
「誰が大バカよ!でも分かったわ阿波おどり踊っとくわ」
「…食べて良いか?」
「「どうぞどうぞ」」
「あはは、じゃあボク達も頂こうか」
「…うん」
「じゃあ」
「「「頂きます」」」
郁巳に続き舞羽、まりも、八花もハンバーグに箸を通した。
「…うん、美味しい!」
郁巳が舌鼓を打った。
「…うん!美味しい!これはご飯が進むね!」
「家では濃いめにしてご飯を掻き込むのをしているので。…すみません、ご飯なくて」
八花が申し訳なさそうに少し下を向いた。
「…八花、どんまい」
「菓愛莉!あんたに肩叩かれたくないわー!!」
「まあまあ八花ちゃん、問題ないよ。美味しいのに変わりはないよ」
「ううう…舞羽先輩、ありがとうございます」
「…ハッカ、どんまい」
「…まりもちゃん…」
「まあまあ八花ちゃん。落ち着いて落ち着いて。じゃあ次は舞羽達のハンバーグ頂くわ」
郁巳はそうして舞羽達のハンバーグに手をのばした。
「…うん、美味しい!これは美味しい!!」
「うん美味しい。さすが舞羽先輩」
八花が舞羽を褒め称えた。
「ふふふありがとう。でもまりもちゃんも一緒に料理したからまりもちゃんも褒めて褒めて」
「まりもちゃんって玉ねぎみじん切りにしたんだよな。よく出来てるよ」
「!?…あ、ありがとう…ございます」
「ふふふ、まりもちゃん赤い~」
「舞羽先輩!?」
「「まりもちゃん赤い~」」
「菓愛莉!八花!」
「「キャー」」
「でも本当に良く細かく切れてるよ。何よりリクエスト通りで美味しいよ」
「あはは、まあリクエストに沿える様にするのが家事をする側の力だから」
舞羽が卑下することなく言った。
「んでどちら共美味しいと言った郁巳先輩、勝敗は…って聞かなくて良いか」
菓愛莉がもぐもぐしながら言った。
「だね。勝敗は舞羽先輩、まりもちゃんペアの勝ちだね。まあこれを愛の勝利と言うのだけど」
「「!?」」
「………」
愛の勝利と言う言葉に狼狽する舞羽とまりも、その言葉をハンバーグと一緒に噛み締める郁巳。そしてつかの間の沈黙の後に郁巳は箸を置いた。
「舞羽、まりもちゃん」
「ひ、ひゃあ!」「は、はい!」
「二人の想い受け取ったよ。ありがとう。でもごめん」
「いくみん………」
「郁巳先輩………」
「あ、ごめん!どちらとも優しいし可愛い。けど自分自身の気持ちがちゃんとしてない…というのが正直な所なんだ。だからこのままどちらかと付き合っても駄目だと思うんだ。だから…」
「いくみん」「郁巳先輩」
郁巳の言葉を遮る様に舞羽とまりもが声を重ねた。
「いくみん、あんまり気にしなくて良いんだよ。いくみんは今をもう少し楽しんだら良いんだよ。今、この瞬間に決めないといけない訳じゃないんだから」
「郁巳先輩、私はいつまでも待ちます。だから郁巳先輩はもう少し自分に、そして周りに気持ちを伝えて下さい。郁巳先輩も優しいから…だから大好きです」
まりもは左手を胸に当てて郁巳に微笑んだ。
「あー、まりもちゃんずるい!い、いくみん!ぼ、あ、わ、わたしもいくみんの事が…す、す…」
「スッキリ」
「スッキリだー!って何言わせる八花ちゃん!!」
「はーはっはっは、まあまあ舞羽先輩、あ、私の事はハッカでよろしくお願いします。家庭料理部先輩」
「?」
「あ、私達も面白そうだから家庭料理部入るわ。宜しくね舞羽先輩」
「!?」
「ちょっと菓愛莉、もう少し先輩を敬いなさいよ」
「えー、だって面倒く…ぐふぁ!?」
「舞羽先輩、申し訳ありません。この大バカエリをもう少し調教しときます」
「あ………うん」
「見事にみぞおちに決まったな~」
「…さすがハッカ」
「じ…じゃあこれから宜しくね…まりもちゃん…そして先輩方…くふっ」
「あ、堕ちた」
「ふふ、これから騒がしくなりそうだね」
「…ですね。では郁巳先輩、舞羽先輩」
「ん?」
「?」
ピトッ、ピトッ
まりもが郁巳と舞羽の頬に軽くくちづけをした。
「!?」「ま、まりもちゃん!?」
「えへへ…これで意識してもらえますか?」
「こ、小悪魔ーーー!!」
舞羽の絶叫が木霊した。
昨日作ったハンバーグの臭いが服から漂いながら書きました。ハンバーグ、簡単だけど意外に奥が深い。でもそれが料理の楽しみでもある。昨日より今日、そして今日より明日。ハンバーグみたいな人生を。




